――のっけから俺が目の当たりにしたのは、生まれたままの姿のキリュウだった(ぽっ)。
キ「って脱いでない!! 普通の格好だ!! 誤解されるようなモノローグを書かないでくれぇっ!!」
太「悪ィ。ちょっとしたお茶目だ。――…で? 休日だしたまには昼までゆっくりぐっすり寝て、飯もブランチにしよーかなーって目論んでいた俺の部屋にいきなり泣きながら入ってきて――どういう了見だ?」
説明風な問いに、キリュウはえぐえぐと涙をすする。
キ「あのね…シャオ姉にね、短天扇取られたのだ…返してくれって言ったのに、「返して欲しければ自力で取ってみな〜へっへ〜んだ」と言われて…」
太「情けなさ過ぎだぞキリュウ」
で、泣き寝入りでドラえもんに泣き付く…――のび太じゃあるまいし。――ん? って事はシャオがジャイアンか。…適任やな。
太「名付けてシャオアン!!」
キ「あ、主殿!?」
俺の前振りもない絶叫に涙目でびくつくキリュウ。………こういう所で読者の心を掴むのか…。
太「いや、俺の頭の中での話だ…シャオアンは忘れてくれ」
字で書くと語呂がいい。口に出すとちょっと変な名前だと思いつつ、太助は慌てて話を変えた。
太「…で? 俺にどーしろと」
キ「何か便利な道具を」
太「そのネタはシャオの特権」
俺のポケットからはせいぜい小銭と小物用ナイフくらいしか出てこない。
太「うーん…多分無駄だと思うけど、一応シャオに聞いてみるさ…多分即刻惨殺される事請け合いだろうけどな」
いくら不死身でも自分の死に抵抗の無いというのは、生命体としてどうなのだろう。
ル「たまには真面目にシャオ退治!」
つーワケで原作通り風呂を沸かしてみました。
シャ「私に、入れってか」
ル「そうよ。名付けて『ケント☆ザ☆メガネユタ州』」
シャ「…どういう魂胆があってです?」
ル「うっ…!」
ここでいきなり追求しますか…――まぁ普通午前中に前振り無しに風呂沸かす、って行為自体奇妙奇天烈摩訶不思議、奇想天外四捨五入、である(謎)。
ル(そうよね…出前迅速落書無用よね…疑わない方が変態なのよね…)
変態ってのも原作のシャオさんに失礼かと思います。
シャ「っ! まさか――…まさか入浴シーンの盗撮!? それとも入浴後のダシ汁を“そういう系”の者共に売るとか!?」
ル「前者はありえるけど後者の確率は無いわよ」
シャ「――ふ…ですが、朝の水浴びも心地よいもの…――良いでしょう」
ふっ、と妖艶に微笑し、シャオは立ち上がり、風呂場に向かった。途中、立ち止まりふとルーアンの方を見て、
ル「ん?」
シャ「…売上げは半々ですよ」
ル「だから何にもないって」
しかもやる気満々かよ。
シャオのあの強さの秘訣――その1つに、支天輪が含まれる。
ル(そう…先人達も最強のキャラを倒す為に、粉骨砕身の魂で相手の弱点を探り…そしてそれぞれ玉砕していったわ…)
玉砕したら駄目じゃん。
ルーアンは脱衣場に忍び入り、脱衣カゴをそっと覗く。――…あった、シャオの服。触ると暖かい。――これブルセラショップ(今でもあるのか?)に売り込めば、きっと高値がつくだろう。
ル(…っと、そういうのは今度にして)
今度やる気ですかルーアンさん。
音を立てないように服を探ると、下着の裏に隠すように、支天輪が置いてあった…ルーアンは猛スピードで自身の懐にしまい込み、そのまま音も無く脱衣場を後にした。
…完全犯罪成立。
たったったったった…ばんっ!!!
