「素子ちゃん、ちょっといい?」

そこには当然のごとく着替え中の素子がいた。

『あっ・・・・・』

二人の声がはもった、しばらくの間、赤面する景太郎、無言で止水を引き抜く素子、

その時景太郎は素子が鬼に見えた。

「うーーらーーしーーまーーー!!」

「あっ、ちがっ、そういうつもりじゃ、」

「聞く耳もたーん、斬岩剣ーーーっ!!」

ズドォォォォォン

「ギヤァーーーーー・・・・・」

キラーン

壁の壊れる音とともに景太郎は星になった。

「今日はだいぶ飛びおったな〜、到着まで15分ってとこやな。」

「きゃーーっセンパーーイ!!」

「あれーっケータローどこいったん?」

「まいどまいど、バッカじゃないのまったく。」

こんないつもの平和な(?)日常から物語は始まる。

 

 

         ラブひなショートストーリー

                「素顔の自分」

 

 

「ただいま〜〜っ。」

しばらくたって景太郎が玄関から顔を出した。

「おっ、けーたろお帰り、14分40秒かー、+−20秒、んーまあまあやな。」

「へ?、なんのことですか?」

「ん?ああ、きにせんといて、それよかもう夕飯できとるで、ウチはモトコ呼びにいくからけーたろは早よいき。」

もう7時半という時間だけに景太郎のお腹の虫も鳴り出している。

「あっ、はいわかりました。」

そう言うといそいそと食堂へと急いだ。

食堂には世界中のどんな材料を使っても作れない異様な物体が並べてあった。

「今日は成瀬川が当番か、相変わらず個性的な・・・」

「うっさいわねー、これでも一生懸命作ってんのよ!嫌なら食べなきゃいいでしょ。」

「まあ不思議と味は良いから文句は言わないけどね。」

そこへ素子を連れたキツネが来た。

「あっ素子ちゃん、あのさ、さっきはゴメン、わざとじゃないんだ。」

「もうその言い訳は聞き飽きた、今度覗いたら我神鳴流に代々伝わる地獄の特訓を受けてもらうからな。」

「う、わっわかったよ、おっ覚えとくよ、ははははは。」

景太郎は地獄の特訓と聞き、頭から血が引く感覚をおぼえながら空笑いをした。

その時入り口から足音が聞こえて誰かが入ってきた。

「あっセンパイお帰りなさい、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよしのぶちゃん、ありがと、しんぱいしてくれて。」

「いっいえ、そんな、わたしは別に・・・」

そんなほのぼのとした雰囲気の中に荒々しい足音が聞こえてきた。

「ケータローおかえりー!!」

「ぶろあぁ!」

強烈な飛びゲリとともにスゥがつっこんできた。

「いてててて、スゥちゃんただいま。」

「全員集まったことやしメシにしよか。」

「メシやメシやー!」

そんなこんなでいつものように食事を始めるひなた荘の面々であった。

 

 

 

その日の夜、

たまたま寝付けなかったキツネが何気なくロビーにいくと、何か荷物を持った景太郎が出かける所に出くわした。

「なんや?けーたろこんな夜遅くに、もう1時半やんか、んー、夜遅くに出かける場所といったらあそこしか・・・・・・、

けーたろもなかなかやるなー、なんかおもろい事になりそうや。」

妙な期待をするキツネであった。

 

 

 

