まもって守護月天

〜22Century〜

 

 

〜15話(いよいよ完結編。きっと期待はずれ度54%)〜

 

 

 ――前回までのあらすじ――

 なんか、いろいろ困った事になってます。以上。

 

翔「手抜きっ!すげぇ手抜きだっ!」

 14話参照。

翔「…やる気ないだろ、ぜってぇ」

 

 

 

 

 辺りを見回して見る――…林、いや山の中だろうか。――さっきまでの街中とは空気が違う。瘴気が漂っているのが、肌を通してピリピリと感じてしまう。

 とにかく、このまま呆然としてるワケにはいかないと、太助は雪に埋もれた腰を上げた。

太「どうするかな――よし、こーいう時は持ってるアイテムを確認するのが風来人の定石だぁな」

 <太助はアイテムを持っていない>

 ……。

太「そういや俺、一応上着着てるけど、下は浴衣だし」

 …妙にボロボロだが。なんとなく劇場版ラストのカカロットっぽい(意味不明)

太「うーむ…拙いな、これっていわゆる『遭難』って奴?」

 聞いたところで、誰も、何も答える事は無い。

太「ソーナンスッ!!

 ………。

 ――う……気のせいか、体感温度が2、3度下がった気がする。余計に寂しくなったし。

 

 そして、この光景を見つめるモンスターが一匹――

 

 

 

ル「…さすが我が主ね。一人になっても一人ボケツッコミやるとは…」

 この月天でもちゃんと持ってるコンパクトで、遭難中の太助を監視中のルーアン――暖かい旅館の部屋では、既に料理は下げられていた。彼女の足元には豪快ないびきを立てる守護月天が一人…。

“がらっ”

 ふと、障子が開いた。入ってきたのは、全身ぐっしょりと濡れた出雲だった。気のせいか、奇妙な匂いがする。

出「ドクターペッパーの池なんて、粋な事してくれますねぇこの原子力グースカ精霊は

ル「…一体どこまで行って来たのよ」

出「かなり遠くまで流されましたよ…――途中で、下水道と合流してたので。――ところで、何やってるんですか? コンパクトで変身ですか?」

ル「そういう発想しか出ないのかしらそのロリロリ頭脳パワーには

 

 

 ――ちなみに、

 

太『リッド♪リッド♪リッド君と仲間達〜♪』(←寂しいので歌う人)

 じーっと見つめるモンスター・大目玉(←送信機)

 

出「なるほど…そういうカラクリですか」

 ルーアンのコンパクト(←受信機)を覗き見て、そう感想を述べる。――太助がしばらく歩いてるのを眺めていた直後、画面が真っ暗になった。

出「っ…!? どうしたんですか!?」

ル「――あ、お金切れたみたい」

出「えぇ!?」

 言うと、ルーアンはコンパクトの横側の投入口(!)に10円玉を3枚入れると、再び画面に光が戻った。

出(観光名所でよくある双眼鏡ですかっ!!?)

 

シャ「ハォ☆ 僕シャオ♪」

 無意識で誰かに挨拶をした後、辺りを見回す。何時の間にか――いや、殴られたのだが――寝てしまったらしい。目線の向こうでは、ルーアンと(何時の間にか戻ってきた)出雲が、こちらに背を向けて何やら見ているらしい。…なんだ?

シャ「そなた達、今、私の話をしていただろう?」

ル「してないわよ――ってひぃっ!? 復活ぅ!?」(ミリ秒単位で部屋の隅へ退避)

 先程の事に恨みを持ってる、と感じたルーアンは、野性的直感でシャオから身を遠ざけたのだ。

シャ「さっきのは、痛かった……痛かったぞぉーっ!!!」

 叫びと共にシャオは右手の肘を曲げて手の平を上に向け、気を溜める――普通の術者なら数秒掛かる気の形成化も、彼女は一瞬にして球形の気――『操気弾』を作り出し、躊躇無くルーアンに向け放った。

ル「ちぃ…っ!」

 上体を捻り、何とか回避するが、その横にいた出雲は巻き添え食らって後ろの障子を巻き込んで吹っ飛ばされた。

ル「今はアンタと戦ってる暇は――」

 しかも今は月夜――こちらは昼間の半分の強さも出ないというのに、一方の守護月天は最大限のパワーを発揮出来、オマケに不死身なのだ――勝ち目どころか、明日の太陽を拝めるかも危うい。

 操気弾の巧みな追撃を紙一重で回避しつつ、反撃の機会を伺うが――全く、隙が無い。操気弾を動かしつつも、目からのビームの連射でルーアンを更に追い詰める――

 ――ちなみに、この戦闘は室内である。

シャ「さぁさ、踊っておくれよっ!!」

ル(やられる!?)

