まもって守護月天
〜22Century〜

 


〜33話(ハイパーボールよりスーパーボールの方が捕獲できるか)〜









太助「ダオスをだおす!」

 いきなり意味不明度120%、ワケワカンナイ方向に向け絶好調である。

太助「のっけの掴みはこれでOKだっ」
神奈「掴めたのかの?」
太助「っ…!!?」

 太助ちんびっくしなのも無理は無い。彼の横には普段なら精神体であるハズの神奈が、普通にその場にいて、ツッコミを入れてるのだから。
 …いや、ツッコミを入れてるのがびっくしなんじゃないぞ。

太助「質量のある残像?」
神奈「姿は一人だと思うが…」
太助「わかった、幻影だろう」
神奈「むしろ今までが幻影のようなカタチだったのだがな」
太助「じゃぁ何だよ」
神奈「うむ…」
南極寿星「それは儂が話そう」
太助「ぉ、南極28号

 すこーん。

南極寿星「ワシゃロボットじゃないわっ!!」
太助「痛ぅ…ネタ知ってんのか」

 ぶっ叩いた杖を元に戻すと、南極寿星は改めるように空咳をした。

南極寿星「ワシは、お主の魂に棲んでいたこの翼人殿に肉体を与えてやったまでじゃ」
太助「そーいうのって簡単に出来んのかよ…ってかそーいうのって人道的にアレなんじゃねーか?」

 死人を蘇えらせたりするみたいで、あまりいい気がしないのは自分だけか?と眉を顰めたが、このクソジジィ「ワシ星神だもーん」とかほざきやがった。

太助「――…で? これからどーすりゃ良いんだ?」

 …言い忘れていたが。
 俺達は、見知らぬ森の中にいた。――てっきり前みたいな“大気の場所”かと思ったが、どうも違うようだ。
 ――どうであれ、ここにシャオはいない。…

太助「…て言うか、どこだよ、ここ」
南極寿星「知らぬ」

 ………。

南極寿星「お、恐らく記憶の世界じゃろ…過去の、シャオリン様のな…」

 つまり、ここは中国って事か。

太助「要は、こっからどーやってシャオのところまで行くか、だよな」
神奈「うむ。ともかくここがどこだかわかれば良いのだが」
南極寿星「……小僧、真面目に会話しながらワシの頭部をアイアンクローするのは止めてくれぬか」

 頭変形してるなジジィ。
 鷲掴みにしていた右手を離すと、南極寿星はべちっと落下するが、すぐに元の様に浮遊する。

太助「ホントの所どーなんだよ。ここは単なる通過地点なのか?ジジィ」
南極寿星「うむ。このような場所に来るとは予想外じゃったよ。かっかっか」
太助「……。」

 太助はありったけの気を凝縮し、それを南極寿星の顔面に叩きつけた。




 …3時間後。
 人の姿を探してなんとか町を見付け、いろいろと情報収集。そうして得られた情報を3人は簡単に整理した。

南極寿星「どうやら、ここはシャオリン様の3代前の主が生きる時代らしいの」
太助「…にしてもかなり昔のようだな。『周』とか言ってたし…さて、これからどうするか…」
神奈「何か手があるのか?」
南極寿星「無いの」
太助「黙ってろ2等身ジジィ」
南極寿星「ぐっ…」
神奈「少なくとも、この世界のどこかに現代のシャオリン殿がいるのは確かなのだろう?」
太助「だが、そのシャオがどこにいるか…――ここのジジィは方向音痴で頼りになんねーし」
南極寿星「な…何故ワシが方向音痴って事を…!?」

 原作先読み能力の賜物である。

南極寿星「じゃ、じゃが術が無いワケではないぞ!」
太助「ほー?なんかあんのかよ」
南極寿星「先程仕入れた情報じゃが、この辺りに仙人様が姿を現したそうじゃ」
太助「…眉唾臭さ炸裂だな」
神奈「そもそも仙人などおるのか?」

 いや、精霊や神、翼人がいるくらいだから仙人だっているんだろう。

太助「もしいたとしても、この辺りっつってもどこにいるんだか――…どした神奈」
神奈「…あれではないのか?」

 彼女が指差した露店の軒先を覗くと、明かに他の人とは異なった雰囲気の男が、中華マンを頬張っていた。
 この時代とは思えない、奇妙な黒ずくめの服のその男は、こちらの視線に気付いたかこちらを振り向く。

