「ファイト!!」・前編




 泣きそう。
 もうダメ、つーか涙出てるかもしんない。
「ううう……」
 歯軋りの合間から、こもった声があふれ出る。待てよっていう、いつもよりも数倍感情が込められた風の青木陸斗(あおき りくと)の声を、振り払うように全力で駆け出した。
(ホントもうダメ……)
 喉なんか、目一杯やられてるっぽい。
 ほんのちょっとでも口開いたら、そしたら絶対に最悪のパターンで、ナイアガラみたい大瀑布状態で泣き出してしまうだろう。
 それがわかるから、的場高史(まとば たかし)は必死に、その場から逃げ出した。
 でもってそんな自分を追いかけてくんのが、近年稀に見るレベルで慌てふためいてる陸斗だけってのが、ますます胸を締め上げて―――だからこそ、高史はますます必死に逃げたのだった。



 



 それは高史にとっては物凄い、それこそ清水寺どころか富士山のてっぺんから麓めがけてバンジージャンプするぐらいの、それぐらいデッカイ勇気が要ることだった。
 まず最初はアコガレで……それが少しずつ、毎日毎日、積み重なるような気持ちで好きになっていたってがそもそもの始まりで。高史が逆立ちしたって真似できないような大人っぽい微笑だとか、それに似合うワケ知り顔な話し方とか、表情とか、イントネーションとか、ちょっとした気の使い方とか、ふとした瞬間見せる弾けるような笑顔とか、実は勝気なところとか―――もう、いつのまにかそういうことばっかり考えてて、目で追ってばかりの自分に気づいてしまったから。
 好きだって。
 俺は、加藤晴生(かとう はるき)が好きなんだって。
 悟らざるを得なかった。男同士だとか、そういうことなんか吹っ飛んじゃうぐらい好きなんだって。
 そう気づいてしまったら、陸斗曰く「直情一直線」な性格の高史が、自分の気持ちを閉じこめたまま、同じクラスで適当に親しくなんかしていられない。宙ぶらりんでクラスメイトなんてできない。目を合わせるだけで、お前が好きなんだって叫んでしまいそうになってしまうのに。
 ならもう、実行あるのみだろ?
 答えはわかってるけど、そこに気持ちが追いつくのには、やっぱり当たり前なんだけど、かつてないぐらいためらいがあった。だって男だし、でもカッコイイし、好きだし―――でも、でも……っていうぐるぐるを潜り抜けて、それでもどうにか動き出せたのは、それはコイツがいてくれたから。
「りく〜……」
 高史は親友で幼馴染でクラスメイトでお隣さんな―――人生の17年間をともに歩んできたとも言える陸斗を正面に、ガックリとその頭を両手の間に落とした。
 はぁ、と零れるのは、昨日から癖になってしまったため息。
「うん、まぁ―――」
 だなんて、陸斗が言葉を詰まらせてるのはいつもの事。いつもの事なんだけど、今日はその比重がずっと多めになっている。陸斗だって、どうしたもんか困ってるんだろう。つり目で、一見怖そうに見える陸斗が、実は単なる口下手なだけでめちゃくちゃに気ィ使い屋ってことぐらい、幼馴染の高史が一番知っている。
 だから、あちこちに視線を逃しては、「あのな……」とか「わかってるとは思うけど……」だとか、ぼそぼそ口を開く陸斗が、その度に言いづらそうにまた口を閉じるのに、はぁとため息をついて告げた。
「うん。俺もビックリしただけでさ……昨日は逃げたりして悪かったって、反省してる」
 出来るだけ事実のみを、心情抜きにして口にする。