勢いよくドアが開かれ、ルーアンが満面の笑顔で入ってきた。
ル「やったわたー様! 遂にシャオの脅威の1つ、支天輪を封じる事に成功したわ!!」
太「っ!! そうか!良くやった!! ――…にしても、どうやってだ?」
簡単に、ルーアンは風呂の作戦を説明すると、太助は感心した。「そうだよな…シャオって風呂くらいしか支天輪離さないもんなぁ」
太「――さすが、目の付け所が違うね。ルーアンさんに3000点」
キ「…しかしルーアン殿、その支天輪はどうしたんだ? 持っているようには見えんが…」
ル「あ、うん。支天輪は二度と戻ってこないように『ないしょごみすてホール』に」
太「ちょっと待てそれって秘密道具じゃねぇか?」
ル「そうよー」
矛盾してる事を平気で肯定するルーアン。…どうやって出したとか、聞くのは野暮なんだろうか…。
キ「…ところでルーアン姉、一緒に私の短天扇を見なかったか?」
ル「? そんなの無かったけど…」
その直後、ドアが膨張したかと膨れ上がって消滅し――その奥より、般若のような表情のシャオが突入してきた。
シャ「悪っ即っ斬っっ!!!」
見境無しに目からビームやら触覚から破壊光線やら両腕の十指からレーザー出したり――
太「ちっちょっとは落ち着けぇぇっ!! いきなりジオングみたいなフルブラストするんじゃねぇぇっ!!」
バスタオル1枚とか、そういう次元じゃねぇ。太助はともかくルーアンやキリュウは不死身じゃ無ぇんだぞ(次回には生き返るけど)
シャ「太助様大変な変態!!」
太「理由は判ってるが変態は余計だっ!!」
ル(あながち間違っちゃないけど)
シャ「とにかく…私、アレが無いと…」
太「……」
本気で泣いてるらしいシャオを見て、太助の良心も僅かに揺らぐ。…鬼の霍乱と言えど、やはり自身の媒体(?)を紛失するってのは、なぁ…。
太「…なぁルーアン…やっぱり支天輪捨てたってのはやり過ぎだったんじゃ?」(小声)
ル「…アンタ、女の涙にすっげぇ弱いわね」
しかし、太助の同情は徒労に終わった。
シャ「――でも、ま、良いんですけどねっ」
太「はっ!?」
にぱーっ、と一瞬で満面の笑顔に転身したシャオに、太助は死語であるが正に『ガビーン』の文字が頭に落下した。
キ「ほら…やはりな」
太「っ…だってお前――…支天輪無くなってもいいってのか!?」
シャ「そりゃ困りますよ。秘密道具使えないじゃないですか」
星神はどーでもいいんか?
太「だったら――…」
シャオはスキップで太助の部屋の押入れをガバっと開ける。そして、しまってある布団の下に手を突っ込む。う〜んと中を探る事10秒、シャオは「あっ☆」と何かを掴んで、手を抜いた。
シャ「じゃ〜んじゃじゃ〜ん♪ すぅ〜ぺぇ〜あ〜支〜天〜輪〜♪」
……ヲィ。
太「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁっ!!?」
マカロニじゃなくても叫びたくなる。
シャ「だからスペア支天輪」
太「そうじゃ無くてっ!そういうオチかっ!!」
ル「結局私の努力は無駄に終わったって事ね…」
シャ「そんな事させませんよっ♪」
…その笑顔が恐いです。
シャ「この世を去れぇぇぇっ!!!」
両手で三日月の構えを取り、気をチャージする。
ル「こ――これは守護月天48の最終奥義の1つ…」
太「…えれぇ多いな」
シャ「守護月天!ムーン・アタック!!」
必殺の技名を叫ぶと同時、三日月の閃光がルーアンを取り囲み――………
太「……」
ボロ雑巾になったルーアンを横目に、再びシャオに尋ねた。
太「なぁシャオ、さっきキリュウから短天扇取り上げたんだって?」
シャ「ええ、ちょっと読者さんに人気あるから」
太「逆恨みかよ」
まぁハルカさんにいらない言われたからなぁ…。
キ「…とにかく、謝るから返してよぅ」
シャ「そうは言われましてもねぇ、短天扇は支天輪の中ですし…無理だおー」
太&キ「「えぇぇっ!?」」
――…いや、ちょっと待て。
太「スペア支天輪があるんだからそっから取り出しゃいいだろが」
シャ「ですが、四次元空間は不規則ですからねぇ…――これからでは取り出す事はめっちゃ難儀なんよ」
…よくわかんないが、困難らしい。
太「どうする? キリュウ…」
キ「……」
…はぅっ、泣いてるよ。
太「…やっぱ、無いとマズいか?」
キ「ああ…マズいが…――でも、良い…流石に亜空間やら別世界となると、もう範疇外だし…」
太「……」
とは言え、キリュウが凄い無理してるのは明らか。太助は「よっし」と自身の両頬を叩いた。
太「心配すんな、俺が取ってきてやらぁ」
キ「っ…無茶だ! いくら不死身の主殿と言えど――」
太「だーいじょうぶ! まぁーかせて!」
