1994年3月末のある日のこと、とある駅でぼくは「ぶらっとクイズラリー」というパンフレットを見つけました。
なんでも首都圏のJR東日本で、これまで季節を限定して販売されていたホリデーパスというお得なきっぷが通年販売になり、さらにホリデーパスより多少広いエリアをまわれる「スーパーホリデーパス」というお得なきっぷも新発売になるいう話です。
そしてその記念として、1994年4月の土日にホリデーパスでまわれるエリアの特定の10駅をまわって、そこにある問題を答え、ハガキに答を書いて切手を貼って送るともれなく500円のオレンジカードがもらえるというキャンペーンを行うというものでした。
特定の10駅は5種類(5コース)あり、以下の50駅でした。
・山並コース:新宿・中野・荻窪・国分寺・八王子・高尾・昭島・青梅・秋川・登戸
・潮騒コース:東京・新木場・西船橋・稲毛海岸・千葉・佐倉・蘇我・五井・袖ヶ浦・木更津
・田園コース:上野・日暮里・戸田公園・南越谷・大宮・川越・蓮田・久喜・古河・小山
・青空コース:品川・大森・川崎・武蔵小杉・東神奈川・長津田・横浜・港南台・鎌倉・茅ヶ崎
・七色コース:越中島・小岩・市ヶ谷・渋谷・蒲田・西荻窪・池袋・巣鴨・金町・赤羽
七色コース以外は中央本線沿い・内房線沿い・東北本線沿い・東海道本線沿いのおもな駅と、枝分かれしているいくつかの駅を10個集めてコースにしているわけです。
七色コースは東京23区の駅のみのお手軽コースとなっているわけです。
なにしろ、もれなく500円のオレンジカードがもらえるということは、ふだん2000円かかる旅行が実質1500円でできるわけで、これはのがさずやるしかない、と思ったわけで、5コースすべて行うことに決めたわけです。
2週目の土日は大学時代の元同級生と鬼怒川で泊まることにしていましたので使える土日は3回です。この6日のうち5日を使えば5コースすべてまわれそうです。
ぼくは考えました。どうせ土日を使うなら、土曜の夜は夜行列車に乗りたいなあと。
できるだけ遠くに行きたいなあと思ったのですが、北の方向はそれほど遠くには行けないようです。
ぼくは新宿から出ている「急行アルプス」というのに乗りたいと思いました。
スーパーホリデーパスが小淵沢(こぶちざわ)まで行けますので、アルプスで行くのに都合良さそうです。
土日は2回「使う」予定なので、あと1回夜行列車に乗る機会がありますが、2回急行アルプスに乗るのもなんなので、あと1回は去年11月にも乗った大垣行きの夜行列車で熱海まで行き、大垣発東京行きの夜行列車で首都圏に戻ろうと思いました。
この時、最初の土日はまだ青春18きっぷが使える時期なのでたぶん大垣行きは混雑しています。だからそちらは急行アルプスにして、次の土日を大垣行きにすると良さそうです。
さらに、潮騒コースは木更津まで行くことになりますが、これを、
熱海→大船→久里浜(東京湾フェリー)浜金谷→木更津
とすると都合が良さそうです。となると潮騒コースは日曜日にした方がいいな、そう思いました。
それから七色コースはすべて東京23区内の駅だなあ、もしすなおにまわると、わざわざ都区内フリーきっぷでまわれる場所を、高いホリデーパスを使ってまわることになってなんとなくもったいないような気がしました。
だから、七色コースはわざと遠回りして、都区内フリーきっぷで行けない場所を経由するようにしたいと思いました。
たとえば越中島から小岩を西船橋経由で行ったり、蒲田から西荻窪を川崎・府中本町・西国分寺経由で行ったり、金町から赤羽を新松戸・武蔵浦和経由で行ったりするとおもしろそうです。
ぼくはこのルートの中の、西国分寺から西荻窪までのルートに着目しました。と言うのも、1994年現在、西国分寺から西荻窪までは土曜日なら中央線快速が西荻窪にも停車するので乗り換えなしで行けるけど、日曜は中央線快速が西荻窪に停車しないので乗り換えが必要だったのです。
よし、七色コースは土曜にしよう、そう決めました。
これらのことを考えて、4月の予定をおおまかに決めました。
第1週
土曜:七色コース・日曜:山並コース
第2週
大学の友人と鬼怒川旅行
第3週
土曜か日曜に田園コース
第4週
土曜:青空コース・日曜:潮騒コース
そして最初の土曜のルートも決めました。以下のルートです。
東京→越中島→舞浜→西船橋→小岩→市ヶ谷→代々木→渋谷→品川→蒲田→川崎→府中本町→西国分寺→西荻窪→新宿→池袋→巣鴨→日暮里→北千住→金町→新松戸→武蔵浦和→赤羽
とまあ、こんなもんでいこうと思いました。
2日目は赤羽から新宿まで行き、急行アルプスで小淵沢に行き、始発の普通列車で高尾まで戻ってきて高尾から山並コース開始、と計画しました。
そして山並コースと潮騒コースはスーパーホリデーパス、その他はホリデーパスを使うことに決め、もよりびゅうプラザでホリデーパスとスーパーホリデーパスを買いました。
無事七色コースにチャレンジする日が来て、ぼくは寮のもより駅からホリデーパスで東京に向かったのです。
なお、ぶらっとクイズラリーの具体的な問題は、ほとんど覚えていないため、思い出せたものだけ記載しております。
2016年までスーパーホリデーパスは1994年4月2日から使えるようになったものと思っていましたが、どうやらそれ以前にも発売されていたことがわかりました。ただしホリデーパスと同じく、土休日ならいつでも使えるものではなかったようです。いつから発売されていたかは不明です。
電車は東京駅に到着した。京葉線に乗り換えよう。またあの動く歩道を通ることになる。
きょうは「ぶらっとクイズラリー」というちょっとした遊びをやっている。今度発売されることになった「ホリデーパス」を使って、1日に10ヶ所の駅に行くと、もれなく500円のオレンジカードがもらえるという話だ。だからまず最初の駅、越中島(えっちゅうじま)に向かっている。
ホリデーパスというきっぷは、以前話は聞いていたのだが、聞いたときにはもう売っておらず、次にいつ売るかもわからないきっぷだった。それがようやく買えることになった。
しかも、ホリデーパス自体の価格は2000円だが、上に書いた通り500円のオレンジカードがもらえるということは、都合1500円で東京に近いところのJRが乗り放題ということだ。これはうれしい。
しかし、パンフレットに書いてあった「駅ごとの問題」というのはどういうものなのだろう?まあ、実際に越中島に着いてから考えることにしよう。ぼくは地上のほかのホームから京葉線に向かって歩いていく。
