あなたの名は・・・ 第一章

 

 

「くそっ!  分断されるな!」
解放軍の先頭に立つシャナンが、大きな声を上げた。

暗黒教団の支配するミレトス地方に進撃したセリス率いる解放軍は、子供狩りに捕らわれた子供達を救うために、その子たちが集められているというミレトス城へ急行した。
しかし、ミレトス城に至る道には深い森が生い茂っていた。
そこに暗黒教団の軍 ベルクローゼンが展開していたのだ。
深き森の地形を利用して、解放軍を迎え撃つベルクローゼン。
森を掻き分け、四方から放たれる暗黒魔法や矢・・・
解放軍は、ベルクローゼンのゲリラ戦法に翻弄される。
次第に解放軍の諸隊は、それに対抗するために拡散していってしまった。


「はあああぁぁっ!!」
森の中を、収束した稲妻が走る・・・
「うがああぁぁっ!!!」
それが命中したダークマージは、断末魔を上げ、絶命した。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
一人の魔法戦士の姿に身を包んだ少女が呼吸を整える。
二つに分けて結わいている、長く、うすい紫の色が入ったシルバーブロンド。
白く透き通った肌・・・幼さを残してはいるが、可憐さと儚さをもった顔立ち。
すぐに壊れそうな脆さをもっていながらも・・・どこか芯の強さを感じさせる・・・
そんな少女だった・・・

その少女に話しかける声がした。
「ティニー! 大丈夫か?」
「セティ様・・・はい!大丈夫です」
セティに話しかけられて、少女は答えた。



彼女の名はティニ―。
フリージの祖 聖戦士トードの血を引く少女である。
かつて、ユグドラル大陸に戦乱をもたらし、そして自滅したレプトールの娘ティルテュの娘である。
彼女は今、帝国、そして自らの実家であるフリージ家に対して戦いを挑んでいる。
この世界を、暗黒神ロプトウスから救うために・・・自らの敵討ちのために・・・

彼女は、幼き頃は兄のアーサーや母のティルテュと共にシレジアにいた。
しかし、まだ赤子であった彼女と母ティルテュは、フリージ当主であったブルームに拉致されたのだ。
拉致され、アルスターに連れていかれた二人を待っていたは、苦悩に満ちた日々だった・・・
ブルームの妻、ヒルダは残忍で、権力欲の塊の女性であった。
彼女は、フリージ家に対して造反し、フリージ家の家名に傷をつけたティルテュと、その娘ティニ―が憎くてたまらなかったのだ。
ヒルダは彼女ら母子を虐待したのだった。
肉体的にも・・・精神的にも・・・
母ティルテュは、ティニ―を庇って、ひたすら虐待に耐えた。
幼き頃のティニーには、何故いつも、母が悲しんでいるのか、分からなかった。

長き虐待の苦痛は母ティルテュの体と心を、いたく傷つけていった・・・
そして数年後・・・ティルテュは息を引き取ったのだった・・・

一人になったティニ―を守るものは、なにもなくなってしまったかに見えた・・・
でも、そんな時に彼女を守ったのは・・・その加害者の子供達だった・・・
ブルームとヒルダの二人の子供・・・
イシュトーとイシュタルだった。

彼らは母や父に似ず、聡明で、気高く・・・そして優しい心の持ち主だった。
二人は・・・ティニ―の事を本当の兄妹のように思っていた。
ティニーには二人と同じ血が流れているのだから・・・
例え・・・それがフリージの裏切り者の娘であったとしても・・・
そんな事が、ティニ―に対する恨みや、蔑みになる事はなかったのである。

彼らも実の両親に表立って反抗はしなかったが、それでも知恵を振り絞って、ティニ―を守る事に奔走していたのである。
そんな二人に・・・ティニーは心を開いていった・・・

