まもって守護月天
〜22Century〜
〜28話(今回も、また壊月天とは違う気がしますけど、いーんです。根本突き詰めればこのネタもパロですから)〜
――いよいよ、文化祭当日です――
シャオ「さぁはじまるザマスよ」
太助「いくでガンス」
あんたらネタ古過ぎ。
“ぼ〜ぱっぱぼ〜ぱっぱぱ〜ぱっぱっぱ〜(日本昔話のBGM)”
ナレーション『むかし、むかぁしの事じゃった――あのな、えと、おかーちゃんがな、確か二十歳くらいの』
TA KA SI
三蔵「のっけから中川家のネタパクってんじゃねぇよナレーター」
さて、気を取りなおし――砂漠の中、一人の法師…玄奘三蔵(七梨太助)が、旅をしていた。馬(宮内神社寄贈)に乗って。
…観客の数人の「あれ、名馬・赤兎馬じゃねぇのか?」というざわめきを無視し、三蔵は馬を歩かせる。
三蔵「天竺まで有り難いお経を取りに出たは良いが…――これは大変な旅になりそうだなぁ」
ため息を付いて地平線の先を眺めると、遥か向こうに小高い岩山が見えた――ご丁寧に岩肌に『五行山』と書かれた、明らかに不自然な山が。
三蔵「おや、あれに見えるは五行山じゃねぇ――じゃないか」
そう独り言を言いながら、三蔵は五行山のふもとにやって来た。
三蔵「ここには、力強き岩猿が封じられてると伝え聞くが…――」
……と言ってる間に、すぐ間近に“ソレ”がいた――両手両足を鎖で繋がれちょこんと座る少女。
悟空「……。」
…なんかもう、『力強き』のカケラも無ぇ。むしろ鎖に縛られてるせいで、逆にS心をそそられる。
三蔵「――でででででででっ!!!!?――いかんいかん平常心平常心…」
何故かこの三蔵、自身に緊箍呪を付けている。どうしてかと言うと……今のような事があるからだ。
悟空「だ…大丈夫か?ある…坊主殿」
岩猿こと、孫悟空(万難地天キリュウ)は心配そうにこちらを眺めるが、三蔵は「平常心平常心……っし」と心を鎮めると緊箍呪は緩んだ。
三蔵「まぁ落ちつけ――ハナシが進まんから、今すぐ鎖を解いてやるからな」
悟空「…落ちつくのはお主の方だと思うがな――…早くして欲しい、少し痛いのだ」
三蔵「んんん……≪アバカム≫!」
呪文を唱えると、鎖は軽い金属音を立てて、外れ落ちた。何故このような西洋じみた技を彼が使えるのかは、気にしちゃダメ。
孫悟空「すまない…――私の名は悟空。孫悟空だ」
すると、天空にホログラム――げふげふ…お釈迦様の幻影が現れた。
釈迦『こら、待ちなさい孫悟空』
悟空「っ!!?まりあ殿!?」
釈迦如来(三田まりあ)の姿に見覚えがあるらしく、目を丸くして口をパクパクさせ、三蔵を振りかえった。
三蔵「やー、人員不足の為に小説原作より急遽出張してもらったっつーワケだ」
悟空「だ、台本には『???』となっていたが…まさか彼女とは…」
未来の人なのに、ってツッコミは、連れてきたシャオの前では皆無である。(まりあ殿については、原作小説8巻第4話参照)
釈迦『――そういうワケよ、キリュウ…じゃ無かったわね、悟空。アナタの引っ込み思案振りには、ほとほと困ってたんだから――天竺まで、ソコの三蔵法師さんのお供をして、社交的になるよう修行しなさい』
悟空「ち、ちょっと釈迦如来殿、台本とセリフ違うんじゃ…」
釈迦『いいわね?』
悟空「…は、はひぃ…(´Д`|||」
ナレーション『――ややあって、その後、猪八戒(山野辺翔子)と沙悟浄(宮内出雲)を仲間にした三蔵一行は、蓮華洞の近くまでやって来ました』
悟浄「しかし、私がカッパですか…“皿”被らなかっただけマシというものですが…」
八戒「今更言うなよ…私なんかブタだぞ、ブタ」