???「…なんじゃ、おぬし等?」










 ………。
 ……。
 …。


翔子「うーん…」

 目を覚ました彼女は、身を起こし、辺りを見回す。同じく床に倒れ伏していた2人も、目を覚ましたらしくゆっくりと頭を瞼を擦りながら起き上がった。

花織「…あ、山野辺先輩。おはよーございます」
翔子「……ああ、おはよ。――確かアタシら…太助に気絶させられたんだっけ」
出雲「まぁ、私らにも非があったのは認めますがね」

 一応不法侵入の罪悪感はあるらしい出雲しゃん。変形し腫れ上がった顔面を摩りながら溜息をつく。

出雲「――しかし、アナタがたは良いですよね。頚動脈を軽く叩かれただけなんですから…その点私なんぞこの通りですよ」
翔子「一応フェミニストなんだな、アイツ」
花織「ところで…」

 3人の足元…床の方に転がる“ソレ”に視線を向ける。

花織「…目、覚めませんね。野村先輩」
出雲「私より酷いやられ方ですね…特に首…折れてるんじゃないですか?」
翔子「つーか、顔面蒼白だぞ…なんか泡吹いてるし、痙攣してるし」

 医学的に(?)言う危篤状態のTAKASIに対し、全員の反応は非常に冷静この上無い。

出雲「そういえば、太助君が見当たりませんね」
花織「キリュウ先輩もですよ…」

 ピンと閃いたか、二人は顔を見合わせ、

出雲&花織「「もしや…」」
翔子「な、なんだよ二人とも」
花織「先輩、二人はきっと寝室です!!」
出雲「年頃の、思う二人が二人きり――…この後の展開と言ったらアレしか無いでしょう!!」
翔子「アレって…(赤面)」
出雲「そう、アレですよ――なんだかんだ言っても太助君は男、キリュウさんは女ですからねぇ(赤面)」
花織「きゃぁ〜っ(赤面)」

 顔真っ赤にして盛り上がる3人(正確には2人)。出雲と花織は再び顔を見合わせて、ニヤリと笑い、親指を立てた。

出雲「行ってみますか」
花織「ですね」
翔子「ち、ちょっと待てよ!」

 慌てて制止する翔子に、二人は怪訝な顔をする。

翔子「そんな、覗きのような真似は…」
出雲「嫌ですねぇ、今更何言ってんですか」
花織「そうですよぉ。だから部屋くらい覗いったって」
翔子「そ、そうかもしんねーけどさ…――本当にヤってたら…」
出雲「うーん。そしたら最悪混ざって5Pで
翔子「朽ちれ変態堕神主



 結局、その可能性は否定された。なぜなら、リビングを出たすぐの場所で、キリュウがぐったりと倒れていたのだから。しかも、どうしてか彼女の肉体は薄っすらと透けている。

出雲「…透明人間の実験ですか?」
キリュウ「…………ち…違うっ…」

 声もどこか弱々しい。

翔子「キリュウ、太助はどうしたんだ?」
キリュウ「……主殿は…シャオ…姉…をっ、連れ…戻す為に…」




 “がちゃっ”



シャオ&ルーアン「「たらぁ〜いまっ★」」






翔子「…あ?」
シャオ「あっれ〜?皆さんどーしたんですかぁ?」
翔子「シャオ…アンタ、家出したんじゃ」
ルーアン「あのねー、アタシらが飲んでる時にぐーぜんヤケ酒飲んでたこのコと逢ってぇ、一緒に愚痴言い合ってたのよぉ〜」
キリュウ「……。」

 その二人のあんまりな体たらくさに、キリュウは愕然として意識を失った。





 ………。
 ……。
 …。


???「ふぅむ、なるほどのぅ」
太助「まー、信じて貰えないだろーけどさ」

 大まかの説明を聞くと、仙人はふむ、と唸った。100歳近いらしいが、その顔はどう見ても20歳以下に見える。流石うん千年も生きる仙人である。エルフも顔負けの童顔さだ(違)。