ヒルダの事もあり、決して幸せとは言えなかったが、それでも・・・心から笑い合える家族に等しい人たちと、一緒にいる事ができたことは、ティニーにとって嬉しかった。


しかし・・・それも終える時がくる・・・
成長した3人は、フリージ家の一員としての役目を負わされたからだ。
イシュトーは帝国と北トラキア、そしてイザ―クを結ぶ交通の要所メルゲンの太守に・・・
イシュタルは、聖戦士トードの聖痕が現れたため、将来的にトールハンマーを引き継ぐ事になり、その実力も評価されて、フリージの精鋭魔法騎士団ゲルプリッターの総司令官に・・・
そしてティニーはブルーム直属の魔道士部隊の隊長になった・・・

この頃になると、ヒルダは暗黒教団に近づき、その中で地位を固めて、教団の支配するミレトス地方の支配を任されていたのだ。

本当なら、これから安心できる生活ができたのかもしれない・・・
でも、既にイシュトーとイシュタルはそう簡単に会えなくなってしまっていたのだ。
また・・・孤独になってしまったティニーであった。


そして・・・再びの聖戦・・・
イザ―クを解放した光の皇子セリス率いる解放軍は、イード砂漠を越え、大挙してメルゲンに押し寄せたのだった。
この戦いで、イシュトーは戦死した。
ティニ―は悲しんだ。でも、イシュトーを殺した解放軍を素直に憎む気持ちに慣れなかった。
既に、大陸全土で、圧政に・・・子供狩りに苦しむ人々が決起している事を知っていたから・・・
自分たちが…非道な行為の手助けをしてしまっている・・・との自覚があったから・・・
彼女は、悩んでいた。

そして、ティニ―も解放軍と相対する事になったのだが、そこでは出会いがあった。
彼女の実兄、アーサーであった。
戦いの中で出会った二人を結びつけたのは、母ティルテュの形見のペンダントだった・・・
アーサーも、そしてティニーも同じ物を身につけていたのだった。
彼らは…お互いが、血を分けた兄妹である事を知った。

そして・・・自分と母が、無理やりブルームに連れ去られた事を知った。
いつも悲しそうだった母の姿を思い出す・・・
そして、その母をいつも苦しめていたヒルダの姿も・・・
彼女は、非道な行為を行う帝国を・・・そして母を死の追いやったヒルダを討つことを決意したのだった。

そして・・・今、彼女は解放軍の一員として戦っている。




「このあたりの敵は、一掃できたみたいだ。」
セティが周りを見渡しながら言った。
今まで、波状的に加えられてきた攻撃は、今は止んでいた。
「セティ様、大丈夫ですか? 傷などはありませんか?」
ティニーがセティを気遣う。
「私は大丈夫だ。それよりティニーは大丈夫なのか?」
セティは逆に問いかける。
「私も大丈夫です。」
ティニーが返した。
「良かった・・・ティニーに何もなくて・・・」
セティは安堵する。
(セティ様・・・私を心配してくださるのですね・・・)
ティニ―の頬が少し赤くなった。
そして・・・言った当人も、少し恥ずかしかったのか、同じように顔を赤くした…


セティとティニーは・・・お互いに、ほのかな感情を抱いていたのだ・・・
二人は、トラキアとの間に緊張が高まるマンスターで始めて出会った。
一人で、マンスターをトラキアの竜騎士団から守った青年を見た時・・・ティニーは胸が熱くなっていく事を感じた。
しばらくしてから、彼女はセティと話す機会があった・・・ミーズ城でしばらく待機している時だった。
食事の後、城壁で夜風に当っていたティニーは、同じく涼みにきたセティと二人きりになったのだった・・・
二人は・・・家族の事や、悩みについて話しをしてみたりした。
セティは真剣な眼差しで、ティニーの話しを聴いてくれた・・・そして真摯に色々な答えを返してくれたのだ。
今まで、色々な悩みを抱えていたティニーにとって、それはとても嬉しい事だった。
この時かも知れない・・・ティニーがセティを意識し始めたのは・・・

また、セティも、この薄幸の少女に対して、少し意識を寄せていた。
しばらく共にいるうちに・・・彼女の隠された魅力に気づき始める・・・
笑うと、とても可愛いことや・・・内に秘めた強さと優しさを・・・