悟空「ドラマ風に言うなら、八戒殿が西田敏行、悟浄殿が岸部シローだな」
三蔵「うっせぇよお前ぇらそしてお前幾つだ、悟空」
ちなみに三蔵法師が夏目雅子、孫悟空がマチャアキである。
三蔵「しかし…この辺りは人を喰う魔王がいると聞く――…一体、どのような者か…――っ!?」
――刹那、観客席の客2人がばっと立ち上がり、助走もつけずに跳躍――舞台に降り立った。
謎の黒いマントを身にまとった、怪しげな2人…この時点で、観客のほとんどが彼らがどういう役か、察した。
悟空「っ!? な、何奴!?」
驚く悟空達を一瞥し、2人はばっとまとったマントを投げ捨てた。
銀角「俺の名は銀角大王! 銀角って呼んでくれ!ヨロシク!」
彼――銀角(封霊神・デン)姿に一番驚いたのは、八戒の方でした。何やら過去にいろいろあったようです。
八戒「……。」
銀角「よぉ、翔子じゃねぇか!――久し振りだな。元気そうじゃ……って怒ってる?」
八戒「!!――ったりめーだ!あん時(原作小説7巻参照っ!)永遠の別れっぽくやっといて、よりによってこんな場面で再会かぃっ!!!」
銀角「っわわわっ!? 物騒なモン振りまわすんじゃねぇっ!!」
手に持った武器を猛スピードで振りまわす八戒の攻撃を、同じく猛スピードで回避する銀角――…その一方で、銀角と違ってかなりおどおどした態度の彼女…金角(封霊神・ライ)の方はというと――
金角「あ、あの…久し振り、だね――七梨、君」
三蔵「あ、ああ…――っと、神ざ――もとい、金角さん、一応俺、今は三蔵だから、さ。ハハ…」
悟空「って三蔵様!! なに敵と良いムードやってるのだ!?」
悟浄「嫉妬ですか、悟空さん」
悟空「っっっ!(赤面) っち、違うっ!!」
悟浄「へぐふっ!?」
伸ばした如意棒で悟浄を突っ込んでおき、悟空は三蔵と金角の間に割ってはいる。
悟空「コホン…三蔵様?」
三蔵「う、あ…すまねぇ、悟空…――そういうワケだから金角さん…」
金角「…うん、そうだね。――ところで…七梨君?」
三蔵「ん?何――っ!?」
反射的に本名を呼ばれ反応してしった三蔵は、何時の間にか取り出していた金角の持つ、ひょうたん型宝貝『紅葫蘆』の中に吸い込まれてしまったのだ。
悟空「さ、三蔵様ぁー!?」
金角「ごめんね三蔵君…これも役だから仕方ないの」
とか言いつつ、ちゃっかり紅葫蘆に栓をする金角。一方、八戒と銀角との闘いは、重い戦斧を振り回し続け、ヘトヘトになったところを、銀角に首筋に手刀を軽く入れられ、八戒は気絶した。
銀角「ンなヒョウタン使わなくても、霊玉使えば一発なんだけどな、実際」
悟空「三蔵様は悪霊かぃ…」
金角「…でも三蔵君――気のせいかもしんないけど…一瞬、悪い霊に取り憑かれてる感じがしたんだけどなぁ」
悟空「と、ともかくそなたらを倒さねば劇は進まないのだからな…――大人しくやられて貰う」
銀角「ハッ! 下っ端なりとも神である俺達に、精霊風情が勝てると思うかい!?」
悟空「…え? 負けてくれるんじゃないのか!?」
金角「えっとね、台本では『リアルファイトで4649』って書いてあるの。…ほら」
台本のそこのページを広げて見せると、金角は「そういうワケだから…私達も真面目にやるわ」と七星剣を構えた。
金角「あ、ちなみにこの七星剣も本物の天界の宝器だから…覚悟しておいてね」
悟空「(TДT; そ…そんなぁ」
先程のおどおど感はどこへやら、金角は表情を殺す。七星剣で新円の軌道を描き、構える。
金角「――『天を描きし、義成る連星――輔星、天権、天枢、開陽、玉衡、王旋、搖光、王幾――我が障壁になる者を…祓え』!!」
しぱーん!