歩いて歩いて、なんとか京葉線に続く動く歩道にやってきた。就職して以来、けっこうここを通ることが多い。もちろん首都圏120円おおまわり旅行でも通るけど、海浜幕張の幕張メッセで開催されているビジネスショウに行くために京葉線を使うのだ。交通費も入場料も会社持ちである。なんでも入場者数をカウントしていて、増えるとビジネスショウを開催する側にいいことがあるので仕事を休んででも行ってほしいとのことだからだ。
そんなわけで海浜幕張に行くときにこの東京駅の動く歩道をよく通るというわけだ。
それから幕張と言えば、大学祭に行ったけどイベントが見られなくて、大学から幕張メッセまで行ってモーターショーを見たなんてこともあったなあ。
あれは確か去年、小川範子(おがわのりこ)ちゃんのイベントを見に小田急で伊勢原に行ってバスで神奈川大学まで来たけど、並んでいたらイベンターが来て、「イベントに参加できるのは神奈川大学の人だけです」なんて言われたものだから、バスで平塚に行って幕張本郷に行ってバスで幕張メッセに行ったっけなあと思い出した。
海浜幕張に行くのに比べて幕張本郷だと、平塚から戸塚まで行って津田沼行きに乗れば、1時間電車でグウグウ眠れるっていうのが便利だったので京葉線には帰りだけ乗ったんだった。
こまかい金がそんなになかったから平塚で短距離のきっぷを買って、津田沼行きの電車の車掌さんを呼び止めて、1万円札で精算してもらったっけなあ。
モーターショーではやたらカメラマンにスマイルを送っているコンパニオンがいて、あとで雑誌を見たらちゃんと彼女が雑誌に掲載されていたなあと思い出す。
そんなことを考えているうちに、ようやく動く歩道が終わった。ちょっと進むと今度はくだりエスカレーターだ。総武本線のホームに続くエスカレーターと同じくらい長いエスカレーターをくだる。くだり切ったら次はどのホームに行くかによって階段を選ばなければならない。
最初の目的地、越中島には各駅停車しか停車しないので各駅停車の出るホームを探す。見つかったので階段をおりる。ホームにやってきた。
各駅停車はそんなに混雑していない。この電車に乗る一番の目的地は東京ディズニーランドで、もより駅の舞浜(まいはま)には快速も停車するからだ。乗ってしばらく待つ。そして発車。
電車は各駅に停車していく。八丁堀、日比谷線と接続しているのでちょっとだけ客がいる。そしてまた発車し、目的地の越中島に到着した。電車を降りる。
さあ、ぶらっとクイズラリーの問題というのはどこにあるのだろう?やっぱり改札の外かなと思う。まずは階段を上がって改札に向かう。
改札階に着いたがまだ地下だ。ホリデーパスを見せて改札を通る。
近くに看板があった。お、問題だ!こういうものか。えーとなになに。バス停?
どうやらバス停まで行くと答えがわかるらしい。さらに階段を上がる必要があるのか。まあ地下なんだからしょうがない。よっこいしょ。
階段を上がって地上に出た。まぶしいなあ。お、バス停がある。こんな各駅停車しか停車しない駅にバスが停車するのか。
うーん、これで解答がわかった。いちおう下に戻って確認してみよう。うん、これでいいみたいだ。
ここで、ぶらっとクイズラリーの問題についておおざっぱに説明すると、
・問題は三者択一
・選択肢ごとに「カタカナ1文字」が割り当てられている
・コースごとの10駅に「問題1」〜「問題10」が割り当てられている
・解答用ハガキには四角が10個並んでいて、左から「問題X」のX番目の四角に、選択肢の「カタカナ1文字」を入れる
・うまくいくと完成したカタカナ10文字が何か意味のあるカタカナ文字になるはず
というものであることがわかった。
たとえば、越中島に「問題2」と書かれていて、正解の選択肢に「ル」というカタカナが割り当てられていたら左から2番目の四角に「ル」を入れ、
小岩に「問題5」と書かれていて、正解の選択肢に「ア」というカタカナが割り当てられていたら左から5番目の四角に「ア」を入れ、
これらを繰り返し、七色コースの全駅をめぐって四角10個に「ブルガリアヨーグルト」というカタカナ10文字が完成したら、解答用ハガキに「七色コース・ブルガリアヨーグルト」と書いて送れば500円のオレンジカードが送られてくる
というわけである。
なるほどなあ。これなら「もとで」がいらない。
「もとでがいらない」というのは大事で、たとえば「この駅で駅名の入った写真を撮って送ること」などという応募要項では、カメラという「もとで」が必要になってしまう。そんな高価なもとでをかけるほどの価値があるとはとても思えない。
でも「クイズ+問題」という形式なら、確実にここの駅に来ないと解答できないし、もとでもいらない。だからカメラのないぼくにピッタリというわけだ。うん、これでなんとかぶらっとクイズラリーを5回やる自信がついた。
さて、次の目的地は総武線の小岩だ。西船橋経由で行く予定なのだが、残念ながら越中島に停車する各駅停車は西船橋には行かない。いったん蘇我行きに乗り、どこかで西船橋行きに乗り換えないといけない。
ぼくは舞浜で乗り換えることにした。東京ディズニーランドに行く客がたくさん降りるはずで、どういう客か見てみたいと思ったからだ。
各駅停車がやってくる。今度も親子連れが乗っている電車だ。乗って進む。じきに地上に出てきて新木場に停車する。有楽町線から降りてきたらしい客が乗ってきてさらに進む。ふだん快速しか乗らないけど各駅停車もいいものだなあ。
電車は新木場を発車すると葛西臨海公園を過ぎ、千葉県に入っていった。いつも京葉線を通るときと同じように、東京ディズニーランドのシンデレラ城が右手に近づいてくる。
そして乗換駅、舞浜に到着した。それほど多くはないが、親子連れが降りていった。なにしろ春休みだからなあ。客も多いだろう。彼らに続いてぼくも降りる。そのまま待つ。
ぼくは東京ディズニーランドには行ったことがない。なにしろあそこは、彼女連れで行く場所だからだ。一度も彼女がいたことのないぼくが行く場所ではない。いつか彼女連れで京葉線で東京ディズニーランドに来てみたい。
でもとある鉄道の本には、「彼女と東京ディズニーランドに行くときは、たとえレンタカーを借りてでもクルマで行こう」などと書いてあったからなあ。他ならともかく鉄道の本に書いてあるんだからひどいものだ。
でも彼女がいないならクルマなんか持ったらローンとか自動車保険とか高そうで貯金を食いつぶしそうだ。
いつになったら結婚できるか、どうすれば結婚できるかわからないが、結婚できたときのため、お金をたくさん使うクルマはまだ持たない方がいいだろう。