まだ、お互いに気持ちは伝え合っていないが、それでも互いを大事な存在として見ていたのである。



「他の皆が心配だ。我々も早く合流しよう・・・」
既に、二人は本隊と離れ離れになってしまっていた。
「あっ・・・ちょっと待ってください。」
ティニーが歩き出したセティに呼びかける。
振り向くセティ。
「この先に村があるみたいなんです。この混乱の中で、もしかしたら盗賊に狙われているかもしれません・・・ 私、様子を見ています。」
この地域は暗黒教団の好き勝手の為に、治安が酷くなっていた。
この戦いに乗じて、付近の盗賊が動きだしているかもしれないことを危惧したのだ。
「一人で?」
「はい セティ様は先に行って、他の皆様を助けてください。」
セティは不安を口にした。
「大丈夫なのかい? いくら敵がいなくなってとはいえ、まだどこに隠れているかもしれない。 一人では危険じゃないのか?」
セティは一人で行動しようとするティニーが心配だった・・・
「少し・・・不安です。でも、他の場所では仲間が苦戦しているみたいです。フォルセティの力を受け継ぐセティ様の力が必要でしょう。」
「ティニー・・・」
「それに私も聖戦士トードの血を受け継ぐもの・・・賊になんて負けません。」
確かに彼女は見違えるほど成長した。
雷魔法の腕は日増しに高まっていたし、魔法戦士として様々な能力を身につけていっていた。
今や、セティや兄アーサーと共に、解放軍の魔法戦力の中核となっていたのだ。
確かに・・・盗賊ぐらいが、今の彼女を倒せるはずはないのだが・・・
「分かった・・・では、先に行っている。 ティニー・・・気をつけるんだよ・・・」
セティは了承した。
「はい。では、後でまた・・・」
そう言うと、マントを翻して、彼女は北に向かって走っていった。
(ティニ―・・・本当に凛凛しくなったんだな・・・)
セティは彼女の後姿を見ながら・・・
(でも・・・この消え去らない不安は・・・)
言い知れぬ不安に駆られていたのだった・・・




ティニーの予想通りだった。
村では、数人の盗賊が村を襲っていたのだ。
民家に押し入り、略奪を繰り返す盗賊達・・・
そこにティニーが到着した。
村に入ってきたティニーを見た盗賊達は、「うへへっ・・・いい女だ!」とか言いながら、彼女に襲いかかろうとした。
しかし、その時彼女は威嚇でエルサンダ―を放った。
盗賊達の目の前に炸裂した雷・・・
それを目にした盗賊達は、戦意を喪失し、無我夢中で逃げていった。
村を救ったティニーは村人に感謝され、再び仲間たちと合流しようと村を後にした・・・



来た道を戻っていくティニー・・・
先ほど、ダークマージを倒した地点に差し掛かった。
その時だった・・・

森の奥の暗闇の中に、殺気を感じたのは・・・
「!?」
咄嗟に暗闇に向かって身構えるティニー。
(・・・誰か・・・いる・・・)
暗闇の中に何者かの存在に気づいた。

ティニーが見つめる先の暗闇から声が響いた。
「反乱軍だな・・・死んでもらう!」
「!?」
驚愕するティニー。
(その声は!!)
聞き覚えのある、この懐かしい声は・・・

声の主は姿を現した・・・
「!?・・・なんだと!!」
現れた声の主もティニ―の姿を確認した途端、驚愕している・・・
それはティニーも一緒だった。
お互いに、よく知っている人物だったから・・・

「イシュタル姉様!!」
「ティニー・・・」
暗闇から現れたのは・・・イシュタルだった。
ティニーが幼き頃より共にいた女性で、今や、彼女と昔の思い出を共有する事ができる唯一の人物・・・
そして・・・ティニーが姉と慕うことができる存在だった。


(まさか・・・あなたが現れるなんて・・・)
ティニーが目の前に現れた事に、イシュタルは悲しみに襲われた・・・
ティニーが反乱軍に身を投じたことは知っていた。
イシュタルが最初に反乱軍と戦った時は、彼女と遭遇する事はなかった。
その事に、イシュタルは安堵していたのだが・・・