刀身の煌き、ツルギの一閃。
水を打ったように客席一帯が静まる。
なにしろ、悟空は金角の必殺剣技に呆気無く砕き裂かれ、続いて銀閣の翳した霊玉に封じられたのだから。
七星刀を鞘に納め、息をついた。
金角「ふぅ…おし、まいっと」
銀角「姉の方は阿呆みたいに強いくせに、妹の方はえれぇヘナチョコだったな」
金角「あ…でも、これで――三蔵さんと悟空さんは封印しちゃったし、八戒さんも銀角が倒しちゃったし、悟浄さんは…仲間割れで自滅したから――」
銀角「全滅だな――…おい、金角…」
金角「え?」
銀角に驚いた表情に、金角は指差された腰に目を落とす。腰に吊るされた紅葫蘆がガタガタと振るえている。
金角「えぇ…っ!?ち、ちょっと、コレって――」
慌てて手を取った途端、紅葫蘆がひとりでに暴れだし、思わず金角は手を離してしまい、紅葫蘆は地面に転がる。――そして、砕けた。
…予想通り、砕かれた紅葫蘆の破片からは、
三蔵「――ふ…ぅっ!」
銀角「っ!? バカな――紅葫蘆の中で酒とならずにいるなど…ましてや内側から破るとは! てか何だソレ!?」
三蔵「ソレとは何だ?」
銀角「その背中の翼!! 神か天人か、翼人じゃあるまいしっ!!」
三蔵「フっ…翼人か…」
自嘲するように、三蔵は翼を広げた――このモードの場合、玄奘三蔵(神奈備命)である。
三蔵「その通り、わらわは神奈備命――又の名を、玄奘三蔵…!」
金角「チッ…まさか三蔵くんが滅亡したハズの翼人の末裔だなんて…」
厳密には全然違うが。――三蔵は袈裟のように肩に掛けられた魔天経文を手に取り、唱え出した。
金角「っ!?そ、それは――」
三蔵「エコエコアザラクエコエコザメラクエコエコケルノノスエコエコアラディーア〜〜」
銀角「違っ!! それ全然違っ!!――っ痛たたたたっ!?」
と言いつつも、物凄い頭痛が2人を襲う――黒魔術でも、なかなか効いてるらしい。
金角「…はぅ〜も、もうダメっ」
銀角「クソッ、神をナメんじゃ…っ!?」
途端、詠唱が止まる――何事かと視線を向ければ、三蔵自身が昏倒していた。
銀角「ってヲィ」
三蔵「くっ…耳栓しておくのを忘れていた――だが、この程度でわらわは倒せん!」
銀角「俺らまだ何もしてねぇだろうが!」
三蔵「問答無用…――鳳翼天昇!!!」
拳を振り上げた三蔵の後方で、煙の尾を引いて落下してゆく二つの影――ぐしゃりと地面に叩きつけられた金角と銀角は、どちらも完璧にグロッキーとなっていた。
………。
……。
…。
ナレーション『……さて、金角、銀角を(ほとんど三蔵一人で)打破した一行は、火焔山近くまでやって来ました』
――ちなみに、悟空は気絶した銀角の霊玉から復活させ無事である。流石にこんなところで死んでしまったら元も子も無い。
ついでに、さっきの事以来、三蔵は替役したままである。背中には羽が生えたままで、あまり馬の意味が無い。
三蔵「さて、そろそろ終盤であるな…」
八戒「ああ…――つーか、三蔵がメンツの中で一番強いってのはどうなんかな」
悟空「だが、この台本通りだと――…紅孩児と玉面公主、羅刹女、そして牛魔王との対決があるのだぞ…全て、リアルファイトで、との事だ」
悟浄「…まるで『パラレル西遊記』ですね――はっ!?」
照明がゆっくりと緒とされ、交代にスポットライトが観客席の一部を照らす――間違い無い、奴等の登場だ。
???『――フッフッフッフッフ…』
金角銀角の時と同じく、黒マントを羽織った2人の人影は、長身の方が小柄な方を抱き上げるカタチで飛翔――舞台に降り立った。
悟浄「今度は…(台本を確認して)――ふぅ、紅孩児と玉面公主ですか…誰かは知りませんが…怪我をしても知りませんよ」
羅刹女と牛魔王以外ならなんとかなるだろうと、沙悟浄は強気である。
そんな彼の威勢に小柄な方は怪しげに微笑し、黒マントを脱ぎ捨てた。
玉面公主「なかなかやるのう、三蔵一行…――であるが、その快旅も、ここまでぞ!」
八戒「お、お前はっ!?」
小柄な方――玉面公主(アヤメ=バイオレット=ランサー)はこういうのは大好きらしく、凄くノっている。
悟浄「…と言う事は、紅孩児って…」
まさか…と目を向けると、紅孩児も続いてマントを脱ぎ捨てた――予想通り、彼だった。
紅孩児「御久し振りで御座るな、太助殿、出雲殿、翔子殿」
礼儀正しく頭を下げる紅孩児(ダン=ブルーバード)を、玉面公主が眉をひそめて小突く。
玉面公主「戯け者。今は三蔵殿、悟浄殿、八戒殿であろうが」
紅孩児「…あ、申し訳ありません、アヤ…玉面公主様」
…本来、紅孩児は牛魔王と羅刹女の息子。一方玉面公主は牛魔王の愛人――故に、異母関係の仲である2人は険悪であり、今のこの2人の『主従関係それ以上』の図は、物語的にかなりおかしいのだ。
玉面公主「喋りなどは、普段道理の…これで良かったのか?」
紅孩児「ええ、似合っています。どこからどう見ても玉面公主様ですよ」
(ちなみにこの二人については原作小説2巻参照!)