そんなことを舞浜のホームで、シンデレラ城を見ながら考えた。もうすぐ府中本町行きがやってくる。
電車が来た。これから東京ディズニーランドに行く子供連れが降りる。その後に乗る。席はあいていた。そして発車。
きょうもシンデレラ城は右手に遠ざかっていく。あそこに行けるのはいつになるだろう。電車は進んでいく。いくつか駅を過ぎる。
市川塩浜を発車していくと、電車は左に大きくカーブしていった。このレールに乗るのははじめてだ。ふーん、こんなふうになっていたんだ。
蘇我に向かうレールが右に離れていくと、そのうち右に別のレールが合流してくる。南船橋から来たレールだろう。
合流してしばらく進むと駅に入っていった。何度か来たことのある西船橋駅だ。到着。電車を降りる。さあ、階段をおりて小岩に行く電車に乗ろう。
舞浜から乗ってきた電車を西船橋で降りて、階段をおりて、さらにおりて小岩に向かうホームに行く。西船橋には「潮騒コース」の問題があるはずだが、今まわっているのは「七色コース」なので、別のコースの問題をあらかじめ解いておくのはルール違反だと思うからだ。東京駅でも問題は探さなかった。
きょうも黄色い電車がやってきた。西船橋も小岩も快速は停車しないので乗り換える必要はない。朝早いがけっこう客はいる。まだ学生は春休みだろうし、こんなものだろう。
電車は江戸川を渡り、目的地の小岩に到着した。電車を降りる。さあ、越中島に続いて2個目の七色コースの問題を探そう。ホリデーパスを見せて改札を通る。
小岩はそれほど大きな駅ではないのですぐに問題は見つかり、問題の答えも駅の近くで見つかった。これでよし。
さて、そう言えばきょうはまだ朝めしを食べていないことに気がついた。でもこんな朝早くじゃ食堂はあいていないだろうなあ。
ぼくはここで、2月に稚内で急行利尻を朝早く降りたとき、駅前の喫茶店でモーニングセットを食べたことを思い出した。小岩にも喫茶店はないかなあ。
見回したらあった。よし入ろう。モーニングセットはちゃんとあるようだ。注文する。出てきた。焼きたてのパンとコーヒーだ。うん、モーニングセットはいいなあ。
これからも朝早く腹が減ったときは喫茶店を探してモーニングセットをたのもうと思いながら食べ終えて、無事おなかもいっぱいになり、駅前の喫茶店をあとにして小岩の駅に戻った。さあ、次は市ヶ谷だ。
またホリデーパスを見せて改札を通り、市ヶ谷に向かう電車に乗る。そして発車。
快速が追い抜いていく。錦糸町を過ぎると快速の線路が分かれていく。そのまま秋葉原を過ぎて、高架を進んでいく。
御茶ノ水に着くが、目的地は市ヶ谷なので快速に乗り換えるわけにはいかない。そのまま、見慣れた景色を見て電車は進んでいく。快速が追い抜いていく。釣り堀が見える。
電車は進んで次の目的地、市ヶ谷に着いた。電車を降り、ホリデーパスを見せて改札を通り、問題を探した。市ヶ谷の駅は小さいのですぐに問題は見つかった。えーと答えは、いったん駅からちょっと歩く必要があるか。
駅前の道はけっこう車通りの多い道路だった。なんとか答えを確認した。これでよし。次は渋谷に行こう。
またホリデーパスを見せて改札を通る。ここから渋谷に行くには、代々木(よよぎ)で乗り換えればいい。電車がやってきたので乗る。
東京にやってきて数年、けっこう乗り慣れている電車なので気負うこともない。すいすい進み、電車は無事代々木に到着した。電車を降りる。さて階段を・・・
考えたら、市ヶ谷から代々木に来て渋谷に行くときは向かいの電車に乗れば行けるから階段はいらないんだった。ぼくはそのまま山手線の電車を待った。
市ヶ谷から乗ってきた電車を代々木で降りた。渋谷に行くには向かいに来る電車に乗ればいい。
電車がやってきた。山手線はよほどの早朝でもない限りいつも混雑している。まして渋谷は客が多い。まだお昼にもなっていないが、渋谷で乗り換えてどこかに行く客も乗っているだろう。なんとか電車に乗って発車。
若者に人気らしい原宿を通り過ぎ、飲み会とかで数多く降りたことのある渋谷にきょうも到着した。電車を降りる。
さあ、越中島・小岩・市ヶ谷と違い、渋谷は広くて出口がたくさんある。
よし、渋谷で一番有名なのはハチ公だから、ハチ公口に行ってみよう。
ホリデーパスを見せて改札を通り、近くにこれまでの駅で見てきた問題のかんばんを探してみた。
うーん、見つからないなあ。
別の場所にあるかもしれないと思い、東横線に楽に乗り換えられる南口に行くことにした。
南口にやってきた。南口はハチ公口と違い、通路が東西に通じていて駅の東側に行くことができる。東横線への乗り換えも簡単だ。
そんな南口だが、どう通路を見渡してみても、やはり七色コースの問題は見つからない。うーん。
やはりハチ公口かなあ。それともぼくの知らない出口が渋谷駅にはあるのだろうか。
ぼくは東側に出て、北に進んでみることにした。銀座線が見える。
このあたりはあまり来たことがないが、ハチ公口に相当する場所に大きそうな入口はない。大通りまで出てガードをくぐってみるか。
ガードをくぐってちょっと南に進み、もう一度、ハチ公口近辺をよく見てみた。やっと見つけた。七色コースの問題だ。やっぱり大きな駅は問題を探すのがむずかしいようだ。
幸いなことに、問題の解答になるものはハチ公口の近くにあるようだ。無事解答になるものを見つけた。ちゃんと選択肢に合っている。これでよし。
まだぶらっとクイズラリー全体では、あと46個問題を解く必要があり、渋谷駅みたいな大きな駅もけっこうある。とりあえず七色コースだと池袋だ。これからどうなるのだろう。心配だ。でもがんばっていこう。
また改札を通ってホームに行く。渋谷は通勤で使う駅ではないが、飲み会とかで良く使う駅だった。だから渋谷から品川まで乗ることも何度もあった。地下っぽい場所を通ったり、五反田で大通りの上を通ったりして、大崎を過ぎて左に曲がって新幹線が右に見える。
そして電車は品川に到着した。電車を降りる。次は蒲田だ。さあ、京浜東北線に乗り換えだ。
渋谷から乗ってきた電車を品川で降り、京浜東北線のホームに向かった。ぶらっとクイズラリーの七色コースは、ほかのコースと目的地の駅が入り交じっており、たとえば蒲田は七色コースだが、近くの品川、大森、川崎は青空コースである。
品川の問題はあとで青空コースをまわる日に見ることにして、今はまっすぐ蒲田に向かう。乗り慣れた電車がやってくる。きょうも混雑している。しばらく谷間みたいな場所を進み、目的地の蒲田にやってきた。電車を降りる。さてどこの出口に問題があるかな?