だが、この状況で・・・こんな形で再会する事になるなんて・・・


「イシュタル・・・姉様・・・」
ティニーは、イシュタルに何を話し掛けて良いか分からなかった・・・
今、彼女はイシュタルの敵となっているのだから・・・
フリージを裏切った自分・・・
そして・・・フリージの指揮官でもあり、グランベル帝国の皇太子であるユリウスに尽くすイシュタル・・・
お互いに相手の事を思う感情を無視して、合い入れぬ関係になってしまっていたのだ。

イシュタルもティニーに話しかける言葉を見つけられずにいた。
この・・・自分の従姉妹の少女に対して・・・
今・・・彼女の敵になった自分が、何を話しかけられるというのだろう・・・
こんな・・・魂を悪魔に売ってしまった自分が・・・


お互いに微動だにしない時間が流れた・・・
この場所だけ、時間が止まったように思えた。
しかし、その静寂を破る声が響き渡った・・・

「イシュタル・・・何をしている?」
恐ろしいほど、冷たさを帯びた声が辺りに響いた。
「!!」
イシュタルは、背筋が凍るような感覚を覚えた。
ティニーもその声に聞き覚えがあった・・・
たしか・・・子供の頃に一度訪れたバーハラ王宮で・・・

暗闇から、一人の青年が現れた。
燃えるような赤い髪を靡かせた青年が・・・

「ユリウス様・・・」

イシュタルは・・・小さな声で、彼の名を言った・・・

ユリウス・・・
皇帝アルヴィスとディアドラ王女の息子であり、暗黒神ロプトウスの生まれ変わりである青年で・・・解放軍最大の敵である男だった。

「そんな・・・ユリウス・・・殿下・・・」
ティニーもユリウスと昔、会った事はあったのである。
その時は、まともに話すことはなかったが・・・

ティニーは背筋が凍ってしまった。
今、目の前にいるのは暗黒神の化身なのだから・・・

「・・・どうしたのだ? イシュタル・・・その女を殺さぬのか?」
「!?」
イシュタルは、自分がここにいる理由を思い出した。
(そうだった・・・)
今、イシュタルとユリウスは『遊び』をしていたのだった・・・
・・・どちらが先に、解放軍の戦士を血祭りにあげるかという・・・
人の命を弄ぶ遊びを・・・
そして・・・今、彼女の目の前にはティニーがいる・・・
(そんな・・・そんな・・・)
イシュタルは恐れおののいた。
遊びの標的になってしまったのは、自分の従姉妹の少女だったから・・・
(・・・なぜ・・・よりにもよってティニーなの・・・)
イシュタルは悲しかった。

「どうしたんだ? イシュタル・・・勝ちたくないのか?」
ユリウスはイシュタルにけしかける・・・
(私は・・・ティニーを殺せるの?)
悩むイシュタル。
自分の本心は知っている・・・
この妹同然の少女を殺したくない・・・
それが、イシュタルの飾らぬ本心だった。

(・・・でも・・・今の私は・・・)
悩むイシュタルを尻目に、ユリウスは喋る。

「なら・・・この女は私が頂こう・・・」
ユリウスはティニーに向かって歩き出した。

「いや・・・いや!」
ティニーは後ずさる・・・
圧倒的に力の差があるのは、ティニーにも分かっていた・・・いや感じていた・・・
不敵に笑いながら、ティニーに迫るユリウス。
「来ないで!」
ティニーはユリウスに向かってトロンを放つ。
雷の光線がユリウスに向かっていく・・・

しかし、ユリウスの体の周りに暗闇の靄がかかり、そのトロンは暗闇に吸収されてしまう・・・
「!!・・・そんな・・・」
それは、ユリウスがロプトウスの力を解放した結果だった・・・
今のユリウスには全ての攻撃が抑えこまれてしまうのである。

「・・・どうした?・・・もう抵抗しないのか?」
ユリウスは笑みを浮かべる・・・悪魔のような笑みを・・・
ティニーは、その笑みに死の予感を感じた。

「・・・では・・・こちらからいくぞ・・・」
ユリウスは宣告した。
その瞬間、ユリウスの周りを覆っていた暗闇の靄が変化し始めた。
何かを形をとり始めたのだった・・・
「!?…ああっ!!」
ティニーは恐怖に包まれる。