 そうじゃないと、思い出して―――はっきりパッキリと、底抜けに明るい顔をした加藤が、「ありがとうネ」って、かるーく高史の一世一代の告白を流したあとに、「でも俺な……」で続けた台詞が頭に甦ってきて―――高史はその表情を隠すように組んだ両手の中に伏せ落とした。
(うううううう……ホント、俺だって)
 陸斗に物凄く居心地悪い思いさせているのぐらい、よっくわかっている。
 でも、それでもやっぱり物凄くショックだったのだ。
 精一杯の勇気を振り絞って、陸斗に後押しまでしてもらって、そうやって全身全霊で告白したその場で、まさか付き添い人の陸斗相手に、「的場の気持ちはありがとうなんだけど、でも俺、青木の方に興味があるんだよね。つーか青木、この際だから俺と付き合わない? 俺、優しいのよ」っていう目の前がチカチカするような爆弾発言を加藤がするなんて、そんなこと、微塵すら考えてなかったから―――。
 なんだかもう、たまんない気持ちになって、それで高史はその場から逃走した。家に逃げ帰って、一晩中うんうん唸りながら塞いだりして、その時はもう、加藤と……でもって何より陸斗のいる学校になんか、しかも二人とも同じクラスで席だってすごく近いし、絶対に行けるワケなんかないってそう思ってた。
 思ってたけど、思ってた割には、そのままベッドに貼り付いたまんまで結構ぐっすり寝むり込んでしまったワケで……そしたら、そうしたら、いつもの癖っていうか、流れ作業みたいなモンで、顔洗って朝ご飯食べて、歯磨いて制服着てたら―――きっかり朝7時50分、いつもの時刻に玄関を押し開いていた。
 そして。
 玄関を出たその視界には、いつものように、でもいつもよりちょっとだけ俯きかげんの陸斗が立っていたワケで。
(おはようって……俺が声掛けなきゃ、コイツ、そのまんま一生クチ聞けなくなるって、そーゆー思い詰め方するかんな)
 そう気付いたら、一回、「ごほん」って息を整えると、高史は腹の底の方に力を入れて、「おはよう」と声を繰り出した。
(だって、コイツと話せなくなったり、仲悪くなったりしたら……嫌じゃんか!!)
 ご近所で、ガキの頃から知ってて、ほとんど一緒に育ったよーなモンで、いわゆる幼馴染の、なんでも話し合える親友なのだ。今回だって、陸斗の後押しがなかったら、自分の気持ちを加藤に伝えようっていう勇気を抱くことは結局出来なかったと思う。でもって、好きだけど男同士っていう踏ん切りきれないところで、ジタバタ足踏みばっかりして、精一杯コイゴコロっていうのを痛め付けまくったことだろう。恋愛っていうのは、それが禁忌であればあるほど、気持ちが高ぶるって言うし……つまりそれだけ、苦しいのはいや増すのだ。
 だから、気持ちを伝えられたっていうのは、間違いなく本当に良かった事だった。
 その結果がたとえ―――たとえ、あんな形であったとしても。
(ましてやそれが、陸のせいじゃないのなんか、当ったり前なんだから!)
 高史は朝、出会って以来何度となく作ってみせた、ムリヤリ口端を吊り上げた笑顔を、再び陸斗に向けて浮かべてみせた。今度は自分でも、幾分かマシな顔になっている気がした。
「ほら……アレだろ。オマエ、よく見ればカッコイイ顔してるし―――まぁ、いつもはブスーって愛想なんかどっかに置き忘れたみたいな顔してばっかだから、怖いっぽいけど」