はじめて蒲田に来た4年前は、すぐに目蒲線(1990年・1994年当時)に乗り換えたから、ホームの東急の案内を見て進んだが、あの出口は南口だから、東急乗り換え口でない出口の方かなあと思い、中央口っぽい出口の方に進んでみる。
ホリデーパスを見せて中央口っぽい出口を通る。ここからは東口に進む通路があったりするが、ぶらっとクイズラリーの問題があるのはそっちじゃないような気がしたのでしばらくあたりを探してみる。
あった。えーと問題は・・・西口に銅像があるけど銅像が着ている服は何か?
選択肢にはランニングシャツとか書いてある。とりあえず西の階段をおりてみる。
銅像はどっちかな。目蒲線の方に進むとあった。こんなものがあったのか。蒲田と言うと東口にある変なまがりくねったオブジェばかり目についてこれはわからなかった。
しかも、この銅像、確かにランニングシャツを着ている。正解はランニングシャツかあ。ぶらっとクイズラリーの問題はこんなものばかりか。まあわかりやすくていいな。よし、次は川崎まで京浜東北線だ。
ふたたびホリデーパスを見せて改札を通り、京浜東北線のホームに行く。来た電車に乗る。
電車は進んで多摩川を渡っていく。
次の目的地は西荻窪だが、蒲田から西荻窪まで川崎・府中本町・西国分寺経由で進む予定なのだ。
そして川崎に着いたので電車を降りる。
これから乗る南武線は大学時代に青春18きっぷで乗って以来何度も乗っている区間だが、きょう初めて使うこのきっぷ、ホリデーパスを使って乗っているんだなあと思うと気が引き締まる思いである。さあ、乗り換えよう。ぼくは階段を上がっていった。
蒲田(かまた)から乗ってきた電車を川崎で降りて、階段を上がって南武線のホームに向かった。
国鉄最後の3月に工場見学で南武線から京浜東北線に乗り換えて以来世話になっている駅である。乗り換え専用の通路を使えばそれほど混雑しないのがいい。
南武線にやってきた。次の目的地は府中本町(ふちゅうほんまち)である。
次のぶらっとクイズラリーの七色コースの問題のある駅は西荻窪なので立川まで行ってもいいのだが、どうせあした山並コースの時に中央線から登戸まで来る必要があるので、立川〜府中本町間はその時に乗ることにして、きょうは武蔵野線の方に乗ってみよう、そういう計画なのである。
立川行きでないと府中本町には行かない。停車しているのが立川行きであることを確かめて乗る。さすがに電車はいっぱいだ。乗ってしばらくすると電車は発車する。
しばらくは住宅街を進む。武蔵小杉を過ぎると住宅が減ってくる。武蔵溝ノ口を過ぎると山のそばを走るようになる。でも東急や小田急の神奈川県区間と違って山が迫る谷間を走るわけではない。南武線は多摩川に沿って進む路線なので基本は平地なのだ。
そのまま登戸を過ぎ、住宅がまばらなまま進む。土曜日はそれほど客は多くない。
南多摩を出ると川を渡る。蒲田から川崎に行く時に渡った多摩川だ。渡ると左からレールが合流してくる。
あれが何線か知らない人も多いだろう。でもぼくはちょっと前に「ホリデー快速鎌倉号」であのレールは通ったことがある。貨物用で、この快速以外旅客はめったに通れない場所だ。でもあの時は日が暮れてかけていてそれほど景色が見られなかった。いつか昼間通ってみたい。
多摩川を渡ると電車はスピードを落とし無事府中本町駅に到着した。電車を降りる。
この駅は南武線の川崎方面ホームだけ多少離れたところにあるが、その他のホームはけっこう近くにあって乗り換えやすい。階段を上がっておりて武蔵野線のホームに来た。
電車がやってくる。ここが始発なのですわれる。西国分寺まで行けばいい。じきに発車だ。
電車はまずトンネルに入る。トンネルを出ると府中の市街地の外である。さらに進んでさきほど書いた工場見学の1つの場所である北府中駅に着く。そして発車。
電車は北に進み、中央本線が見えてきた。そして中央本線の上に上がり、無事西国分寺に到着した。電車を降りる。
次の目的地は西荻窪(にしおぎくぼ)だ。階段をおりて右に進み、下り階段をおりて東京行きに乗ればいい。日曜日以外なら西国分寺に停車する電車はすべて西荻窪に停車する。さあ、進もう。
府中本町から乗ってきた電車を西国分寺で降りて、乗り換え階段に進む。いったん改札のあるフロアに出て右に進み、下り階段をおりる。なにしろ狭い階段なので混雑する。なんとか東京行きのホームに来た。
電車が来た。きょうも混雑している。電車に乗って立つ。中央本線には先月も長野県まで乗ったし、それほど見慣れてないわけではない。けっこう家並みの多い中を電車は進んでいく。
国分寺で中央特快の待ち合わせをして、さらに進む。井の頭公園の近くにある吉祥寺(きちじょうじ)駅を過ぎる。
そして目的地の西荻窪に着いた。何もなさそうな駅だけど、どんな問題だろう?ホリデーパスを見せて改札を通り、問題を探す。無事見つかった。
うーん、こんな問題かあ。確かにこういう問題なら駅近くでだいじょうぶだな。
駅の南口のまわりをちょっと歩くと解答になるものが見つかった。これでよし。問題を解答するとまたホリデーパスを見せて改札を通る。
次の目的地は池袋だ。ここからだと新宿に行って山手線に乗り換えだ。快速の方が早く新宿に着くので快速のホームに向かう。
電車が来た。今度ももちろん混雑している。乗って進む。
中野を過ぎると新宿のビルが見えてきて、ヨドバシカメラの大ガード店が見えてくる。
そして電車は無事新宿駅に到着した。電車を降りる。新宿には山並コースの問題があるはずだが、きょうは七色コースの日なので見ないことにしよう。
池袋に向かうため、ぼくは階段をおりて山手線に乗り換えることにした。
西荻窪(にしおぎくぼ)から乗ってきた電車を新宿で降りて、山手線ホームに向かう。何度も通った場所だ。きょうもなんとかたどりついた。
池袋に向かう電車はきょうも混雑している。そして電車は池袋に到着した。さあ、大きな駅だから問題を探すのもめんどうそうだ。なんとかがんばろう。
ホリデーパスを見せて改札を通る。いつものように人通りの多い地下通路だ。どこかに七色コースの問題はないだろうか。
見つけた。ほかの駅にあったものと同じ看板だ。見てみよう。えーと、これも蒲田にあったのと同じような銅像の問題のようだ。どうやら東口近辺にあるようだ。行ってみよう。
池袋に来るときはたいてい通路を進んでから階段を上がる。駅前広場の東に出られるからだ。しかしたぶん問題の銅像は駅前広場の西だろう。だからふだんのぼらない階段をのぼることになる。見慣れない景色の所に出た。駅前広場の西のようだ。
駅舎の近くを南北に見渡してみよう。歩いてみた。お?あの銅像っぽいものかな?
