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蹴りたい背中 / 綿矢りさ
 学校での人間関係とか、そういう部分での現代っ子の感情の描写が気持ち悪いくらいにリアルだ。 架空のお話として面白いというよりは、赤裸々な日記を読む面白さ。大人には絶対に書けない話だ。
 正味の話綿矢りさが売れたのは顔がいいからだろー、なんて思っていたのだが、逆にここまでオタッキーな人間の感情やらクラスで孤立する卑屈な人間心理やらを細かく書かれて筆者の顔がブサイクだったりしたら、多分おれは読んでられない。
 思春期少年がいろいろ妄想した中身を明らかにされているような部分があり、ときめく。
 


インストール / 綿矢りさ
 不器用は罪だ、と子供特有の残酷さで彼女は言い切った。
 序盤のひとりの描写が好きだけど、話が盛り上がらないまま終わってしまった感が強くいまひとつ。


いくつもの週末 / 江國香織
 筆者自身の結婚生活について綴ったエッセイ集。
 といっても生活臭さとかドタバタ感は薄い。のは、この人の人柄による所が大きいんだろうな。あくまで自分の主観でありながらどこか冷静に見ているというか。
 とはいえ、半分過ぎたあたりからだんだんノロケ話を聞かされているような、なんで俺こんなの読んでんだとか我に帰る瞬間があったりなかったり。
きらきらひかる / 江國香織
 アル中の妻、ホモの夫、その恋人のいる話。
 といっても三人は皆仲が良くひりひりする三角関係というような感じではない。が、決定的に縮まらない距離感のようなものが痛々しい話であった。


哀しい予感 / 吉本ばなな
 完全無欠な聖人や、爽やかで誠実な好青年の登場する話は好きじゃないなー、と思いながら読んだ。
 この人の話は必ず誰か死んだりする、というのを聞いたことがあるけど、それは、この話に限って言えば、人間性の優れた人物を登場させるということとバランスをとる為のように見えた。
 もっと曖昧な哀しさとか欠点のある人々のいる話の方が好みだな〜。


ハチ公の最後の恋人 / 吉本ばなな
 普段思うような事が多く書かれていて、やっぱこういう事考えるんだな、なんて思ったりした。
 主人公の女の子の考え方が主観的ながらもどこか泥臭くない、固執しないところがあって、都会的な感じがした。話全体が風通しの良い雰囲気で感情的過ぎず説教臭くもなくて、すごくバランスが良い話だと思う。




4U / 山田詠美
 ひとつのテーマで書かれた8本の短編。  心理描写が巧みで、女性作家はこういうのが上手だよなぁ、と思う。男が書いてても気持ち悪いけど・・。 「天国の右手」みたいな変にシリアスな文体よりは「男に向かない職業」「血止め草式」みたいなあっけらかんとした文章のが良いと思った。「紅差し指」の、暗い影を孕んだ冷静な文体は川上弘美(「溺レる」)を連想させて、読むと冷たいハケで首筋を撫でられたような感じがする。

幸福な遊戯 / 角田光代
 意識的なものか無意識的なものかわからないけど、なんだかわざとらしい形容表現が多くて興を削がれた。都会に住む人間を、リアルにでなく、幾分誇張して描いている気がした。リアルを表現しようとした結果かもしれない、都会の人間模様を切り取ろうとする姿勢は感じられたけど、残念ながら作品全体からは都会的な匂いが伝わってはこなかった。むしろこの著者は都会的な暮らしとは無縁な所で、テレビなどから得たイメージのみで以って話を作り上げたのでは無いか?と勘繰ってしまう程だった。だから割りと年輩の人が書いているのかと思ったけど、意外に若い人だった。
 話にオチが無い点と、表紙の写真が綺麗な点が良かった。


すべての男は消耗品である / 村上龍
 表題の通り、男がどうだとか女がどうだといった話が中心のエッセイ集。

 序盤はやや気合が入っている感があるが、途中から疲れたのかやや投げやりな、思いつきで書いてる感が増してくる。ところにより核心をついた表現が見られて面白いけど、なんだかんだと「天皇制 」だの「制度」だのという単語に結び付けて説明しようとするのはなんだかインテリぽくて好きじゃなかったです。でも、大雑把で適当な断定口調と、脈絡無く話題を変えるところは嫌いじゃないです。