ユリウスの頭上に、暗黒の竜が現れたのだ・・・
「・・・死ね・・・」
暗黒の竜は、ティニー向かって突き進んでいった・・・

ティニーは動かなかった・・・いや、動けなかった。
圧倒的な何かの為に・・・
自分に襲いかかろうとする竜を、凝視するティニー・・・
(セティ様!!)
彼女は、目をつぶり・・・自分が想いを寄せる男の名を叫んだ。


その時だった。

ティニーの横に巨大な雷球が現れたのは・・・

ビリリリリリリリリイイイイイッ!!!!
「キャアアアア!!」
ティニーはすぐ横に現れた雷球の衝撃波で吹き飛ばされた。
吹き飛んだ彼女の体は、大木に打ちつけられたのだった。

ボコッ!
「!!・・・カハッ!」
背中から叩きつけられたティニーは、そのまま地面に落下した。
そのまま動かなくなるティニー・・・
そのため、ユリウスがティニーに向かって放たれた暗黒の竜は、森の奥へと消えていった。

「ユリウス様、私の勝ちですね。」
イシュタルはユリウスに向かって言った。
ティニーを襲ったのは、イシュタルのトールハンマーだった。
それをティニー向かって放ったのだった。
・・・直撃はしなかったが・・・

「・・・・・・」
ユリウスは黙っていた。
彼にはイシュタルの考えが分かっていたからである。

イシュタルはこの少女を自分のロプトウスから守ったのである。
トールハンマーで彼女を弾き飛ばし、強制的に避けさせたのだった。
(素直ではないな・・・イシュタル・・・)
心の中で、呟くユリウスだった。

「そうだな・・・お前の勝ちだ。」
ユリウスがイシュタルの勝利を認めた。
「では帰りましょう。ユリウス様。」
イシュタルは安堵した。
ティニーを殺す事がなくて・・・

「いや・・・この女を連れて帰ろう・・・」

「・・・えっ?」
イシュタルは、ユリウスの言葉を聞き逃しそうになってしまった。
「ユリウス様・・・今なんと・・・」
「まだ、この女は息があるのだろう。連れて帰る。捕虜としてな・・・」

(ユリウス様は・・・全てお見通しだった・・・)
イシュタルは自分の行動の真意がユリウスに知られていたことに、半ば驚いた。
いや・・・ユリウスなら気がついて、当然なのかもしれない・・・

「ユリウス様。・・・それは・・・」
口がにごるイシュタル。
しかし、構わずユリウスは続けた。

「それでは帰ろう・・・バーハラに・・・」
ユリウスはそう言うと、印を組む。
途端に気絶しているティニーの体が光に包まれた。
そして、光の玉と化して、天空に向かって飛んでいった。
「あっ・・・」
イシュタルがユリウスに何も言えないまま、既にティニーは転移させられたのだった。
イシュタルはティニーが消え去った空を見つめていた。
「私たちも帰るぞ。」
ユリウスとイシュタルの二人も光に包まれる。
「今日は楽しかったな・・・イシュタル・・・」
そんな事言うユリウスを尻目に、イシュタルは一人悩んでいた。
我々の捕虜となったティニー・・・
このまま、無事で済むとは思えなかったから・・・
そのときに・・・
(その時に・・・あなたはどうするつもりなの?・・・イシュタル・・・)
自分の妹同然の少女が危機に陥ったとき…彼女の敵である自分はどうするのか・・・
愛する人と、家族同然の少女との選択に・・・

悩みながら・・・イシュタルもバーハラへ帰還していった・・・








ドガッ!!