仙人?「いや、おぬし等の説明には一点の曇りも無かった――…それにしても、守護月天…精霊か。わしも見た事は無い、が」
太助「?」
仙人?「魅花という者なら、風の噂で聞いた事がある。十数年前に滅んだ小国の生き残りの姫…であったかな?」
南極寿星「それじゃ。間違い無い!」
太助「んで、その魅花ってのはどこにいるんだ?」
仙人?「そこまでは知らぬ」
太助「駄目じゃん!」
仙人?「まぁ待つが良い」

 仙人は軽く笑って、「ここはワシが占ってやろう」と、何やら懐から取り出した。

太助「…イワシ?」
仙人?「うむ。イワシ占いだ
太助「ネタ古ぃぞ伏羲
仙人?「……確かに、1巻のヤツじゃからのぅ…しかし、何故おぬしワシの名を…」

 しかも始祖の方の名前だし。気を取り直し、彼は普通に、懐から先に球体の付いた棒を取り出し、祈るように唸った。

太助「……今度こそ本物の占い?」
仙人?「いや、ただのノリじゃ――…む。見えたぞ――ここより北西に200里程行った山奥にある屋敷を尋ねるが良い」

 なんか胡散臭い気もするが――彼自身は隠しているようだが彼の雰囲気というか、ただならぬ“気”を感じ取った太助と神奈は、疑う事はせずに彼に頭を下げて向かう事にした。









太助「う〜ん…」
神奈「どうした太助」
太助「考えてたんだけどさー、今俺ら魅花って人の家に向かってるんだよな」
神奈「うむ。シャオリン殿の3代前の主のな」
太助「…それで、シャオに逢ったとして――それからどーすんだ? 連れ帰るのか?」
神奈「そう…なのであろう?」
太助「そうだとしたら、シャオがいなくなったこの時代はどーなるんだ? 歴史が変わっちゃうんじゃねーのか?」
南極寿星「その点は問題無い。記憶の世界じゃからな。ここにおられるシャオリン様は、言わばシャオリンさまの魂魄の核のようなもの。核を元の器に戻す事に、さして問題は無い」
太助「そっか。……しかし、なんっか引っ掛かるんだよなぁ」
南極寿星「む。そうこう言っている内に魅花様の屋敷が見えてきたぞい!」

 はしゃぐなジジィいい年こいて。


 刹那。

太助「何だ、あれ――にゃぷーっ!?

 前方から何かが近付いてくると気付いたが既に遅く、その何かは信じられないスピードでこちらに接近、すれ違い、掛け抜けて行った。
 宙を舞う太助。

神奈「な、なんなのだ!?今の疾風の如き物体は…」
南極寿星「恐らく、先鋒の星神『天陰』であろう――」

 少し考え、南極寿星は嫌な予感が浮かんだ。

南極寿星「…と言う事は、攻撃目標が近くにいるという事じゃ…――いかん、急がねば魅花様の身が危ない!」
太助「……それより俺、思いっきり撥ねられたんですけど(出血多量)」

 言っても、今更誰も振り向かない。






 そして、森の開けた場所に出た。
 草むらに身を隠し、太助達は対峙する二人を直視した。


ルーアン「ふん、いきなり随分な事してくれるじゃないの」

 陽天心により戦車と化した大砲の上で、威勢良く“この時代の”ルーアンは啖呵を切っている。対面の“この時代の”シャオは、無表情のままいつの間にか戻って来た天陰を従えルーアンを見据えている。

ルーアン「守護月天シャオリン――アンタの主の命を貰いに来たわ」
シャオ「……。」

太助「…なんか二人とも雰囲気が今と違うな」
南極寿星「当然じゃ。おぬし等の時代と違ってここは乱世じゃからの。…寧ろあれこそ正しきシャオリン様じゃ」
太助「ふぅ、ん」

 南極寿星の言葉に眉を顰めつつも、再び二人の対峙を観戦する。
 最初に動いたのはルーアンだった。大砲に置いてあった無数の矢に陽天心を掛け、命を宿った矢達は一斉にシャオへ突撃する。

シャオ「…来々『天鶏』!!」

 翳した支天輪から火の鳥が出現。迫り来る全ての矢は焼き尽され、塵となった。


シャオ「立ち去りなさい。もうこれ以上ここにいても無駄です」
ルーアン「ハッ! 何寝惚けた事言ってんの。勝負はこれからで――」

 爆発。――どうやら先の『天鶏』の炎が大砲の方まで届いていたらしく、中の火薬に引火したようだ。悲鳴を、罵声を、負け犬の遠吠えながら、ルーアンは撤退していった。


太助「…呆気無かったな――…ん?」
南極寿星「守護月天シャオリン様が、慶幸日天如きに手を焼く訳無かろうが。――どうした?」
太助「何か背後から変な臭いと熱気が…」
神奈「というより既に燃えておるぞ」

 振り返ると、山火事。

太助「わーーーっ!! 消せ消せぇ〜っ!!」




 …ふと思ったが、この時代に火薬…はあったとして、大砲ってあったのでしょうかね?




