冷たい風吹く




「お前ぇ…。何つー目で俺を見てんだ?」
バレっちまうぞ?と耳元で低く囁かれる。
「別に…何も?んなことしてねぇっつーんだよ」
「よく言うぜ。見てただろう?」
シテぇのか?そう言いながら中里が笑った。
その目の奥に潜む熱に、慎吾の中でズキリと何かが反応する。



最初は自分の方から誘いをかけた。
酔った振りをして、マンションに転がり込んで……。そして誘った。
慣れた振りして、躊躇する中里をその気にさせた。
中里は最初こそ戸惑っていたけれど、2回目からは違った。
主導権は向こうへ移り、慎吾はひたすらに翻弄され続けた。
それ以来ずっとこんな関係が続いている。
どちらかがシタくなったら、誘う。

何度も何度も…身体を重ねた。
でもこれは恋愛なんかじゃない。

少なくとも中里にとってはそう。
自分の方はといえば、性欲を処理するだけなら、相手に不自由なんかしてない。
本当は何も男を誘わなくたって、相手になる女なんていくらでもその辺に転がってる。
男に突っ込まれたいなら、今はもう些かトウが経ち過ぎたとはいえ、
自分の身体にはまだまだ商品価値がある。
その辺でスケベオヤジを引っ掛けて、はした金で抱かせてやるのも悪くはない。

でも中里が良かった。

「好きなんだ…」
その一言が言えなくて、ただ苦しんでる…。



「…っ…はっ…ぁ」
駐車場から少し離れた木立の中、湿った音と息遣いが漏れる。
「あ…もっ…やめ…ろよ」
木に背中を預け、はいていたカーゴパンツを膝まで下げられて、
自身を中里にいいように弄ばれていた。
平日のしかもこんな真夜中、もう走りに来た連中もとうに帰ってしまった。
それをいいことに、こんなところでこんな格好で…。
男にしゃぶられてよがり声をあげている。
身が焼け付くような羞恥。
だがそれが慎吾を高ぶらせてもいた。
中里の頭が動くたびにチュクチュクと卑猥な音がして、強烈な快感がそこから湧きあがる。
チラリと時々見上げる中里の視線がさらに慎吾の高ぶりを煽った。
いつしか慎吾の手は中里の頭を掴み、慎吾は自ら腰を揺らめかしていた。

「なぁ慎吾。どっちがイイんだ?」
自身から口を離し、中里の指が最奥の蕾をつつく。
「んんっ…。ん…なの。言え…ねっ」
「言えよ。でないと、このまま帰るぜ?」
立ち上がった中里が意地悪く囁く。
慎吾の首筋をきつく吸い上げ、その手は容赦なく慎吾の前と後ろに刺激を与えていた。
フワリとYシャツから中里の匂いが香り立った。

このまま…なんて。
こんな時の中里はいつもの穏やかな表情が嘘のように、意地悪く慎吾を攻め立てる。
きっと言うまで許してはくれない。

「うし…ろ…」
低く呟くような声で慎吾は口にした。

「ああっ…」
指がツプリと音を立て、根元まで一気に突立てられた。
そのままグリグリとかき混ぜるように内奥をいじり回される。
「後ろって。ココ、なんて言うんだ?慎吾?」
「………」
「どうした?いつも言ってるだろう?」
「んっ…こん…なトコでっ…。何…言わせんだっ…よ」
抵抗する慎吾に中里の増やされた指が開かれ、慎吾の入り口が限界まで押し広げられる。
峠のヒンヤリとした外気が、奥の熱く蠢く内壁を撫で上げた。
「やっ…」
冷たい感触に身を竦ませ、慎吾は悶えた。

酷い男だ。
慎吾は上気した頬を一層赤らめながら、目尻に涙を滲ませた。
それなのにそんな責め苦に、自分の身体は悦んでいる。
淫らに腰を振り、高ぶりを中里に擦り付けて、媚びるように言うのだ。

