●男爵ディーノ考―詳論『男爵ディーノvs酔傑』― |
1、序論 僕の周りにも何人もの男塾フリークがいますが、そういった人たちに「もっとも印象に残った闘いは何か?」と尋ねると、全ての人とはいわないまでも多くの人が『男爵ディーノvs酔傑』をあげます。これは「北斗の拳」における『レイvsユダ』くらいの比率でしょう。 そんな多くのフリークの心を、魂を揺さぶった『男爵ディーノvs酔傑』の一戦をここでは振り返ってみたいと思います。こまかな点やこの闘いの意義に関しては、次章の「まとめ」に譲るとして、ここでは純粋にこの素晴らしい闘いの記録について触れることにします。 2、男の名は酔傑 天挑五輪大武会もついに決勝リーグ、準決勝まできた。のこる戦いはあと二戦だ。 だが、準決勝の相手は今までとは比べ物にならない強大な敵だった。 そう、準決勝の相手、『梁山泊十六傑』は過去三度の天挑五輪大武会を制覇してきた今大会最大の優勝候補だったのである。 そして、準決勝試合の決闘場へたどり着いた桃たち、相手の陣にはただ一人、馬上の男、酔傑のみ! 試合場へ降り立った酔傑はいう 「気ままな奴らだ・・・俺の仲間たちはいつになったら到着するかわからん・・・ だがそれはどうでもいいこと。貴様らの相手は俺一人で十分よ・・・・」 なんということだ!梁山泊はこの過酷な戦いを酔傑一人でここまで勝ち進んできたというのか! (とはいっても他のチームもだいたいそんなもので、満身創痍で勝ち進んでるのは男塾くらいのものなのだが・・・) それはそれとして、梁山泊は他のチームと違って実際、酔傑一人しかいないため言葉に説得力があります。 一人で全員を相手にするという酔傑に憤慨する富樫と虎丸。しかし、その二人を制して立ち上がったのは・・・ 我らが男爵ディーノである!!!! 3、ディーノ出陣 しかし、男爵ディーノ。 おかしい・・・。彼に一体何があったのか。いや、おかしい、っていうのは、アレだ、服装が全く違う・・・。 確かに最初、狼髏館の鎮獰太子と闘ったところまではいつもの服装。つまり・・・ シルクハット、不審なヒゲ、皮ジャンに裸、良く分からない(たぶん茶色の)パンツ だったのが・・・ シルクハット、不審なヒゲ、は変わらないが、蝶ネクタイ、マントに裸、白いパンツ、足元にはプロテクター になっているのです。 それまで、正直、ディーノのキャラは良く分かりませんでした。ムチを使うところから、ウェスタン系のキャラと見ることも出来ました。皮ジャンもそういわれればそれっぽい。ウェスタン系のキャラなんて時点で男塾では明らかにおかしいですが、あのシルクハットとヒゲではウェスタンキャラですらなく、ただただ不審な男でした。 そう、いままでのディーノは明らかに「良く分からない不審な男」だったのですが、何かが宮下先生を動かしたのでしょう。梁山泊戦ではディーノは、誰もが分かるマジシャンキャラへと変わったのです!! ディーノ自身もそれを自覚しているようです。唐突に「地獄の魔術師(ヘルズ・マジシャン)といわれたこのディーノ。久しぶりの闘いに胸がときめきます」などとのたまわれます。 言うまでもありませんが、これは嘘です。だれもディーノのことを「地獄の魔術師」と書いてヘルズ・マジシャンなどとはいっていません。 リアルタイムで読んでたときは、そういえばそうだったかなー、なんて流していましたが、改めて読み返した今、それが嘘だとはっきりしました。おそらくいままでの惨めな自分に終止符を打つべくキャラ変えしたディーノですが、自分のキャラを服装で固めてもまだ安心できなかったのでしょう。皆に「自分はマジシャンキャラである」というメッセージをここで暗に伝えたかったのだと思われます。 幸い、男塾のメンバーは連戦による疲労に不眠もたたり、誰もディーノの世迷い事に突っ込む余力がなかったようです。ディーノのその言葉はそのまま受け止められました。 その後、ディーノはあくまで自分が出陣するという虎丸・富樫をハンカチを鳩に変えるというマジックで気を逸らし、自分が試合場へ降りてしまいます。 