翌日、

「それじゃいってきまーす」

「がんばりーやなる」

「なにいってんの、仮にも元全国一位よ?」

「そういやーそうやったなー。」

この日、朝からのバイトがあったキツネと成瀬川が玄関で話しをしていた。

その時階段を降りる音とともに声がした。

「まってくれよ成瀬川〜!」

「おそーい、遅れちゃうわよ!?」

「ゴメンゴメンちょっと寝坊しちゃって。」

そう、この春景太郎と成瀬川は東大に合格した、景太郎と成瀬川はいつも一緒に東大にいっていた。

この日も玄関で待ち合わせをしていた、しかし、今日は景太郎が少し時間に遅れたのだ。

「それじゃあキツネ、いってくるねー。」

「キツネさん、いってきます。」

「いってらっしゃい・・・・そうや、けーたろ、昨日の夜どこいったん?」

「え!?、ナっなんデそんナこた、ことキクですか?!」

「いや、そんなあからさまに動揺せんでも、」

「あはははは、いやべつに、ところで何でそんなこと聞くんですか?」

景太郎はあきらかに動揺していた。

「いやな、トイレにいこおもって外に出たんやけどふとけーたろ寝たかなと思て部屋を覗いてみたんや、

けどけーたろ部屋にいなかったやろ?、だからちょっと気になってな。」

「トっトイレに行ってたんだと思いますよ、昨日は何回かトイレに行きましたから。」

「なんやそーなんか、ウチはてっきりどっかの誰かさんとホテルに行ったと思ったんやけど・・・」

「何でそこであたしを見るわけ?!」

「そっそうですよ、トイレですよトイレ、ははははは。」

「まっそういう事にしといたるわ。」

「まったくもー、ほらもういくわよ。」

「あ、まってよ成瀬川〜。」

そう言いながら二人はいそいそと出ていった。

しばらくしてキツネは呟いた。

「なるは嘘ついてんとちゃうな、けどけーたろは・・・・・。」

そこへ朝の練習を終えた素子が来た。

「あっキツネさん、こんな所でなにしてるんですか?」

しかしキツネは素子に気付かなかった、そして何事かブツブツと呟くと突然満面の笑みを浮かべて言った、

「おもろいことになりそうやなーー。」

そう言ってキツネは自分の部屋へと戻っていった、素子はわけがわからないといった表情を浮かべていた。

 

 

 

東大では成瀬川は人気者だった、彼女の行く所人だかりが出来ていた、授業が終わると・・・

「成瀬川さん!僕と一緒に帰りませんか!!」

「いやいや私のポルシェでお送りしましょう。」

「何を言うなるさんはこのぼ・く・と・一緒に帰りたいと言っているんだ。」

「バカを言うな、成瀬川さんはオレのバイクで送るんだ!!」

「成瀬川さん!僕と一緒に・・・」

「いやいや私のポルシェで・・・」

「なるさんは僕と一緒に・・・」

「オレのバイクで・・・」

etc,etc,etc・・・・・

このありさまである、成瀬川だけでなく景太郎も違った意味で人気だった。

「いえ、あたしはもう帰る人を決めてますから。」

『ええ!?だれですか?それは!!』

見事にハモった。

「それは・・・」

そこヘトイレから景太郎が帰ってきた。

「あっ景太郎一緒に帰ろー。」

「ああ、ちょっと待って、今用意するから・・・。」

その時後ろから凄い殺気を感じた。

「おまえか〜!」

「私の成瀬川くんを〜!!」

「きさま〜、どうやってぼくのなるさんをだました〜!!!」

「くそ〜!なんであんなさえない男なんだ〜〜!!!!」

一通り文句を言い終えたあと一人の代表らしき男が景太郎の隣に来て一言、

「月の無い夜は気お付けるんだね!」

「月の無い夜ってなんだよ月の無い夜って!!」

いつもこの調子である。

「ったく、逆恨みだっつーの!」

「あははは、まっ良いじゃない。」

「よくないよ!!」

「それより早く帰ろ、景太郎。」

「うん・・・・・あ!!、」

「?・・・どうしたの?」

「成瀬川!!、ごめん!ほんっっっとゴメン!!!」

「え?どう言うこと?」

「今日ちょっとこれから灰谷達と会わなくちゃいけないんだった!」

「そっそうなんだ、いいよ、あたしはべつに。」

「ありがとう成瀬川、それじゃあ俺もう行くよ。」

「うん、バイバイ。」

景太郎がいなくなった教室で成瀬川は怒ったような悲しんでるような顔で呟いた。

「なによ、景太郎のバカ。」

 

 

 