紅孩児「…ともあれ――三蔵一行――…御覚悟を」
火尖槍を構え、紅孩児は功夫に似た構えを取る。
悟浄「截拳道――ですか…ならば…!!」
悟浄も同じく、紅孩児に似た構えを取り、錫杖を軽く地で鳴らす。
紅孩児「詠春拳……出来ますな、悟浄殿」
悟浄「フッ…伊達に宮内神社の神主はしていません!」(←関係無ぇ)
先に仕掛けたのは紅孩児の方だった。直後、両者の目にもとまらぬ剣技、拳技、脚技の嵐。
…なんか二人だけ違う世界になってる。
つーか、当時(原作では)いなかった悟空は、紅孩児と玉面公主の事をまったく知らないので、完全に放置である。
玉面公主「ところで三蔵殿――…以前とは、雰囲気が変わったのう。それに、背中のその、優雅な翼はどうなされた?」
三蔵「うむ、現在、本来の(七梨太助の)魂は気絶しておってな――翼人のわらわがこのように、身体を借りているのだ」
玉面公主「であるか…――道理で、神々しい雰囲気が漂うておると思うた…」
八戒「(…アヤメと太助――いや、神奈、なんとなくキャラ被ってる気がするなぁ…)――…しっかし」
紅孩児「破ァァーッ! 猛虎高飛車ッ!」
悟浄「闘ォリャァーッ! 獅子咆哮弾ッ!」
両者の気孔弾がぶつかり、相殺の衝撃破が観客席まで届き、最前列の数人が吹き飛ばされ、担架で運ばれてゆく。
悟浄「散れっ!!――爆砕点穴ゥッ!!」
紅孩児「迂闊!!――火中天津甘栗拳ッ!!」
悟浄の拳が舞台の地面を叩き壊し、高速で襲い掛かる瓦礫破片を紅孩児の超速の拳が全て打ち砕く。
八戒「……なんか、人間的なレベルの互角な闘いだけに、いつも以上に白熱してるなァ」
だが、戦闘開始から5分と28秒後――勝負はついた。
紅孩児の描く螺旋のステップに、悟浄は誘い込まれている事に気付かないまま――中心に到達――それを彼が察した時には、既に遅し。
直後、紅孩児の冷たき闘志の拳が天空に向け繰り出された。
悟浄「…っ!?しまっ――」
紅孩児「既に遅し――注意千万怪我一生!…飛竜――昇!天!破ァーッ!」
突き上げる拳を基に、猛烈な竜巻が吹き荒れ、悟浄はそのまま場外へすっ飛んで行った。
…もう截拳道や詠春拳とは全然関係無ぇ次元である。
ナレーション『そんなこんなで羅刹女に三蔵をさらわれた悟空一行は――』
悟空「え!?――あっ、何時の間にかホントにいない!?」
一瞬の舞台のフェードアウトで消えた太助。天功イリュージョンである。でもって更に紅孩児と玉面公主までいない。
ナレーション『そういうワケで、残された悟空、八戒は三蔵を追って火焔山へ』
ちなみに飛ばされた悟浄はあのまま保健室行きである。
本来の物語では、火焔山は煉獄の炎に包まれていて近づけず、羅刹女の持つ『芭蕉扇』を手に入れて山の火を消す、というイベントがあるのだが、そこらへんはカットである。だって羅刹女この山にいるんだし。
…というワケで、いきなしクライマックス。
悟空「牛魔王! 三蔵様を返してもらうぞ!」
意味も無く高い岩塔の上の、禍禍しい、いかにも魔王的な玉座に、彼女はいた。牛魔王(守護月天シャオリン)が。
特殊メイクも何も施して無いのだが、物凄い威圧感、圧迫感――背後に、うっすらと邪悪なオーラまで見える。
牛魔王「…よく、ここまで来ましたね…孫悟空?」
悟空「(((;゜д゜)))ブルブル」
八戒「気迫で思いっきり気圧されてんじゃ無ぇ主人公」
悟空「だ、だって…書体だって思いっきし変わってるし…」
玉座をよく見ると、ボコスカチンの雑巾にのされ、呪符によって封じられている三蔵がいた――アレを貼られているという事は、まだ翼人モードらしい。
その横では羅刹女(慶幸日天ルーアン)が欲求不満にぶーたれてる。…芭蕉扇のネタが無いので、ヘタすると完璧に今回はセリフ無しなのだ。