 言ってしまって、なんだかあんまりフォローになってないっていうか、けなしてるっぽい気もして、慌てて言葉を重ねる。
「で、でも、オマエその顔のクセして家事全般得意だしすっげー器用だし、牛丼作るのウマイし、好き嫌いないし……ええと、とにかくオマエのそーゆーイイところを、加藤が評価してくれてるってコトなワケで……」
 言いながら、何が言いたいのが自分が一番わからなくなる。高史はいささか混乱気味に手を左右に振った。
「ええとだから、その……俺は全然気にしてないって言うか……むしろ、オマエのそーゆーところに気付いてくれてる加藤ってやっぱすげーなぁとか……」
 しりすぼみに高史の声が小さくなっていくのは、じわじわ増えていく陸斗の眉間のしわに比例していた。
(なんか……なんつーか、俺、ナニ言ってんだろ)
 本当に。励まして欲しいのは、実は断然高史のほうなのだ。
 明確にフラれたってワケではないけれど、ほとんどフラれたようなものなのだから。
 高史ははぁああああああ〜と、深い息を吐き出した。
 その、高史の様子に気付いたのだろう。陸斗はハッと目を見開くと、ぼそぼそ言葉を舌に乗せた。
「あ……いや、高史が気にしてないんであればそれで……。俺だって―――」
 しかしそこで、陸斗の言葉は急にせき止められてしまう。突然の後方からの衝撃に、一瞬息が止まってしまったのだ。
「な……!!」
 高史も負けず劣らず息を大量に飲み込んでしまっていた。
 さもありなんとでもいうべきか、突如、陸斗の背後から腕が伸びてきて、がっしりその両腕の中に陸斗を納めた―――その腕の持ち主が、目下の話題の渦巻きのど真ん中、加藤晴生本人だったのだから。
(わわわ……!!!)
 机と陸斗とを間に置いている割にはやたらと近距離に加藤の端正な顔が出現したため、何の構えもなかった高史の血圧は、一気に跳ね上がった。顔が真っ赤に染めあがる。
「おはよ〜」
 そんな高史のめ一杯の動揺なんぞに目もくれず、加藤は両腕に抱き締めた陸斗に満面の笑顔を差し向けた。
「昨日はよく眠れた? 俺なんか青木のこと考えてるだけで心臓痛くてさ、いや、マジはまってますよ、俺にしては」
 にこにこにこにこ、陸斗の数万倍の愛想に溢れた笑顔。腕の中に抱えた分、二人の顔は今にもくっつきそうに近かった。
「……ッ! 加藤、フザけんな……」
 極低温な陸斗の罵声にも何ら悪びれず、加藤はますます陸斗に顔を寄せる。
「怒った顔も迫力あってイイなー。うん、青木マジいい。ホント、俺のになってよ。昨日の返事、早く聞かせて」
「……加藤!!」
「何? 青木って声も悪くないよなー。イイ声。もっと聞かせろよ」
 耳元で囁くようにして告げる。
 思いっきり大迷惑と顔に書き殴った様子の陸斗といかにも愉しげな加藤。けれど、身長高くてスタイルも、顔だってイイ二人がそうやってると、ものすごい隔絶感が襲ってくる感じがして―――高史は、高騰した血圧がすうっと下がるような、そんな感覚を身に覚えた。
 それでも、そのままHRを知らせるチャイムが鳴らされて、加藤と陸斗の二人がそれぞれの席に帰っていく、そういう風にこの状況が終わってくれたなら、何とか耐えられたと思う。ぐっと歯茎を食いしばって、いろんな気持ちを耐えられただろう。
 でもその時、ふと気付いたように顔を上げた加藤が、ああ的場もいたんだって感じでにこっと口だけで笑って、「的場もおはよーな」って告げてきたのが、それがぐさりと心臓を貫いた。