ひなた荘

「おかえりーなる。」

「おかえりなさい成(なる)先輩。」

「なる先輩おかえりなさい。」

「ナルー、おかえりー!」

「ただいまみんな。」

その時キツネは景太郎が居ない事に気がついた。

「そやなる、けーたろどないしたん?一緒に帰ってきたんとちゃうんか?」

成瀬川の顔が鬼の表情へと変わって行った。

「ああ、あのバカね、知らないわよあんなバカの事なんか、用事が有るとかなんとか言ってどっか行っちゃったわよ・・・

そう言えばこの頃景太郎と一緒に帰ってないわね。」

「そうなんか・・・・・やっぱりウチの推理は当たったようやな。」

「えっそれどういうこと?」

「それはやな・・・・」

キツネは昨日の夜に起こった出来事を話した、そして最後にこう付け加えた。

「ウチの推理からするとズバリけーたろは女ができたんや。」

『え〜〜!女〜〜!!』

またもや見事にハモった。

「そうとしか考えられないんや、深夜の不可解な行動、なるの誘いを断ったこと、それと昨日の夜部屋に居なかった

事を聞いた時の慌て振り、この三つの証拠とウチの女の勘がそういっとる。」

一番最後の女の勘と言うのが物凄く怪しいが成瀬川達は冷静な判断が出来なくなっていた。

「・・・・・・・・・・・・。」

成瀬川は無言の怒り、

「うーらーしーまー、切る!!」

素子はもう止水を抜いている、

「うーーん。」ドサッ!!

しのぶは気絶、

「(にこにこにこ)」

話がわからず頭に?を浮かべながら笑っているスゥ、

キツネはと言うと・・・・・

「(あちゃー、こりゃけーたろ死ぬな。)」

滅茶苦茶に無責任であった。

「来週の同じ日にまた出かけるはずや、それまではバレへんようにせんとあかんで。」

全員(スゥ以外)は真剣な目でうなずいた。

 

 

 

少したって景太郎が帰ってきた。

「ただいまー。」

「おっ帰ってきおったで、みんな普通にしいや、普通に。」

景太郎がキツネ達に近寄ってきた。

「どうしたんですか?こんな所でみんなで集まって。」

「いや、べつにどうもせーへんよ、所で今日のメシの当番けーたろとちゃうか?」

「あ、そーでしたすいません今作ります。」

そういうといそいそとキッチンに向かった。

しばらくして料理ができあがり、成瀬川達は食卓についた、そしていつもの食事風景が始まる・・・かと思いきや、

成瀬川の茶碗にはひびが、素子の後ろには地獄の炎が、しのぶは滝のような涙を流しながら無言で食べている、

食堂は異様な空気に包まれた、しかしキツネとスゥはいつもと同じだったので景太郎はなんとか耐えられた、

食事が終わり景太郎は早めに寝ることにした。

景太郎の苦悩の日々は始まったばかりだ。

 

 

 

次の日、苦悩の日々はやっぱり始まった。

「しのぶちゃん、あのさー・・・」

ボロボロボロボロ

「どっどうしたのしのぶちゃん、いきなり泣き出して。」

「いっ・・・・・」

「い?・・・」

「いっ・・・いっ・・・いっ・・・いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

そう叫ぶとしのぶは何処かへ走って行ってしまった。

「どうしたんだろう???」

相変わらず鈍感だった、そこへ・・・

「しのぶを泣かせたそうだな?」

「げっ素子ちゃん、いっ今のは違うんだ!」

「ふっこの時を待っていたのだ、問答無用!!」

「ごかいだーーーーー!」

「うるさい、斬岩剣、斬岩剣、斬岩剣、斬岩剣、斬岩剣ーーーー!!」

「ギヤァーーーーーーーーー」

「まだまだ、斬空閃、斬空閃、斬空閃、斬空閃、斬空閃ーーーー!!」

「もひとつおまけにギヤーーーーーー」

景太郎はもう一息で昇天する。

「ふっふっふっ、まだまだぁーーー」

「(殺される、間違いなく殺される。)」

そう思った景太郎は走った。

「逃がすか」

素子も走って追ってくる、逃げられないと思ったその時前から成瀬川が歩いてきた、景太郎ワラにもすがる想いで助けを求めた。

「成瀬川、たったすけてくれー。」

しかし、そんな景太郎の願いも神様には届かなかった。

「景太郎、しのぶちゃん泣かしたんだって?」

景太郎の表情が凍りついた。

「この・・・バカーーーーーーー」

「ドカッ、バキ、グシャ、グリュ、ベキバキボキ、パリーン、ドスッ、ミシミシッバキ」

本来人間の体からしてはいけない音を出しながら景太郎は・・・・・昇天した。

こんな生活を景太郎は一週間ビデオを巻き戻すかのように続けた、

はっきり言ってこれは殺人未遂である、しかし景太郎は驚異的な回復力で何とか乗り切っていた。

「しっ死ぬ〜〜〜〜〜」

滅茶苦茶しぶとい景太郎であった。

 

 

 