牛魔王「それでは、クライマックスですし――…一勝負しますか? 悟空さん」
羅刹女「ちょっと待った!」
ちなみに彼女のセリフは、台本には一切無い。つまりこれは完全に彼女のアドリブである。つーか、ここまで半分近くアドリブだが。
羅刹女「牛魔王様。私も加勢しますわ――…だって出番無いし」
八戒「!?」
牛魔王「そうですねー……2対2…丁度良いでしょう」
八戒「待っ待ったっ!! 卑怯だぞお前ら!! ただですら勝ち目が無いってのに!よりにもよって最強クラスがタッグ組みやがって!」
戦力差を数値化すれば、『100,000対0.01』くらいであろう。どっちがどっちかは、言うまでも無い。
羅刹女「だけどねぇ…――こうでもしないと私今回ノーコメントなのよ?」
八戒「知らねぇよ」
どうこう言ったところで、このフォーメーションを崩す気は無いらしく、悟空&八戒ペアは俄然不利が肥大化する。
悟空「どうする、八戒殿…このままじゃ瞬殺確定だぞ」(小声)
八戒「悔しいけど、あの最強ペアじゃなぁ…三蔵もあのザマだし…」(小声)
悟空「三蔵様もあのザマだし…――こちらもせめて助っ人呼ぶとか」(小声)
八戒「助っ人か…しかし心当たりが――」
すこっ
牛魔王「!!――こ…これは!?」
ドコから飛んできたのか、舞台の床に刺さった一枚のカードを抜き取り、牛魔王は戦慄を覚えた。
羅刹女「……って、キャッツカード!?Σ(´Д`;」
『本日、牛魔王の命を頂戴に参上いたします』
牛魔王「ッ!? 戯言を――」
瞬間、観客席脇の窓ガラスが割れ、舞台上の照明が落ち、ホール内が僅かな灯りの、薄暗い空間と化した。
八戒「今度は誰だっ!?――もう驚かないぞっ!」
…はらり、はらり。
観客A「…桜?」
観客B[桜の花びらが…」
――夢の中より現れて
――幻の如く闇に去る
――呼ぶは幾千浮世の嘆き――
どこからとも無く詠う声。
悟空「このネタで来たのか…」
八戒「確かに桜野センセの作品だが――月天関係ねーじゃん」
つっこむ八戒をよそに、スポットライトが割れた窓枠を照らす。
やはり、いた。桜舞い散る中、彼は俊敏な動作で窓枠から舞台へ(距離およそ20メート)飛び降りた。
???「夜空の星が輝く陰で、悪の笑いがこだまする――星から星に無く人の、涙背負って宇宙の始末!」
悟空「宇宙!?Σ(´Д`;」
羅刹女「というか…西遊記にその格好、何よ」
彼女の言う通り、その男の服装はこの中国的な舞台には違和感があった。
隠密のような黒装束、その服下に見え隠れする鎖帷子。…そして指に挟んだ風車。
???「見てわかんねーかなぁ? 風車の弥七」
まぁジャージだったらぶっ殺してたところだが。オチが難しいからってよりによって別キャラ持ってくるか、コレに。
ともあれ、風車の弥七(十?代目石川夢幻斎)はニヒルな動作で武器であろう風車――よく見ると先端がクナイになっている――両手の数本を指の間に挟み、構える。
ちなみに彼の事はガンガンウイングコミックス『常習盗賊改め方ひなぎく見参!』を参照だっ!!(もっと言えば、2巻巻末)
弥七「…そういうワケだから…助太刀させて貰おうか」
八戒「てかアンタ強いのかよ。盗むだけちゃうんかぃ」
弥七「……。――石川夢幻斎は」
八戒「?」
弥七「予告したものは、どんな事があっても盗む――言っただろう、牛魔王の命を頂戴するってな」
言ってビっと構える風車の弥七。合わせて桜が再び舞い、紅の照明効果、三味線のSEが入る。
――ってちょっと待て、いつからこれはチャンチャンバラな時代劇になった。
弥七「それに…昔からの定義であるだろ。――主人公は無敵、ってな!」
悟空「でも…」
黙っていた悟空が、ポソっと呟く。