翔「はぁ、ちかれた…――ただい――」

 披露困憊といった顔の翔子が、ガラと障子を開けて入ってくる――…一応説明するが、立ち位置としては、ルーアンとシャオ――その間に帰ってきた翔子――

 

 帰宅の挨拶を言い終わる間も無く、悲鳴を上げる間も無く、翔子は操気弾と速射型のビーム数発を同時に食らって――

 

 

 

 ………。

 ……。

 …。

 

 

 

翔「…あれ!? 私さっき死んじゃったよーな…」

 横たわっていた身体を起こし、翔子は後頭部を掻いた。

ル「きっ気のせいよ」

シャ「そうですよぉっ」

 二人とも、何かそらぞらしい。

翔「ん…?」

 コン、と足元に硬い感触を感じ、目線を向ける。そこには、綺麗な球形の灰色の石が、7つ転がっていた。

 

シャ(飛び散る前に全部取ったから、1年待てば万事OKですねぇ)

翔「なんか、言った?」

シャ「いえいえー♪」

 

 

 

 ………。

 ……。

 …。

 

太「幾千万の私と貴方で、あの運命に打ち勝とう♪ 何処かの誰かの未来の為に、マーチを歌おう♪ そうよ未来は何時だって、このマーチと共にある♪――……はぁ、疲れた…」

 既に一時間程歩いただろうか――未だに景色は変わらず、視界は背の高い木々の支配が続いている。

太「くそっ…いくら不死身でも、空腹と寒さ相手じゃ、生き殺しだぜ…」

 ――うむぅ? なんか微かに良いかほりが…――どういう匂いかというと、小麦粉を水で溶いた物を型で焼き、その中にあんこを入れ込んだ物体独特の匂いだ。

 

 

キ「うむ、ご馳走様だ」

太「にょがぁぁぁーっ!!!」

 あまりにも素敵で絶妙で悪戯なタイミングに、思わずずっこけて(顔を雪に滑らせつつ)しまう。

太「てっ、てててててててて手前ぇ!!? なしてこげなトコ居るだ!?」

キ「ああ、え…っと、とりあえず標準語喋ってはくれぬか?

 

太「しっかし…いきなりこれ見よがしにたい焼き食ってるかなぁ普通」

キ「いや、それは――私が森を空腹で彷徨ってると、この少女がたい焼きを分けてくれたのだ」

太「へ? この少女って――どの少女だ?」

キ「え…?」

 辺りを見回す太助の言葉の意味が判らず、キリュウは先程まで少女が“いた”場所へ振り向いた。

 ――確かに、すぐ横には少女が一緒に切り株に座っていた筈なのだが――

キ「さっきまでいたのだが――羽根の生えた娘(もっとも作り物だが)なんだが」

太「光翼人?

キ「随分見当違いな所を突くな

太「――ンな事より、お前、さっきの旅館の事――」

キ「っ! 見苦しい! …今更言い分けなんてめーなのよっ!!」

 ――…ああ、やっぱ勘違いしてるよぉ…。

太「お前なぁ――…第一、俺が翔子と、あーんな事やこーんな事すると思うか?」

キ「うきゅぅ…――だって主殿、今まで翔子殿を『山野辺〜』と苗字で呼んでたのに、何時の間にか名前で呼んでるし」

太「はっ!!? いやっさっきのは単なる作者の誤植だっ! 勘違いすんじゃぁねぇっ!!」(汗)

キ「……私が某東京大学の女子大生なら、地平線の彼方まで殴り飛ばしているところだ」

太「……(ヤバい…普通に怒ってる――…コイツの場合、マトモだけに対応が難しい…)」

 ――…ん、待て? 妙じゃないか?

太「なんでお前が俺の男女関係の事で怒るんだ? 直接的には関係無いだろ?」

キ「……そう」

 キン、とキリュウの引いた右拳が閃光を放ち、そして足元の大地に突き立てる――!

太(ちょっ、超必殺―ッ!!?)

キ「やはり死ねぇーっ!! ガイアクラッシャァァーッ!!