一週間後の深夜一時半、景太郎追跡隊βが結成された。

「さて、もうそろそろけーたろが来る頃なんやけどなー・・・おっ来よったで、スゥ準備はエエか?」

そこには一週間前と同じように何かの荷物を持った景太郎がいそいそと玄関から出て行く所だった。

「バッチリやで、メカたま3改や、普通のカメラはもちろん赤外線カメラや発信機、プラズマ火球に冷凍ビームも

ついとるでーー。」

「ちっちょい待ちーや、プラズマ火球に冷凍ビームってなんやねん」

「なるとモトコがつけぇてキツネが言ってたって言うもんやから。」

「なる、モトコ、けーたろの事殺すきか?」

「ちっちがうわよ、ちょっとした冗談よ、ねぇ素子ちゃん。」

「そっそうですよキツネさん、冗談ですよ冗談。」

「まあえーわ、そろそろいくで。」

「メカたま3改、発進ーー!!」

メカたま3改は音もなく発進した、景太郎に銃口を向けながら。

 

 

 

ひなた荘から30分ほど歩いた所の街中で、

メカたまから送られてくる映像の景太郎はさっきから立ち止まって時計を気にしている。

「景太郎なにしてるのかしら。」

「そりゃあこんな夜中に時計を気にしながら待ってるもんといったら女しかないやんか。」

「やっやっぱりそうなんですか?キツネさん。」

しのぶは今にも泣きそうな顔をしている。

「しのぶ、浦島はそう言う奴だったんだ」

「そっそんな〜浦島センパイ・・・」

「・・・・・おっ誰かけーたろに近づいてくで。」

みると景太郎の前から成瀬川に負けず劣らずの女性が歩いてくる。

「景太郎があんな女の人にもてるわけないわよ。」

「そやなー、けーたろの彼女にしたらキレイすぎるしなー。」

「そうですよ、浦島にあんな女性が・・・・・・」

素子は最後まで言えなかった、景太郎の前から歩いてきた女性が小走りになると景太郎の腕に抱きついた、

景太郎は最初は困った顔をしたが、まんざらでもなさそうだ。

その女性は景太郎の腕を引きかどをまがっていってしまった。

「あっあかん、みんなボーっとしとらんといくで、見失ってまう。」

「そうよ、景太郎の奴をぶん殴ってやるんだから。」

成瀬川は目がマジだ。

「ほならはよいくで、もうけーたろ達がいなくなってもうたで。」

「あれ、景太郎どこまがってったっけ?」

「あそこのかどですよ。」

しのぶが言ったかどをまがると成瀬川達は一瞬目をうたがった、

そこにあった物は『竜宮城』というホテルだった、しかも普通のではなくピンクの看板、ハデハデなネオン、

そう、そこは『ラブホテル』だった。

成瀬川達は錯乱していた、成瀬川はシャドウボクシングを始め、

キツネはどっから取り出したか分からないがワインの入ったグラスを手でもてあそび、

素子は扇子を取り出し日本舞踊、しのぶはスポットライトを浴びながら歌っている、

スゥはと言うとみんなに何か言っているが相手にされないと分かり仕方なくメカたまの調整をしている。

すると突然成瀬川が、

「帰りましょうか、ふっふふふふふふ。」

すると、

「そっそうやなー。」

「そうですね・・・・浦島、クククククククク。」

「そうですね〜〜〜〜♪」

まだしのぶは歌っていた。

スゥはあくびをしている。

いつのまにか成瀬川達の後ろには地獄の炎が浮かび上がっていた。

 

 

 