悟空「――『ひなぎく見参』の弥七殿って主人公じゃ無いような…」
………。
………。
………。
あ。
短編集の方なら文句無く主人公だが、今の彼の場合、物語の主役はヒロインの方である。
弥七「…俺、ダメ?」
八戒「ダメだろう」
羅刹女「そういうワケで…」
牛魔王「…御託はそれだけですか?」
ジャキっ、とそれぞれの――『拳』という名の武器を構え、牛魔王と羅刹女はリアルファイトの準備万端である。
危うし石川夢幻斎、もとい風車の弥七。
――絶景かな、絶景かな。
――億万の、浮世の声が、我を呼ぶ――
羅刹女「何っ!?また増援っ!?」
もう裏方もノリノリなのだろう――即座にスポットライトが照らされた、先程まで牛魔王が座っていた玉座に、腕を組んで見下ろす人影一つ。
牛魔王「バカなっ!? あの呪符をそう簡単に破れるハズが――」
三蔵「…だな。確かに、あの御札が貼ってある以上、動く事は出来なかっただろう――…神奈だったらな」
牛魔王「ッ!ナルホド――アレは確か、悪霊用でしたね」
翼人言われ放題だが、本当はちゃんとした娘なんですよ、奥さん。
悟空「しかし…復活したところで、勝てるのか…?」
背に翼がある事から、ウイングモードである事は確かだが、それでも彼女らを倒すには難しいだろう。
三蔵「フッ…!――確かに、俺の技だけでは倒せないだろうな…――弥七! あの技を使うぞ!」
弥七「よし!了解だ!」
八戒「え、アンタら打ち合わせしてたん!?」
三蔵&弥七「「いや、アイコンタクトとアドリブ」」
凄過ぎ。
三蔵は十数メートルの玉座から飛び降り、弥七と揃って気を溜め始める。
三蔵「俺のこの手が!」
弥七「光って唸る!」
八戒「パクリじゃねーか」
牛魔王「それに、そんな前振りの長い技…命中すると思うか?」
三蔵「…そうだろうな――しかし! これでどうだっ!?」
空いている左手で、牛魔王に一枚の紙切れを投げ付ける。紙切れは手裏剣のように宙を舞って牛魔王の額にペタリと貼りつく。
牛魔王「し――しまったぁぁーっ!!」
その紙切れは、牛魔王自身が封印に用いた呪符だった――封印の呪縛に縛られた牛魔王は、その場にへたり込む。
三蔵「さぁて…トドメと行きますか――悪を砕けと!」
弥七「煌き吼える!」
微妙に違う。
三蔵「滅!」
弥「殺!」
そして二人の掌が――って、あれ?
悟空「ってなんでジャンプっ!?」
三蔵「七梨!」
弥七「石川!」
二人「「必殺――ダブル双流星拳っ!!」」
垂直に飛びあがったのに、何故か斜め落下という、慣性の法則完璧無視な二人の必殺技が牛魔王を襲う――しかし、そのポーズは明かにライダーキック。
“カッ!!”
“ちゅどがーんッ!!!”
ガソリンスタンド事故並の爆発――吹き飛ぶ前数列の観客席。吹き飛ばされる客。
無論、結構離れている観客席ですらこれなのだから、舞台上にいた悟空、八戒もとばっちりである。
<問題点>
1・打撃攻撃なのに爆発力ありすぎ
2・技名、『ダブル双流』と“2”が重複してる
3・加えてキックなのに『拳』ってなんじゃコラ
4・ネーミングださ過ぎ
5・放った本人ボロボロ
三蔵「にゅぐぅ…考えたらいっちゃん爆心地にいるんだから、俺らも相当食らうんだよな…なんか、おかしいなって思ってたんだ」
弥七「早く気付けっつの…――っ!? こ…コレは!?」
一番の爆心地にいるハズのシャオ…もとい、牛魔王がいない。代わりに、ボロ雑巾のようになって白目を向いてる羅刹女の姿が。
弥七「変わり身の術…か!?」
三蔵「バカな…呪符を貼られては奴とて動けないハズなのに――」
牛魔王「クックックック……あのような紙切れで、この私の動きを止め様などとは…笑止千番大器晩成!!」
悟空(大器晩成…?)