どうやらそうらしい。なんだか大きな左手っぽいものの上に赤ちゃんっぽいものが載っている。
そう言えば問題の選択肢に「左手」ってのがあった。ということは正解は左手か。まあこんなもんだろう。あと3駅だな。
次は巣鴨(すがも)だ。また池袋の改札に行き、電車を待つ。電車が着くと大量に客が降りるが空席ができるほどではない。でも二駅だし、たいしたことはない。電車は進んで巣鴨に着いた。ここで降りる。一度も降りたことがないが、どんな駅だろう。
そんなに大きな駅ではないので改札を通るとすぐに七色コースの問題が見つかった。そんなに歩かなくても解答できる問題だった。これであと二つだ。
さあ、次は常磐線の金町(かなまち)だ。普通は山手線を西日暮里(にしにっぽり)で降りて営団地下鉄の千代田線に乗り換えると西日暮里から乗り換えなしで金町に行けるんだろうけど、今使っているのはJRにしか乗れないホリデーパスだ。だから日暮里まで行って常磐線に乗り換えなければならない。日暮里からだと北千住で乗り換えないと金町には行けないだろう。
こういう不便もあって、自家用車が便利ならば自家用車を使いたいという人は多そうだが、いかんせん渋滞だらけで自家用車も不便だ。だから多少不便でも電車を使う人は多いのだろう。さあ、がんばろう。
ホリデーパスを見せて改札を通り、「上野方面」のホームから山手線電車に乗る。そして谷間のような場所を通って田端(たばた)に来る。
そこから線路がたくさんある場所を進み、先月只見線に乗るため高崎まで通ったレールも見えてくる。そして日暮里に到着。
ここは乗り換えやすい駅だ。階段を上がっておりて常磐線ホームに行こう。
巣鴨(すがも)から乗ってきた山手線の電車を日暮里(にっぽり)で降りて、階段を上がっておりて常磐線のホームに来た。
ぶらっとクイズラリーの七色コースの9番目の問題がある金町駅には日暮里からだと直接行くことができず、北千住で乗り換えなければならない。常磐線から東武とかの乗り換えはしたことがあるけど、この乗り換えはしたことがないなあ。
代々木上原行きから上野行きの乗り換えはいつも松戸か柏だった。武蔵野線からの新松戸での乗り換えだからだ。どんな乗り換えになるのだろう。まずは行ってみよう。
いつものように取手行きの電車に乗る。さすがにすわれない。電車は発車すると右にカーブしていく。そのうち日比谷線のレールが見えて、川を渡ると北千住だ。電車を降りる。さあ、ここで探すのは「千代田線」の案内だ。
まずは階段をおりなければならないようだ。ん?中間改札??
なぜか北千住には無人の中間改札があった。そこをぬけるとさらにくだり階段がある。そしておりると、千代田線のホーム、すなわち金町に行けるホームがあった。北千住の千代田線のホームって日比谷線と違って地下なんだ。
なるほどなあ。めんどうだなあ。松戸や柏の乗り換えも、赤坂見附とか表参道とか青砥とかに比べるとめんどうだが、北千住ほどじゃなかった。やっぱりなるべくなら北千住のこの乗り換えは避けたほうがいいなあと感じた。
さあ、我孫子行きがやってくる。乗ろう。今度は多少すいていて、すわれた。そして発車。
発車してしばらくすると地上に出る。川の近くのいい景色である。そして綾瀬に到着。いい景色だなあと思っているうちに電車が発車する。
さて、気になることがある。実はぼくは今住んでいる会社の寮に来年3月までしかいられないということだ。どこかのアパートに引っ越す必要がある。
なんとなく、綾瀬から金町のあたりなんかいいかなあと思っているのだ。時間があったら亀有のあたりを散歩してどんなものか景色をながめてみようかと思っている。
そんなことを考えているうちに電車は亀有を過ぎて金町に到着した。ここで電車を降りる。改札に行ってホリデーパスを見せて通る。さあ、ぶらっとクイズラリーの問題を探そう。
とは言っても、駅は小さいのですぐに問題も見つかり、解答も見つかった。これであとは赤羽の問題を残すのみとなった。
さて、まだ日も暮れていないし、昼めしでも食べることにしよう。駅前のカレー屋でカレーを食べることにした。入る。
昼食には遅い時刻のようで、注文するとすぐにカレーが出てきた。小岩でモーニングセットを食べてからかなり時間がたっており、腹が減っていたので昼めしもうまかった。ごちそうさま。
さて赤羽に武蔵野線経由で行こう。金町も新松戸も各駅停車しか停車しないから松戸で乗り換える必要もない。ホリデーパスを見せて改札を通って我孫子方面のホームに行く。電車がやってくる。きょうもすわる。
電車が江戸川を越えて松戸の市街地に入り停車する。いつも乗り換えている駅だ。さらに進むが、あとは切り通しに挟まれた見通しの悪い場所だ。
数駅で無事電車は新松戸駅に到着した。さあ、府中本町行きの武蔵野線に乗って武蔵浦和で降り、赤羽に行って最後の七色コースの問題を解こう。ぼくは新松戸の乗り換え階段を上がっていった。
金町から乗ってきた千代田線直通電車を新松戸で降りて、武蔵野線に乗り換える。何度も120円おおまわり旅行で通っている駅なのでそれほど迷わない。
階段を上がって無事府中本町方面のホームに出た。しばらく待つと電車が来たので乗る。そして発車。
いつも通る場所なので気負うこともなく景色をながめる。きょうも天気はいい。
電車が新三郷駅に近づいていく。このあたりは西船橋に行く電車と府中本町に行く電車がとても離れて通る場所で、新三郷もホームがとても離れているという話だ。
事実電車が新三郷に着いてもここのホーム以外にホームが見あたらない。きょうは通り過ぎるだけだが、田園コースの駅をめぐる2週間後に新三郷に降りてみよう。電車は発車し、また離れていたレールと合流する。
電車はさらに進み、南越谷に到着する。東武伊勢崎線との乗換駅だ。ぶらっとクイズラリーの田園コースの問題もある。しかしきょうは七色コースの最中なので問題を見るわけにはいかない。また発車する。