黒猫・黄金虫 / エドガー・A・ポー
 短編集。

 貧困な発想力であるが、尋常でない想像力で無理やり形にした、て感じの話がたくさん。話的にはどってことないものばかりだけど、なんだか凄い話を読み聞かされているような錯覚を与える文体で、しかもオチが投げっぱなしだったり陳腐な説教臭いものだったりして、しょぼいスティーブン・キングを読んでる気分だった。
 著者自体は有名だと思うんだけど、それにしてはエラく閉じたというか狭い感じというか、友達のいない小学生が教室の隅っこでノートに書いてるようなというか、なんというか。


伊豆の踊り子 / 川端康成
 表題作の他に「抒情歌」「温泉宿」「禽獣」など含む。

 随分と木目の細い文章という感じ。「抒情歌」の洪水のような感じがすごい。多分いろんな宗教とか勉強していくうちに出来た自分なりの解釈をここで吐露してるんだろうなと思った。知らないけど。
 「温泉宿」には沢山の女が登場して、なんだかドラマを見ているような印象だった。川端康成は男なのになんでここまで女性的情緒に溢れた話を書けるのだろうかと思う。


限りなく透明に近いブルー / 村上龍
 読み始めた時はその過激な描写に面食らったけど、読み終わった時感じたのは著者の繊細な感受性であった。こういった感性を持った人間がこういった時代に触れるとこういった作品が出来るのだな、という感じ。個人的にはあとがきが陳腐なものに思えて、無くても良かったのではないかと感じました。

 いやしかし、70年代というのはアバンギャルドな時代だったのですな。と思った。実際のところはよくわからないですが。



時計仕掛けのオレンジ / アントニイ・バージェス
 数々の造語が飛び交う、近未来を舞台とした話。前半はひたすらに暴力と悪の限りを尽くす主人公が描かれ、このまま最後まで行くのかなあ、と若干飽き始めた所で話は急変する。それまで一方向から書かれていた「恐怖」が全く別の方向からやってきて、そしてそれは一つでない。

 この話は同名の映画が有名だけど、そっちはまだ観た事が無い。考えられる限りの暴力描写、醜悪な幻覚的イメージ、ナンセンスな「最新ファッション」。読んでいるだけでも不快なこれらを映像化したらどんな気持ち悪いものになるかは想像に難くない。

 観たいなあ。

 この本は最初つまんなかったけど途中から面白く読めました。あと、マトモな人間がひとりも出てこないあたりが「The World Is Mine」て漫画と似てると思った。



読売VS朝日 社説対決・北朝鮮問題
 読売新聞論説委員会編 辺真一・柘植久慶解説(中公新書ラクレ)。

 無い知識に少しの足しにでもなればと思い読んだけど、実際少しはなったと思う。過去十年の社説から抜粋された、北朝鮮関連のテーマに沿った読売新聞・朝日新聞双方の社説が対比される形で並べられ、そこに辺・柘植の解説がつく。
 結論から言えば、解説において「朝日は常日頃の反政府スタンスをかなぐり捨て、・・(中略)・・このあたりは、適性を欠いた外相レヴェルの思考回路だと言えよう(p.183 l.7)」「朝日は『誠意』という言葉が好きである。まさか二流半タレントの得意の台詞ではあるまいし、・・・(p.176 l.6)」「蜃気楼を実像と見誤ったようなこの社説は、・・(p.203 l.11)」と糞みそに朝日をこき下ろしているのに対し、読売には「後の〜によって、読売の見通しの正しさが立証された」といったような称える文脈が随所にみられ、対決とはあくまで名目なのですな、といった感じだった。
 とはいえ、言ってる事がそれほど間違ってるとも思わなかったので不快な感じもしなかったです。朝日新聞の編集でこういう本作ったらどういった解説がつくんだろう?