ミレトス城の中庭に鈍い音が響いた・・・

拳がセティを襲う。
セティが吹き飛び、そのまま地面に尻をついた。

「クッ・・・」
セティの口から、うっすらと血が流れた。
そのまま、セティは自分を殴った男を見あげた。

「セティ!  お前程の男がついていながら・・・どうして・・・」
アーサーがセティに詰め寄る。


あの後・・・ミレトス城の戦いで、解放軍は勝利を収めた。
しかし、ただ一人・・・ティニーだけは帰ってこなかったのだ。
その後、森の中を隈なく探したが、結局見つからなかった。

そして・・・付近の村人から、ティニーらしき少女が魔道士らしき二人に連れ去られたとの話を聞いたのだった。

ティニーの兄アーサーは、直前まで一緒にいたセティを責めているのだった。
「お前は、フォルセティの継承者なのだろ! どうして妹を・・・ティニーを・・・守れなかったんだ!!」
セティは・・・何もいえなかった。
「どうして・・・一人にしてしまったんだ!」
さらにセティに掴みかかるアーサー・・・

「やめてアーサー!! お兄ちゃんを責めないで!」
また振り下ろされようとした腕を、フィーが必死で止める。

「でも・・・セティがティニーの傍を離れなければ!」
アーサーは声を荒げる。
「もうやめて! あなただって分かっているでしょう! 一番辛いのは、セティお兄ちゃんだってことを・・・」
フィーは涙を流し、アーサーを止めながら・・・その事を言った。
「・・・・・・」
アーサーは何も言わなかった・・・いや、言えなかった。
ティニーとセティが、互いを意識していることを知っていたから・・・

セティがゆっくりと立ち上がった。
「アーサー・・・ティニーが連れ去られたのは、私の責任だ・・・全て・・・許されるものではない・・・」
セティは、全ての責任を感じていた。
大事な人を連れ去られた責任を・・・

「・・・だから・・・私は彼女を助け出す! 絶対に・・・」
アーサーとフィーに宣言するセティ・・・

(・・・そう・・・絶対に・・・)









バーハラに帰還したユリウスとイシュタルは、捕らえたティニーを地下牢に入れ、ユリウスの自室で話をしていた・・・

「ユリウス様・・・お話があるのですが・・・」
イシュタルが申し訳なさそうに切り出した。
「何だ?  イシュタル・・・」
椅子に座っていたユリウスは、イシュタルに顔を向ける。
「地下牢に捕らえたティニーの事です。お願いがあるのですが・・・」
「あの女に危害を加えるな・・・ということか?」
「・・・はい・・・そうです。」

(この方には・・・隠し事ができない・・・)
自分の考えが、全て見透かされているような気がしてしまう。

「だが、あの女は、我々を裏切った敵だ。どの様な目に遭っても仕方ないのではないか?」
ユリウスは突き放したように言った。
ユリウスにとって、ティニーはフリージ家の一員で、グランベル帝国に造反した魔道士の少女・・・というぐらいの認識しかなかった。
ティニーという名の少女が、ユリウスの目の前にいる女性にとって、どれほどの存在なのか・・・
ユリウスはその事を考えもしなかった。
だから、なぜイシュタルがティニーにこだわるのか、理解できなかった。

「イシュタル・・・お前が、何であの女に情けをかけるのかは分からないが・・・しかしあまり情けをかけるな。 あれは敵なのだから・・・」
ユリウスは、イシュタルがあの少女に気をかけることが、あまり気に入らないみたいだった。

「でも・・・ティニーは私の・・・」
(私の・・・大事な妹みたいなものなのです・・・)

イシュタルにとって、今やティニーは昔の思い出を共有できる、ただ一人の存在だった。
共に育ち、共に語り合い、共に大切と思っていた・・・
その少女の心配をしないわけにはいかなかった。

「・・・ふんっ・・・私にとっては、どうでもいい事だがな・・・」
あまりユリウスは、ティニーのことが眼中になかった。
彼女を連れ帰ったのも、ある意味、イシュタルに対する当てつけみたいなものが含まれていた。
この少女を助けたイシュタルに対する・・・

「それより、イシュタル! バーハラに連れてきた子供達を選別するのはどうしたのだ?」
イシュタルは、各地で子供狩りによって集められた、子供の管理をユリウスから任されていたのだ。
これから、子供たちに様々な「試練」を与えるために、ある程度グループに分けておこうとしているのだ。
本心では、子供狩りに反対しながらも、それに従っているイシュタル・・・
全ては、ユリウスが望むことだから・・・