 

太「やっぱこーいう強引なオチかぁぁぁぁ…………」

 

 猛烈な大地の隆起現象に巻き込まれ、太助は突き出る岩石に巻き込まれ、遥か西側に飛んでいった。

 

 

 

ル「……所詮、七梨太助は七梨太助って事ね」

 再びルーアンはシャオと共にコンパクトを観戦し、先程のキリュウと太助のやり取りを終始見て溜め息をついた。

シャ「まぁあそこで良い雰囲気になったらなったで私達でぶち壊しに行きますがね

ル「………。(←敢えて触れない事にした)――ところでシャオ、この後だけど」

 原作3巻を取り出し、ルーアンはコンパクトに映る涙目のキリュウとそれを眺めるシャオの間に86〜87ページあたりを広げて見せた。

ル「――…こういうイベントがあるのよね」

 

<↓こういうイベント>

 崖に生えた木の枝に引っ掛かった太助。

太『そう、俺はこんな所でじっとしてるワケには!いかないん…』

“ばきっ”(←枝の折れる音)

太『――だっ!!?――…ぐっ』

 勿論落ちる――しかし、太助は崖の一片に何とか掴まるが、お約束通り右手で掴んだ崖の地面は崩れ、彼の身体は崖下に落下する。

太『シャオォォォォォォォォォッ!!』(←悲鳴です)

シャ『太助様ぁ!!』

 直後、軒轅に乗ったシャオが駆けつけ、太助を捕まえる――!

 

ル「やる?――もっとも、たー様は日本海側に飛んでっちゃったから、代役はキリュウになると思うけど」

シャ「私、眠いんですけど…ふぁぁ〜ぅ(←あくび)」

ル「…。…今更だけど、どう視点変えてもアンタが守護月天には見えないわ」

シャ「そうですかぁ? 私としてはいっぱいいっぱい守護月天なんですけどねー」

 そう言って、シャオは腰を上げ、押入れの襖を開け、布団を出し、敷き始めた。

ル「って言ってる間に寝る準備ぃーっ!?」

シャ「ええ、お酒も入った事ですし」

ル「……あの、じゃぁこの話の収集は?」

シャ「翔子さんにでもやって貰って下さーい。それじゃ、おやすみなさいっ(←ぐーたら精霊)」

 そう言って、シャオは布団に横になった――既に寝息立ててるし。

ル「――あれ? そういやあの嬢ちゃん(翔子の事)の姿が見えないわね…どうしたのかしら」

T「ああ、山野辺ならさっきキリュウの所行くって出てったぜ」

 と、ルーアンの横には緑色の(良い匂いはしないな)ジュースを飲む野村TAKASIの姿が。

ル「…アンタ」

T「よっ、ルーアン先生。ハイサイ!

ル「龍炎舞

 爽やかな挨拶の刹那、ルーアンの生み出した獄炎に巻き込まれ、黒焦げになり、沈黙した――まぁ所詮、彼はこんなもんである。

 

 監視されてる事も知らず、旅館でそんな騒ぎがあったのも知らず、キリュウは何時の間にか森を抜けていた。流石、話が終盤になって来ただけの事はある。

 市街地を冷えた身体で早足で歩き、しばらくすると噴水のある公園にたどり着いた。

キ(なんで、こうなったのだろう…)

 噴水の淵に腰を下ろした。冷えたコンクリートが身体に芯まで染みる――もっとも、既に殺人的な寒さのせいで、気温の感覚などとうの昔に無くなっていたが。

 何気なく、彼女はさっきの事を振り返ってみた。

キ(最低だ、主殿――…中学生だというのに――大体翔子殿も、翔子殿だ。あんまり興味無さ気なフリして、たった10分であのような事を――……………ん? 10分?)

 ――えーっと、翔子殿が湯当たりして、主殿に介抱を頼み、そして私が部屋で目撃する――その間が、約10分弱…。

キ「めっちゃ早ぁっ!!?」

 先程の光景を再び思い浮かべてみる――…そういや、布団とかティッシュとか、相当(てか異常な程)血が着いてたような――?