「俺、帰るッ!!!」

 叫んだときには、お腹のあたりをぎゅって押さえながら、口では「頭痛いから」だとか口走りながら、鞄を握り締めて教室から駆け出していた。
(痛い、ホント痛いんだって……)
 お腹の奥。おへそのちょっとだけ上の方。中の何かが雑巾みたいに絞られたような痛みを訴えていた。
 その痛みが何なのか、自分が一番知ってる。
 お腹が痛くなるぐらいの猛烈な感情。 
 嫉妬だ。
(俺、嫉妬してるんだ……)
 走りながら、歯を食いしばりながら、高史はそう繰り返し続けた。



 



 コンコンってドアが鳴ったのは、そろそろ夕飯時かなというぐらいの時間帯だった。窓から見える景色は、夕暮れというよりは宵闇って感じに薄暗い。だから、室内はそれ以上にもっともっと暗くどんよりなっている。
「……」
 高史はベッドの上にひっくり返ったまま、のっそりとドアの方に目をやって―――そして、再びその顔面をベッドのシーツに押し付けた。返事をする気も起きなかった。
 そこへ、再度コンコンとドアが鳴らされる。先程よりは幾分か大きめの音。その音が8回目を数えた時、微かに「高史……」と呼び掛ける声が聞こえてきた。
「……っとけよ」
 小さく吐き捨てる。
 けれど、その小さ過ぎる声は扉の向こうまで届かなかったのか―――いや、たとえ届いていたとしても、そんな言葉だけで引き下がる陸斗とは思えない。いつもは遠慮会釈なく勝手に入ってくるドアを、ケンカした後だけこんな風に叩いてみせる。そんな時はいくら高史がへそを曲げてたって、いっそ根気強いってぐらいドアの前から貼り付いて離れなくて―――いつの間にかそんな状況に堪えきれなくなった高史がドアを開けて陸斗を招き入れる。そんなパターンが出来あがってるほどなのだから。
 しかし今回ばかりは勝手が違う―――違うんだぞとばかりに、高史はより深くスプリングに沈み込んだ。
(お前なんか……)
 ぎゅっと、お腹の中身を雑巾みたいに絞られたような痛みが走る。
 今朝、教室からようようにして飛び出して、家に舞い戻った。それ以来、ずっとベッドの上で苦しんでる。お腹も心臓も脳みそも目頭も、全部痛くてたまんない。
 全部、全部陸斗のせいだ。
 思ったとたん、じわっと目頭に熱が宿った。差し込むような痛みが腹部を襲う。高史は制服のままの上着を、掻きむしった。
「―――高史」
 そこへさらに、陸斗の低めの呼びかけがくる。お腹のそこまで伝導してくるみたいな、低い重低音。珍しいほどに息継ぎ早に、言葉を続けた。
「お前、なんかすげー勘違いしてるから」
 ドアの向こうってよりも、もっとずっと近いところで話しているように聞こえてくる陸斗の声。
(……知ってる)
 高史はおへそ辺りのシャツを引き絞った。
 その先に続く言葉なんか、とっくの昔にわかってる。わかっているのだ、高史だって。
 けど、でも、それでも。
 奥歯をかみ締める。そうじゃないと、嗚咽が喉から逃げ出そうとしていたから。何より、嗚咽にまぎれこむように、溢れ出してしまう黒くよどんだ感情に―――そんな感情を抱いているってことを、陸斗に気づかれたくなかったから。
(嫉妬してるんだぞ……)
 こんな風に、わざわざ心配して見舞ってきてくれる人に対して。親友に対して。
 高史はきつく目を閉じて、溢れるもの全てを塞ごうとした。けれど、ドアの向こうの声は高史の思いに反して、止まなかった。立ちはだかるドアなんて元からないみたいに、心からの言葉が投げかけられる。
「あのな……俺にとって加藤は本当にクラスメイトに過ぎないから。高史に遠慮してるとか、そういうんじゃなくて、本当にただのクラスメイトで―――そのことは加藤にもしっかり伝えてある。だから今日の加藤のああいう態度で、お前がどうのこうの苦しむ必要はない……っても、嫌な気持ちになるのは当然だろうけど。……でも、お前はお前の好きって気持ちを大事にしてればいい、それだけだろ? 加藤はああいう奴だけど、人の気持ちを無下にするようなことはしないだろ? だから好きになったんだろ、お前?」
 陸斗にしたら一週間分ぐらいの言葉を―― 一個一個の台詞はぶつぎれだけれども、高史を思いやってることだけはしっかりと伝わってきた。日頃饒舌じゃない分、その言葉にはめちゃくちゃ重みがあった。
 その重みは、高史の腹部にわだかまった澱みに波紋を描かせる。
 奥歯が擦りあうような擦過音を立てて、それからゆっくりと高史は口を開いた。