「…ケツ…の…穴ぁっ」
「いやらしいな慎吾は…。ココを?どうして欲しいんだ?」
そんな自分を満足げに見つめ、中里はさらに問うてくる。
「…やぁっ……いえ…ねっ」
中里は首を振る慎吾に後ろを向かせると、木にしがみつかせた。
内部に納められた指が熱くほてった粘膜を引っかくように刺激する。

ぐちゃぐちゃと濡れた音。
ザラザラとした木肌に擦れる自身。
自分の上げる、鼻にかかった声。

「なぁ言ってみろよ…」
促すように指を引き抜き、慎吾の双丘に熱い自身を押し当てた。
ヒクつく蕾は熱くて指よりももっとキツク締め付けられるものを欲しがって、
甘い疼きを慎吾に伝えてくる。

「…毅の…でか…ので…め…ちゃめちゃに……くれっ」
慎吾は動きを止めない指に、回らない舌で懸命にそれを口にした。

言い終わらないうちに求めていたものがいっぱいに押し入り、蕩けた粘膜を擦り上げる。
「ああぁ…んっ…く…ぁっ…い…たけ…しっ…イイっ」
慎吾は甘い悲鳴をあげ、狂ったように鳴き叫んだ。
もうここが外だとか峠だとかそんなことはどうでも良かった。
自分の中に中里のモノがずっぽりとくわえ込まれ、
突き上げられるたびに、言いようの無い快感が生まれる。
ひたすらに自らも腰を振りたて、快楽を追った。

「すげー色っぽいぜ…慎吾」
中里も興奮しているのか、掠れた声で囁き、がっしりと掴まれた腰にかかる指に力がこもる。
「慎吾…慎吾…」
何度も名前を呼ばれ、汗で張り付いた髪を鼻で掻き分けるようにして、項にキスをされる。

その声に慎吾は恍惚となる。
自分が愛されているような錯覚を覚える一瞬だった。



「服直して来いよ」
だが行為が終わり、中里は自分の幾分乱れたシャツを直しながら言った。
煙草に火を付け、先に戻っていく。
服なんて直さなくったって、もう誰もいやしないのに…。

待ってくれなんて、言えなかった。
中里だって自分がそんなことを言うなんて、思ってもみないだろう。

「んなこと言われなくたってわかってるっつーの」
そうやって自分は蓮っ葉な物言いで、スレッからしの慎吾に戻る。

人には言えないけれど、秘密さえ守れば絶対に後腐れのない関係。
中里はそう思っているだろう。
自分が始めたはずなのに、そんな関係に時々息が詰まりそうになる。
一度でいいから抱かれたい。
そう思ったのは自分なのに。
結局手に入ったのは身体だけ。SEXをしている時にだけ、自分と中里とのキョリが縮まる。
それ以外は以前のまま。
おカタくて真面目な峠の王者と、柄の悪いトラブルメーカー。
走る時以外の交流など無いに等しい。

自分が女だったら、責任とれとでも言えたのだろうか。
そうしたら、ずっと中里は自分のものだったのだろうか。
そんなことは違うとわかっているのに、そう思わずにはいられない。

言われた通りに着衣を直し、駐車場に行ってみると、
そこには既に、漆黒の車の姿は無かった。
ポツンと1台止められた自分のEG6.。
峠の夜の冷気に真っ赤な車が、所々白くうっすらと膜を張ったようにその色合いを変えている。

情事の後だ。今の自分に満足な走りは出来ないだろう。
連れ立って下りたところで、中里にとって得る物など何1つありはしない。
割り切った関係ならば当たり前のことだと、わかっていて、それがチクリと胸を刺した。

キーを回し、温まるまでの僅かな時間をボンヤリと過ごす。
冷てぇ…。
中里と2人燃え上がっているときには、少しも感じなかった冷たさを、
冷え切った車内で1人シートに深く腰掛け、感じていた。
下半身に残る微かな違和感。自分の髪や衣服に移った中里の匂い。
そんなことすらも慎吾にとっては温かさに感じられた。

毅…。冷てぇよ…。
先刻、中里に散々流させられた涙とは確かに違う物が、
慎吾の目尻に溜まっていた。



2へ続く



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