所変わってひなた荘

成瀬川達は部屋にも戻らずロビーでぼーっとしていた、

そこへ運悪く景太郎が帰ってきてしまった。

成瀬川達は景太郎に気付いていた。

「景太郎・・・・お帰り・・・・・。」

「なっ成瀬川!!、それにみんなまで、どっどうしたの?」

成瀬川の声には静かだが物凄い恐ろしさがあった。

「景太郎、ちょっと話があるんだけど・・・座って。」

景太郎は恐怖で声が出ず無言でコクコクうなづいた。

重苦しい間が続いた、しばらくしてキツネが静かに景太郎に言った。

「けーたろ、今までどこ行ってたん?」

「え!?たっただの散歩ですよ散歩、はっははは・・・・」

「ごまかさないで!!!」

成瀬川の物凄い迫力になにも言えなくなってしまった。

「景太郎、あたし達今日あんたをつけてたのよ。」

「そう、そうなんだ、ばれちゃったんだ。」

なぜか景太郎はあまり動揺はしていなかった、

キツネはそれに気付いていた、しかし成瀬川達は気付かずにいた。

「サイテーね、景太郎。」

「ハレンチ浦島ーーー、切る!!」

「センパイ信じてたのにそんなにスケベだったなんて・・・」

「ちょっちょっとまってよ、成瀬川も素子ちゃんもしのぶちゃんもなにいってるの?」

「とぼけても無駄だって言ってるでしょ、あんたがラブホテル『竜宮城』に入ったことはばれてるのよ!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ちょいまちっ、そんなとこなんで俺が行かなきゃいけないんだよ。」

「言い訳しないで!ホテルじゃなきゃどこにいったって言うのよ。」

「ん〜あのさ、ここで俺がホントの事言っても信じてくれないでしょ?」

「あっあたりまえじゃない、あんたみたいなスケベ。」

「そこでさ、明日も行くんだよその場所に、その時にみんなもついてきなよホテルじゃないって証明するからさ。」

成瀬川達はしばらく考えていたが、

「いーわよ、証明してもらおーじゃない。」

ということになった。

 

 

 

次の日

深夜一時半に景太郎達はひなた荘をあとにした。

昨日と同じようにひなた荘から30分ほど歩いた所の街中にいた。

「ちょっと景太郎、何で止まってるのよ。」

「ん?ああ、昨日と同じで待ち合わせだよ。」

「あの女の人と?」

「うんそうだよ。」

「あの人とどういう関係なのよ。」

「それは・・・あっきたきた。」

そこには昨日と同じように女の人が手を振りながら走ってきた。

「ゴメンゴメンまった?」

「いや、いまきたとこだから。」

「そお?・・・・ところで景太郎くん、その人たちは誰?」

「前に言っただろひなた荘っていう女子寮の管理人やってるって。」

「成瀬川なるです。」

「紺野みつね、通称キツネやよろしゅう。」

「前原しのぶです。」

「青山素子です。」

「カオラ・スゥや、スゥちゃんでええでー。」

「うふふ、よろしく、私の名前は『神崎・芽衣(しんざき・めい)』あだ名はメイ、よろしくね。」

一通り自己紹介も終わった時メイが景太郎にたずねた。

「景太郎くんそう言えばどうしてこの人達を連れてきたの?」

「それはね・・・・・」

景太郎がメイに何かささやいた。

「ふーんそういうこと、」

「それじゃいこうかメイ。」

景太郎達はそう言うと歩き出しかどをまがった、そう、ホテル『竜宮城』があるかどを。

ホテルの目の前に来た時景太郎が話し出した。

「成瀬川達はここでつけるのをやめたんだよねぇ?」

「うっうんそうだけど・・・」

「このホテルに用があるんじゃなくてホテルの横の道に用があるんだよ。」

そう言うと景太郎はホテルの横にある道を指差した。

「でっでもこんな所に何の用があったって言うのよ。」

「それは来ればわかるよ。」

成瀬川はなっとくいかないという顔をしたが黙ってついてきた。

しばらくして広い道に出た。

すると景太郎が言った。

「ここだよ。」

そこはライブハウスだった。

『え〜〜!?ここ?〜〜!!!』

成瀬川達の声が見事にそろった。

「ここってライブハウスでしょ?」

成瀬川が信じられないといった顔で言った。

「百聞は一見にしかずってね、さあいこう。」

景太郎達はライブハウスにはいっていった。

 

 

 