東京からそんなに離れていないのにけっこう緑の多い場所を武蔵野線は走っている。それでも南浦和が近づくとだんだんと住宅が多くなってくる。
そして電車は南浦和に到着した。目的地は赤羽なのでここで降りてもいいのだが、なんとなくきょうは1つとなりの武蔵浦和まで行きたくなった。ドアが閉まって発車。
南浦和から武蔵浦和まではけっこうな市街地だがなぜかトンネルがある。トンネルを出てさらに進む。しばらくして無事武蔵浦和駅に到着した。電車を降りる。
さあ、あとは埼京線で赤羽に行ってぶらっとクイズラリー七色コースの最後の問題を解答しよう。ぼくは埼京線に向かう通路へと進んでいった。
新松戸から乗ってきた電車を武蔵浦和で降りる。埼京線に乗り換えだ。
ここで乗り換えたことは120円おおまわり旅行をした時に何度かあったような気がする。一番府中本町寄りにだけ通路があり、通路を長いこと進むとようやく埼京線へののぼりエスカレーターがある。赤羽方面であることを確認して上がる。
埼京線は山手線ほどひんぱんに来るわけではない。多少待つと新宿行きがやってきたので乗る。なんでも朝夕はものすごく混雑するそうだが今はそれほどでもない。でも席はいっぱいだ。そのまま出発。
すぐとなりに新幹線の線路が見える。2月に北海道に行くのに使ったけど、次に乗るのはいつになるだろう。たまにすれちがう新幹線を見て考える。
そのうち小さな山を抜けるトンネルに入る。新幹線もトンネルに入るけど埼京線も入る。埼京線の方はトンネルを抜けるとすぐに目的地の赤羽に着く。ようやくぶらっとクイズラリーの七色コースの10個目、最後の駅に到着だ。電車を降りる。乗る客の方が多く、いっぱいになった電車が新宿に向けて去っていく。
1994年の赤羽駅は埼京線が高い位置にあり、東北本線のホームはずっと低い場所にある。埼京線から出口に行くには階段をずーっとおりて、東北本線の下を通って、京浜東北線の下も通って行かなければならない。でも改札は東にあるだけなのでぶらっとクイズラリーの七色コースの問題もすぐに見つかった。
問題の解答になるものも無事に見つかり、10文字の解答も確認した。これでよし。これでハガキを送れば500円のオレンジカードが届くだろう。とりあえずきょうの「義務」は終わったことになる。
問題は解答したが、せっかく知らない場所に来たことだし、ちょっと赤羽駅近辺を散歩してみよう。
ふと、「マルフク」という看板が目に入った。
なんでも「電話買い取り」のお店だということだ。
そう言えば思い出すことがある。とある抽選に応募して一等が当たると何万円かもらえるけど、二等の景品がPHSなのだ。
PHSなんかもらっても月々基本料金はかかるだろうし電波が弱くてたいしてつながらなさそうだし、こりゃもしかしたら「PHSの押しつけ」なんじゃないかと思った。
だからもしこのマルフクという店でPHSを売ることができたら安心してこの抽選に応募できるな、そう考えた。マルフクでPHSが売れるだろうか。ぼくは店に入ってみた。
「あのー、もしPHSが抽選かなんかで当たったら、この店で売ることはできますか?」
「当店で買い取っておりますのは固定電話だけです。携帯電話の買い取りは行っておりません。」
そうかー無理かー。それじゃあの何万円か当たる抽選はPHSの処分ができないから応募できないな、そう考えて店を出た。
さて疲れた。きょうはほとんど電車に乗るだけの旅だったが、渋谷とか池袋とかで歩いたし、乗り換えでも歩いたし、もう散歩したくない。でもまだ日は暮れていない。
そうだ、せっかくホリデーパスがあるんだし、これで行ける場所に行ってみよう、そう考えた。
できれば120円おおまわり旅行で行けない、乗り放題エリアの端の駅がいいが、予定では再来週小山や土浦には行く予定だし、大月もこれから急行アルプスで行く予定だ。
よし、熊谷に行こう。
そこから先、新宿まで戻って急行アルプスに乗るんじゃつまらない。大宮まではどうしても行かなければならないが、そこから川越線と八高線を使って八王子に行って、八王子から急行アルプスに乗ろう、そう計画した。
さあ、そうと決まったら高崎線の電車に乗ろう。ホリデーパスを見せて改札を通り、東北本線の方のホームに行く。ここから高崎行きも出ている。目的地が熊谷だから籠原(かごはら)行きでもいいだろう。高崎線の電車がやってくる。もちろんすわれない。電車が発車。荒川を渡っていく。埼玉県南部の建物の多い場所を通っていき、ついさっき乗った武蔵野線の線路の下を通って北に進んでいく。
大宮を過ぎる。就職して首都圏に住んで以来ここ数年、120円おおまわり旅行をよくしている。でも大宮から北は高崎線も東北本線もおおまわりでは行けないのだ。
むろん青春18きっぷなら行ける。先月も行った。でも今は青春18きっぷを使っていない。だから今初めて使っているホリデーパスというきっぷが特別に感じるのだ。
大宮から北の、それほどひんぱんに通るわけではない景色を見ながら進んでいく。だんだん建物も少なくなっていく。そして熊谷に到着である。電車を降りる。本当にホリデーパスはここで降りられるのかな?
案ずることはなく、改札に見せると無事に通れた。ホリデーパスのことは使える駅の駅員には連絡が来ているのだろう。
階段をおりて駅の外に出る。まだまだ日は暮れておらず、金町でカレーを食べてからそんなに時間はたっていないが、ここで夕食にしたいと思った。そしてなんとなく、北の方向に向かうと食堂でもあるんじゃないかと思った。
学生時代の北海道旅行の美幌(びほろ)や斜里(しゃり。知床斜里の1985年当時の駅名)で、こっちに歩くとほっかほっか亭があるんじゃないかと思って歩いたら本当にあったのと同じだ。
歩いて歩いて・・・あった!吉野家だ!