キ「…あれぇ?――じゃぁこれって私の早とちり&から回り&ひとり暴走???」

 ――となると、

 

 

 

 

 

 

 

 最悪ですな。

 

 

 

 

 

 

キ「うぁぁぁぁっ!! 余計に戻りづらくなったぁぁぁっ!!」

翔「お前なぁ――本っ当に自動から回り精霊だな」

キ「っ翔子殿!? というか人を糸巻きみたいに言わないでくれっ」

 階段の上から、息を切らせた翔子が涙目で頭を抱えるキリュウを見下ろしていた。

 

翔「――…とまぁ、カクカクシカジカっちゅーワケで、アタシと七梨の阿呆は潔白無実って事だ」

 いや全く、こういう時『カクカクシカジカ』というのは楽である。キリュウはこの手抜きな説明に納得し(!)、余計に落胆した。

キ「すまない…私は、翔子殿に対し、不埒な売女だと一瞬だが思ってしまい…」

翔(売女?)

キ「主殿にも、悪い事をした――今頃極寒の日本海を泳いでなければいいが…」

翔「何やったキリュウ」(汗)

 するとキリュウは立ち上がり、目をうるっと輝かせ、ポーズを取る。

 

キ「私は万難地天。いつもここに大地があるように、私はアナタを――いつだって見護っています」(←なるべく、それっぽく)

 ………。

翔「はい?」

キ「わ、今凄く格好良い事言ったよ、私」

翔「つーか、話があらぬ方向にぶっ飛んでるんだけど。何よ、今の台詞」

キ「いや、どうせならラストはシャオ殿(むろん原作の)に対抗してみよーかと」

翔「たわけ

 

 

 何がどうであれ、全体的に見れば――終わり良ければ全て良し、途中、どんな悲しい事があっても、最後には笑っていられる――というのが、一番大切、なんだとおもう。

キ「それが最高っ、いえーい☆」

太&出&T「待てコラ

 帰りの車の中で、窓の外を見て黄昏ているキリュウに、昨晩ひでぇ目に遭った男三人が締めの言葉を遮った。

太「大体、手前ぇの勘違いが元凶なんじゃねーか。そのせいで、俺は変な魔物ハンター娘に惨殺(未遂)され、最後は日本海の沖合い数十キロ先まで吹っ飛ばされて」

翔&ル(やっぱ海まで飛んだんだ)

太「丁度あの辺で作業してた北●鮮のイカ釣り漁船に助けて貰わなかったら、今頃全部サメの餌だったんだぞ!!」

出「――何気に密漁船じゃないですか?」

太「知らん。あの時既に半分喰われてたし、俺も必死だったんだ――…っと、話が逸れたな」

再び話を元に戻すと、今度は出雲が口を開いた。全身包帯まみれで、しかも巻き方がかなり滅茶苦茶で、一見すると躯(むくろ)に見える――両腕を拘束すればそうなるが、それをやるとハンドルが握れ無くなるが。

出「まぁ、失敗は誰しもあるって事ですよ。そういうのも、その人の味なのかもしれませんがね」

太「そうかぁ? 俺はそういうのは無くして欲しいがな」

出「欠点も長所――太助君、例えば『某HMX−11メイドロボット』の魅力は何ですか?」

太「“天然でドジな所”だっ!!――……はっ」

 そして、気付く。

出「でしょう? …そういう事ですよ」

キ「出雲殿…」

太「わかったぜ、出雲――(キリュウに振り返り)キリュウ、言い過ぎた」

キ「主殿ぉ…(感動)」

 太助は無言で、何故か足元に転がっていたホウキと、AV−98イングラムの耳アンテナをキリュウに手渡し、

キ「え?」

太「さぁ!! コレ(レイバー耳)付けてコレ(ホウキ)持って、『はわわわわっ!』とやってにゃぐっ!?

 直後、4人からの渾身の右ストレートアッパーが、それぞれ太助を捕らえ、そして打ち上げ、天井を突き破って彼は吹っ飛び、高速道路の路面に叩きつけられた。後ろの窓を覗くと、みるみる内に太助の亡骸が小さくなって――…あ、後続車に轢かれてる。

ル「結局ああいう変態か」

翔「微かに恋愛っぽくなったんだけどな」

キ「……。」

シャ「あははーっ」(←とりあえず、殴るシーンなので何となく便乗した人)

 

 

 ちぅ感じで、一泊二日の小旅行は終了した。

 翼のたい焼き少女とかは気になったけど、多分彼女の事は心配無いと思う(多分)。

 

 そして太助は、あの後6回轢かれつつも、なんとか復活して、時速120キロで高速道路を全力疾走して帰宅したのだとさ。

 

 

〜つづく〜

(『私、笑ってられましたか?』 …唇が切れて笑えないよぅ(痛))

 


 

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