何故かは知らないが物凄い自身で親指を立ててみせる。
太「何てったって俺は主人公だからな!」
…確かに、説得力は十二分にある。
太「んじゃ、シャオ。『ないしょごみすてホール』持ってるだろ?」
シャ「……ホントに良いんですか?」
…? シャオは唐突にシリアスな表情で問う。
太「どういう意味だ? お前ならこういう時は『いってらっしゃ〜い』とか笑顔で見送ってくれると思ったが」
シャ「…今回ばかしはちょっとリスクが大きいです――例えるなら、ボールでビグザムに挑むようなもの…」
太「そこまで言っちゃいますか」
――とは言え、ここで止めるとあれば男がすたる。
太「止めないでくれ――わしゃぁ男じゃけぇのぅ!!」
シャ「フ…」
一笑し、シャオは支天輪から『ごみすてホール』とは別に3つの秘密道具を太助に渡した。
シャ「貸してあげます」
太「…シャオ」
『ホンネ吸い出しポンプ』『ユメグラス』『空気クレヨン』
太「貸して貰って悪いが…
よりにもよって役に立ちそうに無いものを」シャ「
便利な物渡したらつまらないじゃないですか(私が)」――…俺としては『とりよせバッグ』あたりが楽なんだがな。
…まぁ期待してないけど。
太「んじゃ、キリュウ――取替えして来っから、安心して待ってな」
キ「……うん。…あ、あとこれを持っていてくれ」
と、キリュウは20センチくらいの黒い棒を手渡した。
太「…ん、わかった――それじゃ、いってきます」
キ「…いってらっしゃい」
――愛する妻に別れを告げて、男・太助は遥かなる旅路へと――…
シャ「さっさと行って下さい」(足蹴)
“げしっ”
太「はぐっ――…にょぉぉぉわぁぁぁぁ――――………」
シャオに背中を蹴っ飛ばされ、太助は『ごみすてホール』の中に転げ落ちた。
……………。
…………。
………。
……。
…。
――…どれくらい経ったのだろう。
太(亜空間を流れ流され30分…)
景色も何も無い『虚無』の空間も、さすがに飽きてきた。…ちょっと早過ぎとか言わないように。
太「…そういや、さっきキリュウに貰った棒って…」
ポケットから取り出す。注意深くそれ見ると、一方の端が矢印の形になっていた。――まさか、これは…!?
太「あの伝説のアイテム『こっち矢』!?」
某ヒーローの湯飲みに挿さないと反応しないかと思ったが、その棒――こっち矢は強く握り締めると、早速とある方角を指してくれた。
太助は平泳ぎの要領で空間を泳いで、その矢印の指すあたりに向け、気を練った。
太「…今の俺なら出来る筈だ…――
グレートダァァッシュ!!」グレートモードとなった太助は右腕を突き出し、プラーナを剣の形にする。
太「よし…出来た――
次元刀!!」斬ッ!と矢印の指す空間を切り裂く――
――直後、眩しい輝きが視界を全て覆って――
――気が付くと、俺は防波堤の上で仰向けになっていた。
夏の日差しが肌を焼く。…久々に忘れていた感覚…。
太「……?」
身体を起こし、辺りの状況を確認。…ちょっと寂れた漁村、といったネーミングがぴったしのような、そんな感じだ。
とりあえず、あまりの暑さに上着を脱ぐ。――どう考えても夏真っ盛り、という状況で長袖の上着は死んでしまふ。
太「…ここは――異世界、だよな?」
どうも異世界、という感がしない。錆び付いた看板に目を遣るが、文字がナメック語って事も無く日本語。もしや未知の生命体が住んでるのかと思ったが、遠くで頑張っている漁業組合のおっちゃん達は、外観はどう見ても純日本人。
太「はぁぅー…」
ともあれ、短天扇(&支天輪)を探すのが先決だ。俺は再び『こっち矢』を掲げると、『こっち矢』は俺を――いや、俺の真後ろを指した。
太「後ろ――…?」
振り返ると、そこには――
少女「……わ」
太「……おぉ?」
――そこには、見た事の無い学校の制服を来た、俺と同世代、もしくは上っぽい少女がこちらを見下ろしていた。
俺を覗き込んでいたらしいが、突然俺が振り返った為に驚いたようだ。
って、こ…この少女は!?
ハルカの勝手コメント
原作と同様支天輪(と短天扇)を取り戻すため異世界に旅立った太助君。一体彼の身に何が待ち受けているのでしょうか…?
次回作も続けて頂いておりますので、すぐに御覧になれますけれど(^^;
何故2作同時掲載になったかという理由は次回のコメント部分に書かせていただきました。言い訳ですが(汗
さて、キリュウさんの萌えキャラ化が進み、ハルカのようなダメ人間はますます嬉しい限りです。
(そのせいで短天扇が消失してしまったわけですが)
ともあれ、次回も続けてお楽しみ下さいっ♪
PS 『シャオいらない』はイイスギでした。シャオさん許して!(笑