この演出はディーノ的に重要です。ディーノにしてみれば、試合の前に自分が「マジシャンキャラである」ということを再度印象付けることに成功したわけです。彼のキャラ作りはこの時点で成功したといっても過言ではないでしょう。 現に男塾死天王卍丸がその直後、ディーノについてこういっています。 「奇妙な男よ・・・・・・・・だが奴を甘く見ると命がいくつあっても足りはせん」 いうまでもありませんが、これも嘘です。 今までにディーノを甘く見た敵はいくらでもいました。大威震八連制覇では伊達は「貴様ごときに武器はいらん」と素手で闘いました。また狼髏館の鎮獰太子は足元に小さな円を描き、その中で闘うというハンデを己に課したのです。もちろん 両者ともにディーノに圧勝。されにいうなれば、鎮守直廊でディーノの相手は虎丸です。Jや桃でなく、虎丸という時点ですでに一号生はディーノを甘く見ています。 ではなぜ、卍丸ともあろう男がそんな誤った判断を下したのでしょう? それはそれまでの演出により、ディーノが仲間に「自分は油断ならぬ男」とのイメージを植え付けたためであり、それ以上に連戦の疲労と睡魔が卍丸を襲っていたためと考えられます。 3、地獄の魔術師 さて、それはさておき、とうとう試合が始まります。 まずはお互いに名を名乗りあう。 ディーノ「私の名はディーノ。どうぞお見知りおきを」 酔傑「梁山泊の酔傑だ。どうだ貴様も一杯やらんか」 と、名前の通り酒好きの酔傑、ディーノに自分の酒を勧める。おお、なんだか気さくな良い奴です。 酒の誘いを断り、トランプカードを酒瓶に投げつけるディーノ。酒瓶がスパッと切れる。なんだディーノ、心が狭いぞ。 面白がる酔傑。ディーノの解説がはじまる。 ディーノ「これぞ本場ヨーロピアン魔殺術ゾリンゲン・カード!!」 ・・・ちょっとまて!!どうしてお前はそんな技を持ちながら、いままで一切使わなかったんだ!? 今まで鳥を使ったり、鞭を振るってたのに、全く関係ないじゃん!! 前回の鎮獰太子戦からほとんど時間も経ってないであろうに、新しい衣装を用意し、新たな武器を開発し(?)本場ヨーロッパの魔殺術を習得したディーノ。その集中力で日常から修行に励めば、死天王も夢ではないだろうに・・・。 そしてディーノはそのカードを酔傑に投げつける。しかし、辣絹布で織ったという旗で打ち落とされる。そのまま酔傑は槍でディーノを攻撃。ディーノの首が落とされます。しょせん鎮守直廊、ここまでか!? いや、ちがう!ディーノは生きていました。落とされたと思ったのは瞬時にすりかえたロウ細工で出来たものだったのです! おお、すごいぞディーノ。男塾派には少なかったトリッキーファイターだ。 しかし、いつの間にロウ細工まで用意していたんだ?他の仲間の試合はちゃんと見てたのか!? 酔傑「フフ、おもしれえとっつぁんだぜ。末期の酒はオレのおごりだ」 おお、こちらもなかなかカッコいい。いままでにない、いなせな敵の誉め方です。 そして、またディーノのうんちく。 ディーノ 「フフフ・・・手品、奇術、魔術とは人の視覚の盲点をつき心理の裏をかくこと! それを究極の殺人術として完成させ、もはや芸術として呼ばれるのがこのヘルズ・マジックです!」 おお!なんだか言ってることがカッコいいぞ! でもお前、完成させたとか、芸術として呼ばれたとか、嘘だろ!? 思いつきでやってるとしか思えないことを、そこまで自信たっぷりに言うディーノに乾杯!!(><) そしてディーノはまたカードを投げつけます。旗で打ち落とそうとする酔傑。だが、今度はカードに火が付き、旗は焼け落ちる! なんでも辣絹布は丈夫だが燃えやすいとのこと。ふーん。 そのまま酔傑の馬をカードで倒し、酔傑を地面に引きおろしたディーノ。絶好調です! まあ、他の馬使いとは違って、酔傑はあまり馬を戦闘に使用してなかったようなので、たいしたことはないのだけど。 次に酔傑は地穿鞭(チセンベン)という武器をとりだしてきます。これは地面に潜った鞭を自在に操り、敵の足元から鞭を飛ばすという武器で、名前といい能力といい、まさに宝貝。 