「ユリウス様・・・いいえ、まだ終わっていません。」
うつむきながら答えるイシュタル。
「イシュタル・・・まずは自分に課せられた義務を果たせ。」
ユリウスはイシュタルに言い放った。
「ですが・・・」
「イシュタル!」
「・・・」
ユリウスの声が強ばった・・・
その途端、イシュタルは何も言えなくなってしまった。
そう・・・イシュタルはユリウスに、いつも何も言えなかった。
子供狩りのときも・・・ティニーの時も・・・

「行け、イシュタル・・・話はそれからだ。」
「・・・分かりました・・・」

結局、イシュタルはユリウスに何も言えなかった。
ティニーの安全を確保したいとの思いを口することができなかった。
言わなければ、相手に意思を伝えることはできないのに・・・

結局、イシュタルは、ユリウスの部屋を後にすることになった。




イシュタルが去った後・・・ユリウスの部屋を訪れる者がいた。
「ユリウス殿下! あのティニーを捕らえたとの話を聞きましたが!」
それは、イシュタルの母、ヒルダだった。
走ってきたのか、息を切らしてまでいた・・・
「その通りだ。 ヒルダよ・・・何をうれしそうな顔をしているのだ?」
ユリウスはヒルダの顔を見やった。明らかに笑みを浮かべていた。
その目は狂気の色が浮かんでいる。

「ユリウス様、あの女には恨みがあります! 私にあの女に罰を与えること事をお許しください。」
「・・・? 何故だ? あの女を恨んでいるのか?」
ユリウスは今までフリージ家の内情に興味がなかったので、ヒルダがティニーを恨む理由や、今までヒルダが何をしてきたのかを知らなかった。

「はい! あの女は、我がフリージ家に大恩があるにも関わらず、フリージを裏切り、夫を殺すのに手を貸したのです。 その仇を取りたいのです。」
ユリウスに頭を下げるヒルダ。
ヒルダは、もっともらしく口上でユリウスに申し立てる。
「・・・ふんっ・・・」
ユリウスは頭を下げているヒルダに冷ややかな視線を送った。

この女が、亡き夫の敵討ちなど行うはずがない。
ブルームが追い詰められていた時、自分は悠々とミレトスで豪遊していたのだから・・・
ただ、この女がティニーをいたぶる理由は、己の狂気と欲望を満足させるためだというのは、ユリウスには分かった・・・

だが・・・
「・・・分かった・・・好きにしろ。」
ユリウスはヒルダに許可を出した。

ユリウスにとって、このヒルダが何をしようと、あのティニーがどんな目に遭おうと興味はなかったからである。

いや・・・むしろ、ティニーに対して・・・


「ありがとうございます! ユリウス殿下!」
許しをもらったヒルダは、嬉々として地下室に向かっていった。

ヒルダが出ていったドアを眺めるユリウス・・・
その時、ユリウスは、ふと疑問が湧いた。

(今ここに、イシュタルがいたら・・・どんな反応をしたのだろう・・・)

ロプトウスの化身であるユリウスには・・・想像できない疑問だった。





ヒルダは早速、3人の男たちを連れて地下室へと向かった。

(愉快だね・・・あのティニーを苦しめることができるんだから・・・)
ヒルダは、生前のティルテュを嬲り者していた時の記憶を甦らせた。
(また、あんな楽しい事ができるだなんて・・・うれしいね・・・)
歪んだ心をもった人間が・・・ティニーの元に向かった。



ギギイィィィ〜
ヒルダ達は、ティニーのいる地下牢に入った。

「!?・・・あなたは!」
中には、ティニーがいた。

彼女は、両手・両足を鎖によって拘束されて、石畳の上に転がされていた。
マントや腰に吊るされていた剣も外されていた。

「ほほほっ・・・! いい様だね・・・ティニー・・・」
ヒルダはその姿をみながら、愉快そうに言う。
続いて入ってきた男たちも、ティニーの姿を嘗め回すように眺める。
「どうだい?・・・裏切り者のお前が、我々の捕虜になった気分は?」
「・・・・・・」
ティニーはヒルダの問いかけに答えない・・・
目線を外し、そっぽを向くティニー。
その態度が、ヒルダの神経を刺激させる。
「ふん・・・気に入らないね、その態度・・・まあ、いつまでそんな態度が続くか楽しみだけどね・・・」
ティニーは、ヒルダを睨みつける。
「ヒルダ!・・・あなたになんか負けない!」
「ふんっ・・・お前がどこまで耐えられるのか・・・本当に楽しみだよ・・・」
ヒルダはその言葉を発すると、3人の男がティニーを取り巻く。

