☆バレンタイン大作戦:ソノ壱☆
それぞれの作戦、、、。(兎丸視点)
「兄ちゃんって甘いもの平気なのかなぁ。」
兎丸は、ペラペラと料理本をめくる。
「その前に、ぼくチョコなんて作ったことないやぁ〜」
美味しそうなチョコの写真を見て溜息をついた。
あの、奇襲(?)事件があってからというもの、部内は異様な空気に包まれていた。
牛尾も懲りずに毎日のようにやってくる。
猿野は仲間外れにされたと思いこんでいて、落ち込んでいた。
「元気づけてあげられるのはぼくしかいないもんね。」
その為には人と違うことをしなければと考え
手作りチョコを思いついたのだが、、、。
「編み物もしたことないし、裁縫もできないし、、、。」
バレンタインといえばと思い浮かべるがいまいちである。
趣味はゲーム、得意なことは速く走ることの兎丸は
以外と手先が器用ではないらしい。
「いっそ、ぼくをあげちゃうか?」
自分は猿野が欲しいのである。だが、この際自分をあげてしまうのはどうだろうか。
「いらないって言われたら、奪うまでだもんね。」
我ながら良いことを思いついたとほくそ笑む。
「じゃぁ、プレゼントにはリボンをかけないとね〜」
脱ぎ捨ててあるコートを拾い、スキップをしながら出掛けた。
「たらったらったらったウサギのダンス〜♪」
鼻歌混じりに街を歩くと見覚えのある青年が歩いていた。
「しー、、、。おっと、今はライバルだもんね。」
いつもなら話しかけるが今は、敵なのである。
抜き足差し足忍び足で司馬の後を追いかけた。
すると、とあるデパートに入っていった。
「およっ?これは司馬君も兄ちゃんにあげるものを買いに来たっぽいな〜」
しめしめこれで何を買ったか分かればまずかぶることないしねぇ。
「まぁ、始めっから、かぶってないけど〜」
兎丸は自分の勝利を確信していた。どっからそんな自信湧くんだ?
司馬は手芸品売り場へ行く。
「???。マフラーでも編むのかなぁ。」兎丸は司馬が編んでいる姿を想像した。
「おい、そこで何をしている」
突然後ろから話しかけられて兎丸はピョンと跳んだ。
「きゃぁっ!な、なぁんだ犬飼君かぁ。」
ホッと胸をなで下ろす。だが、今ので司馬に気付かれたかもしれない。
売場に目をやると、司馬の姿はもうなかった。
「あ〜ぁ、、、。気付かれちゃったかなぁ。」残念とがっくりと肩を落とした。
「誰に気付かれるんだ?」犬飼は怪訝そうな顔をした。
「司馬君だよ。さっき道で見て追いかけてきたんだけど〜」
「話しかければいいじゃないか」
「今はお互いライバルなの!そうだ!犬飼君もライバルだ!」
「お前それはストーカーっていうんじゃないか?」
「ぎくっ、、、。」
目を左右に動かしなんとか誤魔化そうとする。
「考えてることはだいたい想像できる。」じぃっと、兎丸の顔を睨む。
「どうせ、バカ猿関連だろ。」
ズバリな発言に太刀打ちできなくなり
「うん。司馬君何あげるんだろうなって、、、。」
俯きながら小声でゴモゴモ言う。
「あ、出てきたぜ。」
いなくなったと思っていた司馬はどうやら会計をしていたらしい。
「何か買ってたんだね。あれ?でも、、、。」
イメージと違っていた。特に買い物をした袋などは持っていない。
「マフラーじゃないのかなぁ?」
「勝手に勘違いするのは司馬に失礼だぞ。」
「そうだけどぉ、、、。」
結局司馬が何を買ったのか分からないままになった。
「そういう犬飼君こそどうしたの?」
「いや、ま、、、。ちょっとな、、、。」
「ん〜?もしかして犬飼君もぉ?」
兎丸も反撃する。
「そうだよねぇ。この連休が勝負だもんねぇ〜」
「そうだ。お前と話している暇などない。」
犬飼はひらひらと手を振るとエスカレーターに乗っていってしまった。
「ばいばぁい」
兎丸も手を振った。
だが、次の瞬間首を傾げる。
「この階って手芸屋さんしかないのになんでいたんだろ?」
まさか、、、。
「犬飼君こそマフラー?」
ちゃんと手元を見ておけば良かったと後悔した。
「おっと自分もこうしちゃいられませんよぉ。」
エスカレーターに乗り特設コーナーに急いだ。
特設コーナーはチョコも売っているが、手作りしたい人のために
加工用チョコを始め、料理道具、ラッピング用品などが置いてある。
兎丸はオンナノコに混じってリボンを探していた。
「こういう時ちっちゃいって楽〜♪」
もし、それこそ犬飼のようなおとこおとこがこんな所であれこれ探しているもの
変な目で見られるであろう。だが、兎丸はその辺心配ないのである。
「あれ?偶然っすね。」
聞き慣れた声に振り返ると子津が、いた。
「ほんとう偶然だねぇ。」
「やっぱり買い出しっすか?」
「ん〜まぁね。ねづく、、、。子津っちこそ買い出し?」
一応気を使ってみる。だが、でも待てよと思った。
買い物に付き合ってる彼氏が彼女から放っぽり出されたって考えればと。
でも、バレンタインの買い物に彼氏がついていくだろうか、、、。
「ははは、そんなとこっすね。でも、すごい人っすよ。」
「みんな、真剣だもん!ぼくだって真剣だよ!!」
子津のことを隠してどうして自分のことは隠さないのさ。
「負けてられないっすね。じゃぁ、お先に」
というと、子津はいなくなってしまった。
「また何買ったか聞くの忘れちゃったぁ〜」
まぁいいやと気を取り直しリボンを探した。
「定番ピンク?王道赤?」
リボンを前にして考える。
無地のものからストライプ、ハート柄、St・Valentineと
プリントされているものなど種類がたくさんある。
「こういうのをセンスが試されるんだよねぇ」
手に取り、あーでもないこーでもないと悩む。
結局、「どれにしようかな」と天の神様の言うとおりにすることにした。
「か・き・の・た・ねっと。」
最後に指したリボンを手に取った。
「ん〜やっぱり神様の言うとおりが一番だね〜」
気が変わらないうちにと急ぎ足でレジに向かう。
バレンタインまでのそれぞれの作戦。
一番兎丸くんが書きやすいので。。。
鼻歌趣味丸出しで(笑)彼しか歌えないですし。
私は短いと思っていたのですが、
案外長くて2つに分けました。