27.寝顔 |
2004/09/12 |
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『そーっと行ってごらんなさい。珍しいものが見れると思うから。』 彼女はオレが今まで見たことのないような優しい笑顔でそう言った。オレがびっくりしていると、 『いい?そーっとよ』 笑顔のままオレに念を押すと、軽やかな足とりで行ってしまった。 うーん・・・。オレはどうしたものかとしばし悩んだが、好奇心には勝てなかった。 生来、オレは好奇心旺盛なんだ。その“珍しいもの”とやらを拝見すべく、彼女のアドバイスに従うことにした。 そもそもの事の始まりはこうだ。大佐のところにやってきたオレは、建物に入ったところでホークアイ中尉に会った。彼女は無能でサボり癖のある上司を見張って仕事をさせているのが常で、仕事中はほとんどのその上司の近くにいる。だから、オレは全く予想外の人物に出くわし、ちょっと驚いた。 「あれ?中尉?」 「あら、エドワード君。こんにちは」 「ちは・・・って、珍しんじゃねー?こんなとこに居んの。・・・あれ?ひっとして今、大佐いねーの?」 「居るわよ。私はちょっと用事があって。ちょうどみんな出払ってて誰にもお願いできなかったものだから自分できたの。エドワード君は報告に来たのね?」 「ああ。あとついでにちょっと調べたいもんがあって、それの閲覧許可も欲しかったんだ。」 そんな話をしているときだった。 彼女が途端に微笑んでそう言ったのは・・・。 目的地が近づくと、オレは足音を立てないように静かに進で行く。特に機械鎧である左足が音を立てないように注意した。確かにみんな出払っているようだ。静まり返った空間に音を潜めて進む自分の物音だけが微かに響く。見知った場所なのに、足音を忍ばせているだけでまるで敵か何かの根城に潜入したような感覚に陥った。同年の子達はこんな風に感じる事なんて決してないだろう。当たり前だ。こんな日常想像すらできないはず。オレ達は戦い続けてきたし、これからも戦っていかなきゃならないんだ。オレ達の目的の為に・・・・。 やってきたのは、大佐の執務室。 いったい珍しいのってのは何だ? ホークアイ中尉の言葉を思い出す。重厚なドアに手を伸ばし、細心の注意を払って音を立てないよう僅かに開けた。 ・・・・。 あれ? ほんの少し開けたドアから中の様子を窺ってみたが、部屋の中は静かで物音ひとつしない。 ・・・大佐いねーのかよ。ったく、どこに行ってんだよ。 心の中で毒づいて、中に入るべくドアを更に開けた。 ・・・・そこに、大佐はいた。いつものように未決済書類が高く積み上げられた机を前に、革張りの椅子に座っている。椅子の肘掛に左手の肘を置いて、上体を僅かに左に傾け肘掛についた左手を額に当てて身体を支えている。その状態で彼は眠っていた。 いつもは鋭く光り、厳しく前を見つめている漆黒の瞳は閉ざされ、寝顔は彼を僅かに幼く見せている。 オレの心臓がドキリと跳ねた。 初めて見る彼の無防備な姿にオレは驚きを隠せなかった。 確かに、珍しいもん・・・だな。 疲れているのか、オレが部屋に入っても大佐は眠ったまま身じろぎひとつしない。 瞳と同じ漆黒の髪は、彼の背後の窓から差す光によって僅かに茶色く見える。それがひどく綺麗で、なんだか胸の奥のほうがキリリと僅かに軋んだように感じたのは気のせいだろうか。 正直、この男は苦手だ。 口を開けば嫌味しか言わねーし、人を食ったような態度だし、オレのことなんてすぐガキ扱いするし・・・・。 でも、・・・。 でも、オレは知ってる。こいつはそれだけじゃない。だから、ヒューズ中佐もホークアイ中尉もハボック少尉も・・・みんなこいつについて行く。自分の命を掛けてもいいと思っている。この男には人を惹きつけるものがある。人の上に立つための素質も技量もある。したたかで、計算高く、人を手駒のように利用しようとしたりする・・・・でも、間違いなく出世する。やがては上りつめるだろう。成し遂げるだろう、自分の野望を。 オレにもやらなきゃならないことがある。やってやるさ。どんなことをしたって、どんな手を使ってでも、成し遂げてみせる。 オレは静かに移動し、ソファーに腰を下ろした。座った瞬間、革張りのソファーがギュッと音を立てたのには、ちょっとビビッたけど。 相変わらず目を覚まさない上官を見つめた。 ・・・まあ、オレも特に急いじゃいない。ちょっと一休みしていくのもいっか・・・。 足を組んでその上で頬杖を付くと、ニヤリと微笑んだ。 さぁーて、お目覚めの一言。何て言ってからかってやろうか・・・。 |
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ロイエド初書き。 って、ロイ寝てるだけで、二人ちっとも絡んでないし・・・・。ゴメンナサイ。 えー・・・片思い君ですね。しかもまだ自分自身でも気がついていないというレベルの。 ラブラブにはまだ遠い? ・・・・以後努力します。 |
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