 10分後。

太助「…はぁ…はぁ…何とかボヤで済んだか…」

 己の主人は守れても森の平和は守れないらしい当の守護月天は、既に姿を消していた――…まったく、こっちの気持ちも知らないで。
 ここにいてもしょうがないので、消化を終えた3人はそのまま足を運び、魅花の屋敷に到着した。

神奈「あの老婆か…ふむ、そこはかとなく気品があるのぅ」
太助「ああ。流石守護月天の主だけあるって事か…」
南極寿星「…の、のぅおぬし等……何故屋根裏に忍び込む必要が…」

 ちなみにジジィの提案でなく2人の自発行為だ。

太助「うーむ…しかし、シャオ連れ去るだけなら別に魅花に会わなくてもいーんじゃねーか?」
神奈「であるな」

 “ぶすっ”

太助「おぉぅ、いきなり床から刃が!?」
神奈「いや床でなく天井だろう」

 “ぶすっ”“ぶすっ”

 次々に突かれる槍の刃を、2人は巧みに体勢を変えて回避する。


声『曲者です!魅花様、お逃げ下さい!』

太助(國府田マリ子の声じゃない…それに複数だ…御付の衛兵か?)

  “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ” “ぶすっ”“ぶすっ”

 “ずどがっ!!”


 そりゃまぁ、
 上からの過重が掛かる天井に次々と傷つけりゃぁ、
 天井が落ちても仕方が無いわけでして、

太助「痛ぅ…くっそー、ドリフのオチみたいな展開になりやがって」

 埃が舞う中、天井の瓦礫と共に落下した3人は、魅花を護衛する御付の者達に槍を突きつけられた。

神奈「厄介な展開になったのぅ、太助」
太助「ああ…――仕方ない、ここは一つ」

 屈んだまま、ファイティングポーズを取る太助。

太助「全員ぶっ潰してトンズラするぞ」
南極寿星「ま、待て待て小僧!短気はいかんぞ!!」

 太助と神奈――この二人が融合した場合、かなう地球人類はいないだろう。

南極寿星「むぅ…ワシは魅花殿と面識が無いからのぅ…せめてシャオリン様がいれば弁解の余地が…」
太助「やっぱし殺るか。その方が手っ取り早いしな――だって、ここは記憶の中だしぶっ潰しても歴史に変わりは無いんだろ?」
南極寿星「む、むぅ…」



???『それはどうかのぅ』
全員「「「「「「…っ!!!!???」」」」」

 そう言って窓からのほほんと現れたのは、先程の黒い仙人だった。ひょいと窓枠から侵入する彼にも、槍が突き付けられる。

仙人?「おっと、ワシは妖しい者では無いぞ。ただの、一介の道士じゃ」
太助「……さっきの、どういう意味なんだ?」

 御付の警戒を無視し、道士はニヤリと笑った。

仙人?「おぬしは言ったのぅ。記憶の中だから、歴史は変わらんと」
太助「ああ。…アンタあれ信じてたのか」
仙人?「うむ。…言ったであろう? お主等の言葉に一点の曇りも無かったと。――…誰の記憶の中とて、記憶の歴史を変えてしまえば歪みが起こるであろう」
太助「む…」
仙人?「更に言えば…おぬし等記憶の中と決めつけておるが――…本当にそうかの?」
神奈「…!?」
仙人?「そもそも、記憶というのは既に起こってしまった事を指す――起こってしまった事を変える事は不可能だ」
太助「だったら、どういう事だよ」
仙人?「可能にするには…簡単、“起こる前に戻る”という事だ」
太助「…!! おぃジジィ、信用性はこの道士の方がうん千倍あるんだけどよ」
南極寿星「ぬぅ…確かにそうじゃ…」