「なんで……オマエ、なんでそんななんだよ……!!」
 発音するのが苦しいぐらいの声音。喉の奥がすごく熱くなっていた。
「……高史?」
 その声に少し驚いたかのように、高史が身じろぎする音がした。
 でも、一度解き放った堰はもう修復不可能になっている。勢いづいたように、高史は言葉を吐き出した。
「俺なんか、め一杯嫉妬ばっかりで……頭ん中とかお腹ん中とか、ぐちゃぐちゃになってんだぞ!! なのに、オマエはいつだってそんな風に優しいし……俺、ホント自分のことばっかで、加藤がお前好きなのも当たり前なんだよ!」
 嗚咽と一緒くたの言葉は、多分、とんでもなく嫌な声になってるだろう。聞き触りなんか、最低最悪に決まってる。でも、それでも、勢いは自分ではどうする事もできないほどに強かった。
「しかもそんな風に気づいたのに、当たり前だってわかってんのに、俺なんかよりオマエのほうが加藤と似合ってるとかわかってんのに、それでもやっぱり嫉妬してんだ。サイテ−だ……サイテーだ!!」
 声を張り上げる。
(ああ、もう…マジ、サイテー……)
 嫉妬した挙句、こんな風に八つ当たりなんかしてる。最低の男だ。
 きっと陸斗もあきれてる―――あきれるに決まってる。そう思って、高史はのっそりと、再びその顔をシーツに押し付けた。何もかも最悪に思えた。喉のイガイガが、体全体を覆ってるみたいだ。いつの間にか室内も、完全な暗闇に包まれている。
「………だろ?」
 ドアの向こうからそんな囁きが聞こえてきたのは、たっぷり一分は経過した頃だった。あんまり小さな声だったので、高史は聞き取ることができなかった。それは陸斗もわかっていたのだろう、今度は割合大きな声で告げてきた。
「それだけさ…それだけ、高史の気持ちが強いんだろ? 加藤のこと、それぐらい好きってことだろ?」
 ―――なら、俺は別に構わない。
 陸斗は低くそう告げてくる。
 その声に、その言葉に、高史はとっさに手元のシーツを引き寄せ握り締めていた。
(……ッ)
 何でそんな風に考えられるんだろう。
 何でそんな風に言えるんだろう。
(加藤はやっぱり見る目がある……)
 本心からそう思った。陸斗はこんなにイイ奴で、見た目怖いっぽいのなんか、ほんとに見た目だけに過ぎない奴で。
 だから、それがわかってるから、加藤は自分じゃなくて当たり前のように陸斗を好きになった。
(ホント、当たり前なんだ……)
 そこへ、幾分か調子を変えた―――苦笑混じりの陸斗の声が届く。
「それに、さっきから言ってるけど、加藤はただのクラスメイトだっての―――似合いとか言われるとマジ参るから」
 それが本当に困ったような口調だったので、高史は思わず吹き出していた。わだかまった重たい気持ちも、喉のイガイガも全部吹き飛ばすような、そんな威力のある笑いは、その次の瞬間に訪れた。
「…参るって……!」
(そりゃ、いきなり男に熱烈に迫られたんだもんなー)
 普通、参るはずだ。加藤はあんな思ってみない反応を返してくれたけど―――けど、でも、加藤とか陸斗みたいな反応のほうがまだマシで、「気持ち悪い」って拒絶されても仕方ないぐらいなのだ。
 だから、自分は全然マシで、ものすごくラッキーで、そして何より、加藤のような見る目がある奴を好きになって、果報者なのだ。身近にこんな親友までいて、最低のはずがない。
 高史は一念発起とばかりにベッドから弾みをつけて立ち上がった。口元に浮かんだ笑みは、やっぱこーゆー展開になるわけだと、結局いつものパターンでドアを開けに行く自分に向けられている。
 けれど、悔しいとかそういう気持ちは一切なかった。
 ノブを回して、内側にドアを引き開ける。うまく笑えているかはわからなかったけど、今の精一杯の笑顔を顔に貼り付けて。ちょうど目線ぐらいに位置する陸斗の肩に、バシンと拳を突き立てた。
「よー、お節介」
 照れが、妙に声を上擦らせる。
 それでも告げないといけないことだけは、はっきりと言葉にした。
「まぁ、頑張るから、さ」
 オマエみたいになれるようにって、そういう本心は心の中でだけ口にして。
 上から髪の毛をわさわさ撫で回し始めた陸斗の指は、照れも合わせて思いっきり張り飛ばしてやった。


(03 10.16)





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