牛魔王「変わり身の術が貴様の専売特許だと思わない事だな…、石川夢幻斎?」
弥七「正体バラすなっつーの!」
二人の生死を掛けた(?)必殺技にて羅刹女は倒した――しかし、彼女とて牛魔王の足元にも及ばぬ程度。
その牛魔王が、今、彼らの目の前に立ちふさがる…。
牛魔王「さぁ…ゲームの時間だ」
妖艶に、かつ邪悪に微笑んだ瞬間、牛魔王が先に動いた――何時の間に装備したのか、先日入手した龍の顔を模したガントレッド『ドラグバイザー』にカードを挿入――
三蔵「させるかっ! 発動させる前に叩く!」
場の雰囲気と言うか、お約束をまったく無視するダメ主人公――しかし、発動の方が早かった――無機質な音声が響く。
“ユナイトベント”
牛魔王「『デーモンの召還』と『真紅眼の黒竜』を融合――『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』に進化!」
三蔵「え、マジ!?――ひぐはっ!」
出現した最強クラスのモンスターに、突撃する太助は尻尾で弾かれ、壁に思いきり激突、上半身がコンクリの壁面に突き刺さる。
弥七「さ、三蔵ーっ!ごふっ!?」
更に、BDドラゴンの尻尾が弥七を叩き飛ばし、昏倒させた。
続けて牛魔王がカードを挿入、“ストライクベント”と無機質な音声が聞こえ、BDドラゴンが吼える。
八戒「流石に攻撃力3200はシャレにならんぞ!何か無いのか!? コンファインベントとか!」
悟空「あるかっ!」
ちなみにコンファインベントとは、相手のカードの能力を消滅させるカードである――勿論持ってる奴などいないので、別の対策を考えねばならない。
悟空「…いや…――八戒殿、50円玉持ってるか!?」
八戒「へ!?」
悟空「無ければバスケットのゴールリングでも良いが…」
八戒「いやそっち携帯してる方がおかしい気がするけど――ちょっと待ってくれ」
悟空「少しの間で良い、一枚貸してくれないか」
八戒「あ、ああ…」
ポケットから小銭を取り出し、50円玉を選んで手渡すと、悟空はそれを人差し指と中指で挟み、円の軌道を描く。
悟空「…よし!」
牛魔王「!? 何を…――!?」
悟空「――相手の闘気を巣食う、使い様によっては何物にも優る必殺奥義――使いたくは無かったが…!」
「邪!」
「悪!」
「病!」
「痛!」
「魔!」
呪文らしき詠唱――刹那、巨大なBDドラゴンは50円玉の中心の穴に、一瞬で吸い込まれ、次いで牛魔王の全身を覆うオーラも、同じように吸い込んでいる。
牛魔王「クッ…まさか、アナタがあの究極奥義・よい子の体操第二…『八宝八宝五十円殺』を習得しているとは…おねーさんびっくしですよ…!」
しかし牛魔王さん、その書体と文字色、凄く読みづらいです。
八戒「八宝五十円殺? それは一体…」
悟空「…八宝五十円殺――それは、今の通り、相手の出す闘気を一気に吸収する技、八宝五円殺の発展形だ…――BDドラゴンは、肉体を構成する成分そのものがエネルギー粒子――闘気故に、消滅したのだ」
そして、吸収したエネルギーは使用者のものに――とはいえ、吸収側(悟空)の許容量を超えた、過剰の闘気を身体に蓄えるワケで……その為に肉体が膨らむ、『闘気太り』という作用が起こってしまう。
八戒「…まー…ぼん、きゅっ、ぼーんになっちまって…」
言い方がオヤジっぽいです、八戒しゃん。
悟空「あ、いや…この技をやるとどうしてもこうなってしまうのだ…」
服が元のちんちくりんのサイズな為、この“ぼん、きゅっ、ぼーん”バージョンだと、どうしても窮屈になってしまい、相当にセクシーもとい服がきつくなるのだ。
悟空「だ、だから嫌だったのだっ」
八戒(『使いたくはなかった』ってそういう意味だったんか…)
話している間にも、未だ悟空の五十円玉は牛魔王のオーラを吸い込み続けていた。肉体成長は限界らしく、悟空の肉体(B)はCカップレベルのまま、停滞している――元が元なので、こんなものである。
牛魔王「……クッ…これ以上吸われるのは危険ですね…――良いでしょう、悟空。今回は私の負けにしておいてあげましょう…!――悟空の方も、限界のようですしね…」
八戒「…っ!?」
片膝をついた牛魔王の一言。一瞬負け惜しみかと思われたが――吸い取り続ける悟空の表情は決して余裕のあったものではなく、相当に息を荒げ、苦しそうな表情を見せている。