1も2もなくぼくは吉野家に入って並を注文した。ふだん寮の近くでも食べるが、やっぱりいつでもどこでも同じ味のものが食べられるのはいい。きょうも牛丼が食べられた。ごちそうさま。さあ、駅に戻ろう。
吉野家に行ってもまだまだ日が暮れるまで時間があるので、熊谷駅の本屋で立ち読みすることにした。どんな本を読もうか。
ふと一冊の本が目に入った。「はじめての高速バス」という本だ。
確か高速バスっていうのは、めっぽう安い交通機関っぽいらしいなあ。2月に名古屋にでも行こうかと思い、2月の終わりなら青春18きっぷが使えるかと思っていたらいつのまにか青春18きっぷが使えるのが3月1日からになっていて、それじゃと思い、ためしに時刻表にあった名古屋行きのバスのページにある電話番号に電話したら満席ですと言われて名古屋に行くのをあきらめたんだったよなあと思い出した。
夜行列車っていうのは大垣行きみたいに青春18きっぷで乗れる夜行ならともかく、寝台特急は高いからなあ、もし高速バスというものがあるならどんなものなのか書籍で確認するのもいいかもしれないなあ。
そんなことを考え、「はじめての高速バス」を買うことにした。まいどあり。今はいそがしいから、あさってにでも読んでみよう。
さあ、もうすることもないし、八王子に向かおう。そう思い、ホリデーパスで改札を通った。そして上野行きの電車に乗る。この時間帯だと熊谷からならそれほど混雑していない。それでも大宮が近づくと混雑してくる。日も暮れてきた。
電車は無事大宮駅に到着した。さあ、川越線経由で八王子に向かおう。でもあまり早く着いても急行アルプスまでひまをもてあますから、川越線と八高線の乗換駅の高麗川(こまがわ)でしばらく散歩しよう、そう考えて電車を降りて埼京線ホームに向かった。
熊谷から乗ってきた電車を大宮で降りて、川越に向かう電車に乗り換えだ。まずは地下に向かわなければならない。
階段を上がり、東北新幹線ホームの方向に歩き、新幹線中間改札の手前でくだりエスカレーターに向かう。
何本かエスカレーターをおりると、2面4線のホームの上に出るので、これから川越に向かうのがどのホームか確認して正しいホームに向かう。無事川越行きの電車がやってきたので乗る。そして発車。
電車は地上に出て、しばらく高崎線と並行して進む。じきに左に曲がっていき、市街地を離れていく。いつもの120円おおまわり旅行で通る場所だ。
川を渡って電車は進む。ずっと川越まで市街地らしい場所は見えない。いつもの景色のまま市街地に入っていき、この電車の終点川越に到着だ。電車を降りる。
川越では階段を使わずに高麗川(こまがわ)行きに乗り換えだ。まだ改札を通ったことはないが、田園コースの問題があるので再来週通る予定だ。今は乗り換えだけにしよう。高麗川行きが発車し、また田園風景になる。
何度も通っている場所なのでたいしたことはない。埼玉西部の山が近づいていき、それほど大きくない集落に入っていくと終点高麗川に到着である。
電車を降りてホリデーパスを見せて改札を通る。さあ、散歩だ。何度も120円おおまわり旅行で通った高麗川だが、おおまわりでは途中下車できない。でもホリデーパスなら途中下車可能だ。なんだかとてもぜいたくな気がする。
とは言っても、高麗川は乗換駅であるにもかかわらず、地味な市街地だ。住宅は密集はしているが、商店とかは少ない。そんな夕暮れの中を、小高い山を遠くに見ながら散歩する。
八王子で急行アルプスに乗る予定だから、もうしばらく高麗川にいてもよさそうだ。そんなことを考え、もう少し散歩する。そのうち日が暮れる。
さあ、もうそろそろ八王子に行ってもいいだろう。ぼくはふたたびホリデーパスを取り出し、高麗川駅の改札へと向かった。
散歩から高麗川(こまがわ)駅に戻ってきた。なにしろ八王子から夜行列車に乗るのだから、あまり八王子で待つのもなんなので散歩して時間をつぶしたのである。ちょうどいい時間になった。
ホリデーパスを見せて改札を通り、八王子行きのホームに行く。
八王子行きのディーゼル車がやってきた。乗ろう。
もう日が暮れてかなり時間がたっているので景色が見えるわけではない。ホリデーパスは1日中乗り放題のきっぷだから別に景色とか見えない時刻に乗ってもそれほどもったいないきっぷではない。何度も昼間通っている場所だし、あしたも電車に1日中乗る。あせらずに行こう。とっぷりと闇の中をディーゼル車は進んでいく。
ディーゼル車は拝島(はいじま)を過ぎた。さて、八王子(はちおうじ)から急行アルプスに乗るわけなので、もう一度発車時刻を確認しようと、MATT(首都圏の時刻表)を取り出した。
それを見ていた向かいのロングシートの外国人が話しかけてきた。
「すみません、海老名(えびな)まで行きたいんですが、きょうじゅうに海老名に着けますか?」
幸いなことに、日本語が話せる外国人女性だった。夫らしい男性と2人の子供がいっしょにいるようだ。彼らの方が日本語がわかるかどうかはわからない。
とりあえずここから海老名まで行くのは八王子と橋本で乗り換えればいいが、運がいいと橋本で乗り換えなくてすむ電車があるかもしれない。
MATTを見た。今乗っている八高線のディーゼル車がこれ、相模線は・・・もう直通で八王子から出ている電車はないな。じゃ、横浜線か。えーと、すぐ乗れる電車がこれで橋本の時刻がこれ、ということは、相模線の電車は終電1本前に乗れるな。
ぼくは、
「きょうじゅうに海老名まで行けますよ。2回乗り換え、八王子と橋本で乗り換えが必要です。」
と、こたえたところ、
「どの電車に乗ったらいいでしょうか?」
と質問された。
こんな質問をするくらいだからふだん鉄道になんか乗ってなさそうだなあ。
八王子と橋本の乗り換えはそれほどめんどうなものではないが、この外国人にとってはむずかしいような気もした。
えーい、もういいや。ここで彼らにぼくが会うことも運命だったのだろう。ぼくは彼らを海老名まで案内する運命なのだろうと思った。ぼくは、
「いっしょに海老名まで行きましょう。」
と彼女に言った。
しばらくしてディーゼル車はどこかの駅で停車した。ちょうどぼくのいる車両のそばに改札が来た。改札のそばにはパンフレットが置いてある。どうやら1994年当時の東京近郊区間の各駅が記載されているようだ。もちろん拝島も海老名もあるだろう。ぼくはこれは外国人親子に役に立つだろうと考え、ディーゼル車を降りてパンフレットを持ってきて女性に渡した。
女性はめずらしいものを見るような感じで子供たちとパンフレットを見ていた。まあ海老名に行くわけだし、これからも海老名近辺のJRに乗るとすれば何かの役に立つだろう。
やがてまた発車していく。八王子はもうすぐだ。
きょうは海老名まで行くわけだが、八王子まで戻って急行アルプスに乗れるだろうか?