ライブハウスの中に入った成瀬川達は目を疑った、

そこには成瀬川達の知ってる顔があった、それは・・・

「あーっ灰谷くんに白井くん!?」

「あれ?なるさん?なんだ景太郎バレたのか。」

「うっさいなー。」

「景太郎、灰谷とオレはもう用意出来てるんだおまえも早く用意しろよ。」

「ああ、わかった」

景太郎はそう言うと奥に入っていった。

「だけどメガネトリオがバンドを組んでたなんてしらなかった。」

成瀬川が驚いた声で言った。

「ちなみにボーカルが景太郎とメイで楽器は景太郎がエレキでメイがキーボード、白井がドラムで

オレがベースなんだ。」

『へぇーーーー。』

成瀬川達は感心したような声をあげた・・・すると素子は素朴な疑問を感じた。

「しかし浦島の奴なんでこんな事を黙っていたんだ?」

「ああ、それはね、景太郎の奴が『人並みにうまくなってから聞かせたいんだ』って言ったんだよ。」

「へー、それで人並みにうまくなったの?」

「まあそこそこにね、ここのライブハウスのトリもやれるようになったしね。」

「ええ!?すごいじゃない一番人気ってことじゃないの?」

「う〜ん、そうなんのかな?」

その時知らない青年がドアから入ってきた。

その青年は、美形で売ればそこそこ人気が出そうなくらいととのった顔と背丈をしていた。

すると突然青年が灰谷に話し掛けてきた。

「おい灰谷、オレ達の出番っていつだ?」

「一番最後だよ、それくらいおぼえとけよ。」

「灰谷くん、知り合い?」

灰谷は一瞬驚いた顔をした、そしてこらえきれずに笑い出した。

「ぶはははははは、やっぱりわかんないってよ、け・い・た・ろ・う。」

「え?景太郎ってまさか・・・」

「おいおいひどいなー、成瀬川達ならわかってくれるとおもったのに。」

「うそーーー!!景太郎なの?」

灰谷と景太郎の言葉に他のみんなも驚いていた。

「そんなにかわってんのかなー。」

「滅茶苦茶かわっとるでけーたろ、かっこよーなったで。」

「そうですか?そう言われるとなんか嬉しいですよ。」

「景太郎、もうそろそろ時間だ、行くぞ。」

「ああ分かった、成瀬川達も聴いてくんだろ?ヘタクソでも笑うなよ。」

そう言うと景太郎達は舞台にでていった。

 

 

 

景太郎達が曲を歌い終え帰り支度をしていた時に突然景太郎が成瀬川に言った。

「どうだった?成瀬川。」

成瀬川はくすっと笑うと

「凄くよかったよ、景太郎」

「うっ浦島にしては・・・・・まっまあよく出来た方だと思うぞ。」

「センパイすっごくかっこよかったです!」

「けーたろ、かっこよかったでー。」

「ケータロは歌うまいなー。」

度重なる誉め言葉に景太郎はテレながら言った。

「ありがとみんな、そう言ってもらえると嬉しいよ。」

そう言うと嬉しそうにみじたくを再開した。

メイはそんな景太郎の表情を見ながら言った。

「景太郎くん、ここはもういいからさきかえってもいいよ。」

「そお?それじゃお言葉に甘えて、帰ろうか成瀬川。」

そういうと景太郎達はライブハウスを後にした。

 

 

 

帰り道、成瀬川と景太郎はみんなと少し離れて歩いていた。

「成瀬川、俺の歌ホントによかった?」

「ん〜?へたくそだったわよ。」

「ええーー!まじで?」

成瀬川は満面の笑みを浮かべると

「嘘よ嘘、うまかったよすっごく・・・惚れ直しちゃったわよ。

成瀬川は自分でも聞き取れないくらいの小さな声で最後の言葉を言った。

「え?なに?よく聞き取れなかったんだけど。」

「なんでもないわよ、それよりあんたさ、あたしくらいにはバンド組んでるって事

いってくれてもいいじゃない。」

「ごめんごめん・・・・・そうだ!おわびに明日デートしよ。」

突然の大胆発言に成瀬川は顔を真っ赤にして驚いた。

「なっなにいってんのよいきなり!!」

「だって惚れ直してくれたんでしょ?」

なるは真っ赤な顔をさらに真っ赤にして言った。

「きこえてたの!!?」

「ホントに言ってたの?そんな事。」

成瀬川は絶句した、そう、成瀬川は景太郎にだまされたのだ。

「なっなによ・・・バカ。」

「それとも俺とじゃいや?」

「そんなんじゃないけど・・・・・・。」

「ほんと?よかったー。」

成瀬川は嬉しそうに歩く景太郎の横顔を見ながら思った。

「(あたし、やっぱり景太郎のこと・・・・)」

いつもだったら否定する答えを今日は否定できなかった、

否定ではなく肯定してしまったからだ。

この日から成瀬川は素直になることに決めた、それは景太郎が素顔の自分をみせてくれたからだ、

その瞬間から景太郎と成瀬川は友達以上恋人未満の関係から開放された

 

人は仮面をとると分かり合える、だってそれが素顔の自分だから。

 

 

 

           END

  

 

 

 

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