 納得してるよジジィ。

仙人?「もっとも、時間転移っつー芸当をどーやったかは知らんがの」
太助「なら…ここでシャオを連れ戻しても無意味なのか…」
魅花「のぅ、そなたら――…何やら込み合ったハナシのようじゃのう? 刃を下げなさい。。この方々に敵意は無い…席を外してはくれまいか?」
御付き「…はぁ、しかし…」
魅花「構いません。…そう、茶の用意もしてくれぬか」
御付き「…わかりました」



魅花「ふむ…未来からのぅ。にわかには信じられぬが…」
太助「…まぁ、俺達も信じられねーがな」
仙人?「今より3000年近く未来か…その頃には既に人間界の仙人達は全て神界に行ったのだな」
太助「? 何のハナシだ?」
仙人?「いや、こっちのハナシじゃ」
魅花「それで、おぬし等は…未来の為シャオリンが必要と申すのじゃな?」
太助「ああ、まぁ…――考えとは違ってたから本当に大丈夫かどうかは疑問だけどな…」
神奈「本当に過去だとすれば…ここで未来にシャオ殿を連れていけば、魅花殿は…」
魅花「構わぬ……所詮先の短い命、いつ尽きても」
太助「…構わなくねーよ全然。命を粗末にする奴はいくら良い奴でも地獄へ落ちるぜ?」
仙人?「……。」
神奈「こ、これ! 失礼じゃぞ。…まかりなりにも、3000歳以上年上なのじゃから…」
魅花「フフ…構わぬ。――そうであるな。…お主の言っていることはもっともじゃ」
太助「――!?何だ、この音」

 地を揺るわす轟音。何か、巨大な物が迫って来る気配に、室内の空気がピンと張り詰めた。

太助「まさか…」
神奈「…再度の追撃か」





ルーアン「いい加減諦めて、魅花こっちに渡しなさいよ!!」

 先よりもっと巨大な大砲戦車を構え攻撃を仕掛けているルーアン。防御用星神『塁壁陣』を召還し、飛来する矢を防いでいるシャオ。


 ――俺は…どうすればいいんだ――
 ――主だからとか、そんなんじゃなくて――
 ――ただ、好きだから――
 ――――シャオのために何かしてやりたいのに――
 ――俺に…俺に出来る事は――


太助「ちゃりゃぁぁぁーっ!!」

 殴り込みぐらい。

神奈「…何を柄でも無いモノローグをしておるのだ」
太助「いやーん太助ちんわっかりやす〜い」

 やはりこういう力ずくの方が好きのようで、太助はただ今ガンパレード状態。

太助「やぃ手前ら。こんな不毛な戦い、例えお天道様が許そうが俺が許さねぇ!さっさと立ち去りやがれ特にそっちのケバ婆
ルーアン「なっ…!? 誰がケバイですってぇぇーっ!?」

 どうやら、この時代のルーアンは相当に短気らしい(原作なら現代でもそうだが)。

シャオ「邪魔をしないで下さい…――これは私、守護月天の役目…アナタ方が危険に遇う必要は…」
太助「うっせぇ。ヤな事全部テメーで受け止めて悲劇のヒロインぶってるってな、俺は大嫌いなんでね」
ルーアン「何ゴチャゴチャ言ってんのよ!! アンタも一緒に始末して――」
太助「殺劇、舞荒拳!!!



 ぼすごすごきぐしゃめきっざしゅめきぐちゃずぎゃめきゃばきどかごすごきぐしゃめきっざしゅめきめきぐちゃずぎゃめきゃばきめきっざしゅにゃきぐしゅずがぁっ!!――………ぐしゃり(←落下)


 必殺の拳のコンボが全てルーアン含め陽天心武具達にクリーンヒット。ボロ雑巾と瓦礫は十数メートルほど宙を錐揉みで舞い、そのまま墜落した。

太助「っしゃぁ、22Hit!」
神奈「鬼畜…」

 何とでも言え。

ルーアン「くっ…」
太助「あ、復活した」
ルーアン「アンタ、一体何者!? どうして私の邪魔すんのよ!」
太助「言ったろ? こちとら、魅花を殺されるワケにはいかないんでね。ついでにシャオもな」
シャオ「…!?」
太助「ルーアン、アンタも幸せを叶える精霊ならわかるだろ? いくら主の命令でも、人を殺す事が幸せに繋がると本気で思うのか?」

 …少なくとも、俺は思わんぞ。

ルーアン「…っ! それが主様の命令なら――」
太助「このアホンダラ!