えーいめんどうだ。どうせ海老名まで行くんだから、きょうはそのまんま茅ヶ崎(ちがさき)まで行って、大垣行きに乗って熱海に行こう、そして大垣発東京行きで首都圏に戻ろう、そう決めた。急行アルプスにはまた何かの機会に乗ればいいかと考えた。そして時間が過ぎる。
ディーゼル車はいつものように終点八王子に到着した。ドアが開く。
それほど急ぐ乗り換えじゃないので、ほかの客が降りるのを待っていた。降りたのでぼくがディーゼル車を降りて、「こっちです」と言った。親子がついてくる。
外国人親子がディーゼル車から出てきたのを見て、「こっちです」と言って階段を上がる。彼らはついてきた。
階段をのぼりきると彼らを待った。よく見ると彼らは大きな荷物を持っている。父親も母親もけっこう重そうな荷物を持っていて、2人の子供もそれなりに大きな荷物を持っている。まるで引っ越しだ。たぶん引っ越しだろう。
さすがに代わりに持とうなどとは思えなかった。ぼくは道案内するだけでいいだろう。横浜線のホームがあっちだ。ぼくは父親がのぼりきるのを待って、横浜線ホームのくだり階段に向かった。
拝島から乗ってきた八高線のディーゼル車を八王子で降りて、階段を上がり、これから海老名に向かう夫婦と2人の子供の外国人親子が上がってくるのを待つ。
横浜線ホームの位置を確認する。あっちだ。
先頭の父親がのぼりきるとぼくは横浜線ホーム上の階段に向かい、また外国人親子を待つ。
大きな荷物をかついだ彼らを待ち、やってくるのを待って階段をおりる。もちろんちゃんと東神奈川行きの電車はホームにあった。たいして客もなく、彼らもすわれそうだ。親子がホームに来たので電車に乗った。
外国人親子は荷物をおろして座席にすわった。そして発車。土曜の夜おそく客が少ない電車は八王子の市街地を離れていく。それほど八高線と変わらない感じだ。電車は進む。橋本まではそれほど時間はかからない。
日が暮れているので景色は見えないが、なんとか電車は橋本に到着した。横浜線の方はちゃんとドアは自動で開く。外国人親子に降りますよと言って先に降りる。今度もまず父親が降り、母親、子供が降りてくる。さあ、階段をのぼろう。相模線はあっちだ。
八王子と同じく、父親がのぼりきるのを待って相模線の階段に向かい、父親がやってくるのを待って階段をおりる。
ここ数年、何度か120円おおまわり旅行で乗っている相模線の電車はちゃんとあった。もちろん押しボタン式のドアの電車で、ドアは閉まっている。とりあえず父親がおりてくるのを待とう。
父親がやってきたのでボタンを押す。さすがに終電一本前なのですいている。みんなすわれそうだ。
ぼくが乗り、親子4人が乗って荷物をおろしたので、他に乗ってくる乗客がいないことを確かめてボタンを押してドアを閉める。ぼくは日本語ができる母親に話しかけた。
ぼく「この電車はボタンを押さないとドアが開かないんですよ。」
母親「えっ、そうなんですか?」
ぼく「だいじょうぶです。海老名に着いたらぼくがボタンを押してドアを開けます。」
もしこの電車が相模線の終電だったら、海老名では外国人親子4人だけで降りてもらう必要があるが、終電の一本前だ。だからぼくも降りて改札を通ることにしよう。
茅ヶ崎行きの電車が発車する。終電前のおだやかな電車だ。すぐに車窓はまっくらになる。あとは無事電車が進むのをいのるばかりだ。
母親「海老名まであと何駅ですか?」
ぼく「◯◯駅です。準備しておいてください。」
ほんの4〜5回くらいしか相模線に乗ったことはないので、本当は地元の人でもいればその人が案内した方がいいのだが、まあこんなこともあるだろう。電車が進んでいく。
そして電車は無事海老名駅に到着した。ボタンを押してドアを開け、親子を呼び寄せる。電車を降りる。のぼり階段はすぐ近くにあった。親子が荷物をしょってやってくるのを確認してぼくは階段をのぼっていく。
のぼり切ると改札があった。海老名駅は階段の上に改札がある駅だった。何年か前にここから相鉄に乗ったような気がするがこんな駅だったかどうか覚えていない。まあホリデーパスがあれば出られるだろう。
大きな荷物をしょった親子が階段を上がってきたので、ぼくは親子に、ここが改札ですと言い、ホリデーパスを見せて改札を通った。親子もそれぞれきっぷで改札を通る。ぼくの役目はここまでだ。手を振って別れる。
親子は、小田急や相鉄の海老名駅に向かう橋を進んでいった。もう夜11時だが、ここから目的地に行く交通手段はあるのだろうか?まあ心配しても、ぼくは海老名の住民じゃないし、ここから先の道案内はもうできない。親子が見えなくなる。
外国人親子が無事目的地に着けるかはわからないが、とりあえずこれからのぼくのことを考えよう。
茅ヶ崎行きの最終電車が来るまでもうしばらくかかるから、持ってきたウメッシュを飲むことにする。酒はたまにちょっとだけ飲むのがいい。そしてさらに待つ。もうそろそろホームに戻ろう。もう改札に駅員はいないのでそのままホームに行く。
最終の茅ヶ崎行きがやってきた。停車したのでさきほどと同じくボタンを押してドアを開ける。客は全然いなかった。まあこんなものだろうな。
電車は発車して進んでいく。ディーゼル車時代から乗っている相模線だが、こんな真っ暗な時間に通ったことはない。でも、客が全くいないのはそれはそれでおもしろい経験だ。
そしてようやく電車は茅ヶ崎駅に到着した。もちろん客はいない。
青春18きっぷが使える時期だから大垣行き電車は混雑しているだろうなあと思いながら、ぼくは電車を降りて東海道本線のホームに向かった。