ディーノの足は地穿鞭で固定され、身動きが取れない。そこへ酔傑が巨大な手裏剣を飛ばしてきます。瞬時に煙幕をはるディーノ、しかし、あわれディーノは胴体から真っ二つに!! 吹っ飛んだ上半身を怪しく思い近づく酔傑。もしやこれも先ほどと同じロウ細工では・・・。迂闊に酔傑が近寄ったときディーノの上半身が襲い掛かります! そう!ディーノの切断された下半身がロウ細工で、本当の下半身は土の中に埋まっていたのです。 ディーノは「かかったな!これぞ眩魔切断術(ミラクルカッター)」と叫び、酔傑の首筋にカードを突き立てます。 ところで、ミラクルカッターなどと名前をつけておりますが、こんな応用性の低い技が体系化された技であるはずがありません。 もし地面が土でなかったら?もし敵の武器が胴体を切断するほどの武器ではなかったら?これから察するにおそらくディーノは自分の機転に思いつきで名前を与えているのでしょう。しかし何にせよ、ディーノ完全勝利です。お見事、ディーノ。あっぱれ、ディーノ。 4、ディーノの最期 酔傑に大ダメージを与えたディーノ。酔傑は「末期の酒にそこの酒瓶を取ってくれ」といいます。ディーノは自分の攻撃は手加減しているから死にはしない、といいながらも酔傑に酒を渡します。 おお〜いい話ですねえ〜。殺伐とした天挑五輪の中にあって、数少ない美談です。そこはかとない友情すら感じられます。 ・・・ですが! なんと酔傑は酒瓶の中に仕込み針を仕組んであり、ディーノに向かって針を吹きつけます。視界を奪われるディーノ!! が、がび〜ん。今までいい人キャラであった酔傑、突然の変貌。梁山泊はかなり仲間も良心的なため、別に負けたって制裁されないのに・・・。それに何より、このまま負けていれば次のシリーズで男塾メンバーとして復活できるのに!!この卑怯な行為が酔傑から命と出番(笑)を奪うのです!! (・・・まあ、よく考えれば鎮守直廊ごときに敗れた男が男塾で生き抜けるとは思いませんが) 視界を奪われたディーノに酔傑が地穿鞭で攻撃を仕掛けます。致命傷を負うディーノ。 ディーノは桃たちに別れをつげます。 「あなた達には何もしてやれませんでしたが、これが男塾三号生として、わたしが唯一残せるさよならのプレゼントです・・・」 本当にディーノは何もしてなかったので、言葉に真実味があります。言葉が重いです! そして、ディーノは酔傑の槍を持って、酔傑に立ち向かいます。簡単に槍を奪い返した酔傑はディーノにとどめの槍を投げつけます。ディーノの口を槍が貫きます。 ですが、先の二回のマジックに用心深くなった酔傑はディーノの血を確認します。 酔傑「ニワトリの血ではない。間違いなく人間の血だ」 しかし、これもまたディーノのマジックだったのです!! 槍はディーノの口を貫通していたわけではなく、ディーノはあらかじめ槍を折っており、それを咥えていただけだったのです。カモフラージュの血は自分の舌を噛み切ったものでした。これにディーノはまたしても名前をつけます。 ディーノ「こ、これぞ、ヘルズ・マジック奥義、奇跡の杖(ミラクルケイン)!!」 ・・・やっぱり技の名前は適当に付けているようです。 ミラクルカッターとどこらへんが違って奥義なのか、非常に謎ですが、まあ良しとしましょう。 そしてディーノは不意をつき酔傑を羽交い絞めにします。 しかしディーノにはそのまま酔傑を締め上げるような力は残っていません! そこで出たのが、あの有名な一言。 「こ 今度ばかりはタネはありません。ほ 本当にさよならです!!」 そしてディーノは激流の中へ酔傑とともに落ちてゆきます。 一陣の風がディーノのシルクハットを舞い上げ、滝の上にディーノの顔が浮かび上がります。 そして、「男塾鎮守直廊三人衆最期のひとり、男爵ディーノ・・・・・・死す!」のナレーション。 『男爵ディーノvs酔傑』 伝説の激闘はこれが全てです!! →「まとめ」に続く |
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