気がつけば、また一人ぼっちだった。
ほんの少しの付き合いだったはずの、でもいつのまにか見慣れてしまったつんつんな金髪の男のコも、ずっと顔も見ていない、同じ銀髪に紫瞳だけれどもなぜか間違いようのない二人も。
どうやって家に帰ったのかも覚えていない。
気がつけば、布団の中にいた。
カーテンから透けてくる日の光も、外でさえずる鳥たちも、何もかもがうっとおしくて布団の中にもぐりこみ、目を閉じる。
温かくて柔らかな感触に包まれて眠り、起きてはまた眠る。
そんな生活も3日もすれば退屈になってきた。
「腹減った・・・」
退屈というか、生理現象に勝てなくなっただけなのだが・・・。
適当に袋ラーメンでも作り(具なし)、すすりこみながら無意識にパソコンに手を伸ばしかけ、木霊は固まった。
この島で旅する者同士が情報交換をするためのサイトをいくつか回れば、だいたいの情報を得る事ができるだろう。
だが、そのどこかで、誰かが探している彼らを仲間にしたという情報があったら・・・。
もし、彼らが新しいマスターに出会えて満足していると知ったならば・・・。
きっと、知った事を後悔する。
「島を、でようかな・・・」
誰も居ないせいか思ったことが独り言になってこぼれて落ちる。
パソコンの電源スイッチに伸ばした手を引っ込めてラーメンの丼を抱え込み、麺とスープだけのラーメンをすする。
味気ない。いつもは具をたくさん入れるからとあっさりスープの物を買い置きしてあったのだが、何も入れない状態では物足りなさが感じられる。ラー油をたっぷり、胡椒も入れてみるが、物足りない。
もっと物足りないのは、一人で食べている事。
麺をすする音だけが響く、やけに広く感じられる小さな家。
「・・・暇」
ネットに接続する為の線を引っこ抜いて、パソコンを起動する。
いつもの画面、いつもと違ってどこにも繋がらない、一人ぼっちの何でもできる箱。
スピーカーの音を大きめにして、画面と指先に集中する。お気に入りの曲と動画が流れる中、曲にあわせて指がキーボードの上を踊る。
繰り返し流れる曲。心地よい響きのはずなのに、明るい曲のはずなのに、なぜかどのメロディも切なげに響き、ノれない。
ゲームを諦めて絵を描いて見る。スピーカーからは入れっぱなしのCDが恋の歌を歌い始める。
数時間画面の前に集中しては見たものの、思い通りの物ができない。
お絵かきソフトを閉じて、編集していた絵は棄てた。
跳ねた金髪の少年が拗ねた表情でベッドサイドの時計に座っていた絵。
元気そうな銀髪の少年がきらめく光を手にした絵。
無愛想な銀髪の青年が血煙の中で剣を構えた絵。
「・・・寝よう・・・」
諦めてパソコンの電源を落とし、ベッドの中にもぐりこむ。
愛用のカメの抱き枕を抱きしめて目を閉じる。何も考えない。
ネムッテシマエ
眠ってしまえば、何も感じなくていいから。
ユメノナカナラ
夢の中でなら、また側に居てくれるかもしれないから。
スベテマボロシ
幻だったならば、どれだけ救われるのだろう。