 めきょりっ(←愛パンチ(のつもり)

太助「まだワカンナイの!? アンタはねぇ、疑惑のデパートって言われてるけど、疑惑の総合商社ですーっ!!
神奈「途中まで良かったが後半しっちゃかめっちゃかじゃぞ(´Д`|||

 しかも愛パンチ(コークスクリュー)を顔面に食らって当のルーアンまたぶっ倒れてるし。
 ルーアンしゃん復活するのに3分。

太助「つまり、俺は『アンタは腐ったミカンだ〜っ!』って言いたかったワケよ」
ルーアン「……言いたい事は解かるわ。――でも、魅花は私の主様に復讐の念を…」
シャオ「それは違います!!」
ルーアン「……!」

 初めて、この時代のシャオの『声』を聞いた気がする。

シャオ「魅花様は、復讐なんて考えていませんでした――ただここで、ひっそりと暮らしていたいだけなんです!」
ルーアン「それでも、精霊は主の命令は絶対なの! アンタも精霊だったら判るでしょ!?」

仙人?「…ならば、その主に命令を変えて貰うよう頼めば良いであろう?」
太助「…! 道士…」
シャオ&ルーアン「「…!?」」

 のほほんな雰囲気の道士の姿に、何故か二人は戦慄する。この道士が只者じゃ無いと見抜いたのであろう。

神奈「ナルホド。そうやれば万事解決じゃのう」
仙人?「…もっとも、精霊のお主等が頼んでも、通用はせんだろうがのう」
太助「だろうな。ルーアンはその主に仕える精霊。口答えと見なされるだろうな…敵側のシャオなんか論外だ」
神奈「魅花殿なんぞなお不可であるな。それにあの老体では…」

 ――…となると、残っているのは…太助達か。

神奈「って、それは難題じゃぞ。第三者のわらわ達では、結局力押しにしかならぬ。下手をすれば今より立場が悪化しようぞ」
太助「…反論出来ねぇ…」

 ――…となると、彼しかいない。

仙人?「ム…わしか?」
太助「頼む、言い出しっぺ」
仙人?「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜む…」

 出来無いので困っているのでは無く、出来るけど面倒臭いという雰囲気がまる分かり。

仙人?「仕方無いのう。もしここで断って、おぬし等が騒ぎを起こして姫発の仕事を増やすのもマズいしのう。うむ、その件はわしが何とかしよう――…それで、おぬし等の問題は解決出来たのか?」

 そうだ。すっかり忘れていたが、俺達には一番厄介な難題が残っていたのだ。

神奈「…このシャオ殿を連れてゆくのか?」
シャオ「…はい?」
太助「いや、それはマズいだろ…魅花さんの事もあるし――それにここまで昔だと、歴史の変化もかなり大きくなっちゃうんじゃ――」



 …? 事の重大さを理解した太助だが、ふと神奈の方を見た。



太助「…なんで消えねーんだ? お前」



神奈「いきな唐突じゃのう…」

 だが、疑問に思うのも当然だ。神奈がここに存在するのは、シャオのイタズラとルーアンのボケという偶然の上になりたってのものである。

神奈「そう言えばそうじゃのう……何故じゃ?」

 重大な謎を残しつつ、次回…完結編へ続きます。




〜つづく〜
(ごめんなさい、めっさ(壊月天にしちゃ)シリアスです。ただ単に『封神演義』ネタとリンクさせたかっただけです)


ハルカの勝手コメント

 今回、一度に二話頂いております。レイさんどうもありがとうございます。

 ということで「まもって守護月天〜22Century〜」33話です。

 しかし意外な人物が登場しました、ちょっとびっくり(^^

 そういえば舞台中国なんですよね、原作でも太助君じつは中国語ぺらぺら(笑

 ところで、

 > ――俺は…どうすればいいんだ――
 > ――主だからとか、そんなんじゃなくて――
 > ――ただ、好きだから――
 > ――――シャオのために何かしてやりたいのに――
 > ――俺に…俺に出来る事は――
 ハルカは太助君の二股を許しません(笑

 無駄コメントはこれくらいで、レイさん、投稿ありがとうございました!

 

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