牛魔王「今でさえ、許容範囲を遥かに超える闘気を抑えるのでやっとなのでしょう…――普通の者なら、耐えきれず四肢が破裂してそうなものを…流石は我が妹」
八戒「そ…そうなのか!?」
悟空「…残念だけど…その通りだ…」
牛魔王「そういう事です」
にやそ、と妖しげに笑い、牛魔王は苦しげにもんどり打って、倒れた。…熊川哲也もびっくしな演技派だ。
………。
……。
…。
幕の降りた舞台――防音効果がある筈の緞帳の向こうには、脱落者の続出で数少なくなった観客の歓声と拍手がひっきりなしに聞こえている。
翔子「ま、成功…かな」
裏方達が後片付けしている合間で、猪八戒――翔子が安堵のため息をついた。
TAKASI「お疲れ、太助」
太助「ったく、無茶苦茶な芝居だったな。ほとんどやりたい放題じゃねぇか畜生」
TAKASI「やー、どーせだったら前例が無いモノをやりたいってのがクリエイターの性じゃん?」
太助「黙れこのパクリエイターが」
弥七――石川夢幻斎は気がついたら姿を消していた。…追われる身故であろう。
アヤメとダンは、終わるや否や急いですぐに車(胴長なベンツ)ですぐに去っていった――親日会談とかなんとかが、皇居やら総理大臣公邸とかで行われるんだとか。
ライとデン、まりあもそれぞれの場所へ帰っていった。
この撤収のいい加減さは、仮面ライダー全員集合とほぼどっこいだ。
気がついたらシャオも消えていた――やはり、あと一歩及ばなかったとはいえ、妹に追い詰められたのがショックだったらしい――ルーアンは…相変わらずのびている。
翔子「そうそう、キリュウ――なんと言っても今回の主役はお前だよ。なんてったってあのシャオにあそこまで食いついたんだから――…? どうした?」
未だアダルトチェンジのままのキリュウは、先程から脂汗を額に浮かべながら、硬直している。
太助「ぬぉ…ぺったんこも良いが、このモードもなかなか…」
翔子「黙れ生臭坊主」
変態法師を蹴飛ばし、翔子はキリュウの顔を覗く。――そういえば、先程『許容範囲を遥かに超える闘気を抑えるのがやっと』とシャオが言っていたが…。
キリュウ「シャオ姉ぇの言った通り…一気に放出してしまえば、周囲にだって多大な被害が出る…――闘気がゆっくり消費されて…っゆくのを…待つしか…無い」
太助「判りやすく例えるなら、核レヴェルなビック・バン(屁)をこらえてるみてーなもんだな」
キリュウ「確かに…言ってみればその通りだが…もう少し上品に例えて欲しかったな――」
その時、撤収中に彼女の後ろに機材のひとつが落ちる。幸い、機材そのものは無事だったが、古い物だったらしく、被っていた埃が宙を舞い――
太助「!!!俺今回のオチ読めだぜ!」
翔子「言ってる場合かっ!――キリュウ!」
キリュウ「っ!?――……………ふぇぇ……っ、ふぇっ…」
「「「「「わーーーーーーーっ!!!」」」」」
話を聴いていた全ての生徒が、悲鳴のような声を上げて――
――へっくち。
同時、彼女から眩い光が放たれて――
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――。
シャオ「……まだまだ、あの娘も未熟未熟…」
まるでデイジーカッターが爆発したような鶴が丘中学、そして体育館を見下ろしながら、シャオリンは微笑した。
そして、詠うように、ぽつりと呟いた。
シャオ 「――金田一少年がIQ180、デスラー総統がIQ230なのに、本郷猛がIQ800ってのは明らかに無茶苦茶じゃ無いでしょうか…――というか、それだけあればショッカー撲滅なんかよりも、世界征服とかやらかさないでしょうか…」
…一理あるが、今言う事じゃ無いと思います。
〜つづく〜
(段々格闘っぽくなってきた気がします。壊月天がルール無用で本当に良かったと思いました)
ハルカの勝手コメント
スンマセン、ちょっと一言言わせて下さい。
レイさん乎一郎キライなんですか?!(オイ
マジで乎一郎が居ない…というより、ホンキで影も形もないんですが(笑
けれど、その代わりに小説版から他作品までカバーする多くのキャラクターが登場。
これこそまさに壊月天の壊月天たる由縁ですな(^^
ともあれこれで文化祭編も消化して、ますます発展する壊月天ワールド。
もちろん次回もお待ちしております♪