エレンディラ / G.ガルシア=マルケス
 「大人のための残酷な童話」と銘打たれた短編+中篇集。

 僕は最近歯医者に通っていて、そこの待合室で「ラプンツェル」という西洋の童話を読んだのだけれど、なんというか結局何が言いたいのかよくわからない話だった。以前話題になったグリム童話もそうだったけど、西洋の童話というのは何が言いたいのかよくわからないものが多いようである。
 この本はそういった意味でも童話らしい童話というべきか、読み終わった後「ああ、不思議だねえ」とか、「へえー」とか、そんなような感想しか抱けないようなストーリーのものばかりだったのだけれど、しかし話にオチがないからといってこの本がつまらないものだったかといえばそうではない。むしろこの本を読んでますますG.マルケスが好きになったくらいで、ではどこが面白かったのかといえば、やはりその絵画的世界の木目細かさ、美しさだと思う。
 この人の本を読んで思うのは、その想像力の豊かさと深さ、だ。明確にこの人の独創的な世界が出来上がっていて、しかしだからといって決してひねくれた印象を与えないところはすごいと思う。この、退廃的で乾いた灰色的な世界観を絵画的で鮮やかな描写を用いて表現するというスタイルは「大きな翼のある、ひどく年取った男」や「この世でいちばん美しい水死人」といったタイトルにも現れていると思う。一言で言えば「美しい」世界観がそこに広がっていて、そこから受ける刺激というものは素晴らしい絵や写真を見たときのそれと似ている。この人の書く物語の魅力というのは、まさにそこにあると思う。



だから私は嫌われる / ビートたけし
 西船橋駅構内でやってた中古本の出店?で百円で購入、暇つぶしのため。
 ビートたけしが語り口調で日本の大衆社会の政治、文化などあらゆるものを斬りまくっている内容で、十年前の本ということで多少現代と背景がずれているところはあるものの、読んでいて随所で目から鱗が落ちた。多少言いすぎというか極論過ぎると思ったところもあったけど、そんな時タイトルを見返すと「ああ、だからこういうタイトルつけたのか」と妙に納得してしまうのであった。真意はわからないが。



変身 / F .カフカ
 前から読みたいと思っていたものの図書館に置いてなかったので読まずにいたものを今日本屋で見つけたので衝動的に購入してしまった。
 ある朝目を覚ますと一匹の巨大な虫へと姿を変えてしまっていた一人の男が描かれた中篇小説で、そのこと一点を除いては全く小説内の世界と現実世界は変わるところがなく、変身してしまった男が苦労してベッドがら転げ落ちるところから部屋の中を這い回るところなどまでが細かく、冷静な視点で描写されている。物語を通して描かれているのは、突如変身してしまった一人の男とその事実に戸惑い失望する家族に始まり、次第に虫的なものへと変化していく男の思考、そして男を自分の息子や兄としてではなく一匹のただ邪魔な虫とみなすようになっていく家族の態度であり、そこには家族同士の愛だとかそういったものは希薄で、終いにはきれいさっぱり消えてなくなってしまう。
 一人落ち着き払い非日常的な出来事にも適応してそれ自体を日常としそれまでの日常を捨て去ってしまう男、それまでの生活に突如現れた非日常に適応しようとして失敗し、黙殺し、「無かったこと」としようとして無理やりそれまでの日常を継続しようとする家族。どちらが良くてどちらが悪いという類の話ではないけど、男のことを忘却し希望に満ちた家族の描写で終わるラストにはなんとも言えない気持ちにさせられる。
 この絶望的ともいえる雰囲気が漂いつつある種客観的な空気を持つ話の背景には著者の価値観や当時の社会的環境が関係しているのだろうけど、やっぱその時だからこそ生まれ得た話なんだろうなと思った。いや、今は今でしか生まれ得ないものがあると思うし、当たり前のことなんだけど。
 やっぱこの著者は孤独だったのかな。



逢う / 中島らも
 野坂昭如、井上陽水、筒井康隆、山田詠美他との対談をまとめたエッセイ?集。
 なんにしろ面子が凄いし、中身もなかなか面白かったです。自分の知らない世界がたくさんあるんだなあという感じで読んでたんですが、それにしてもこの人はクスリとかやりすぎだろうって思いました。こういう感覚の違いは時代や世代の違いか、はたまた住む世界の違いなのか。
 別に世界は違わないよな。



老人と海 / E .ヘミングウェイ
 中編小説。

 長さ的には大したものではなく、ストーリーも老人が一人で小舟に乗って漁に出て帰ってくるまでのお話と言えば実に味気ないものに思われるけど、その中には様々な駆け引きであったり一人の人間の葛藤であったりドラマがある。誰もこんな話を実体験した人などいないと思うのだけど、しかし物語中の老人の辛苦、喜び、喪失感などの感情には誰もが共感出来るのではないかと思いました。そして、 広い海の上でたった独り、縄にかかった巨大な獲物と死闘を繰り広げる老人のなんと雄雄しいことか!
 自分もこんな老人になりたいものだ、と思いました。





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