「な・・・なにっ?」
屈強の男たちの囲まれ、ティニーは不安な表情を浮かべる。
男たちは、ただニヤついている・・・

「・・・はじめな・・・」
その言葉で、男たちは彼女に襲い掛かり始めた。

「そんな・・・いや・・・いやっ!・・・やめてえええぇぇっ!!!」

地下牢に、ティニーの悲痛な声が響き渡った・・・




身動きのとれないティニーを座らせる男たち。
その状態のティニーに・・・
「オラ! 咥えるんだよ!」
「いや!・・・いやあ!!」
一人の男が、ティニーの髪を鷲掴みにし、顔を強制的に持ち上げる。
その目の前に、男の欲望を突きつけたのだった。
醜く・・・どす黒いものを・・・

(・・・あれが・・・男の人の・・・)
男の物をはじめて見たティニーは、そのおぞましさに目を逸らしてしまう。

「口に入れて舐めんだよ!」
顔を逸らすティニーを無理やり正面に向かせ、口に含ませようとする・・・
(こんな・・・もの・・・いや)
しかし・・・ティニーは頑なに口を閉ざし、進入を防ごうとする。
「開けるんだよ!口を!」
男は、ドスの利いた声で脅す。
しかし・・・ティニーは開けない。

「だったら・・・」
別の男がティニーの背後に迫った。
そして・・・服の上からティニーの双丘を掴んだのだった。
その瞬間、ティニーの体に電流のような刺激が走った。
体が・・・ビクンッ! と反応する・・・

「へへっ・・・可愛い胸じゃないか・・・」
後ろからティニーの胸を撫で回す男が、うれしそうに言う。
男が、服の上から揉み回すことのよって、服の胸の部分が妖しく歪んでいく・・・

「・・・うっ・・・んっ・・・」
(・・・やめて・・・やめてよ・・・気持ち悪い・・・)
口を開けることができないティニーは、その不快感を声にすることができなかった。
しかし、男は胸を揉む力を、段々強めていく・・・
その度に、ティニーが受ける刺激が大きくなってくる。
その刺激に、声をあげてしまいそうになる・・・
でも、口を開けたら・・・あの醜いものが・・・

「口を開けて、そいつの物を咥えなって・・・」
後ろから胸を揉む男は、撫で回すようにティニーの胸を擦る・・・
そして、服の上から、ティニーの乳首の位置を特定すると、それを人差し指と親指で摘み上げた。
「!?・・・ああっ!!」
服の上から乳首を摘まれたティニーは思わず声を上げてしまった。

その瞬間、声が洩れた口に、男の剛直が挿入されたのだった。

「・・・ぅっぐ!・・・うんっ・・・」
いきなり喉の奥まで、挿入されるティニー・・・

「やっと入ったぜ・・・おい、歯を立てるなよ! 立てたら承知しねえぞ。」
男はティニーに対して脅しを言うと、彼女の頭を両手で抑え、イマラチオを行わせる。
「・・・うっ!・・・うっ!・・・うんっ!・・・」
頭を前後に動かされ、何度も自分の喉の奥に男根を受け入れさせられるティニー・・・
「すげえ!・・・こいつの口の中・・・マジに気持ち良いぜ・・・」
男は、さらにティニーの頭を激しく前後させる。
「ううっ!・・・ううん・・・うぐっ!・・・うっ・・・ぅぅぅううん・・・」
何度も・・・何度も口内を犯されるティニー。

「では、俺のも気持ち良くしてもらおうか・・・」
最後の一人も、自分の剛直をズボンから取り出す。
そして、前で鎖によって両手首を拘束させられているティニーの腕を掴んだ。
その手のひらに自分の物を置く・・・
「オイ! 俺の物をその手で気持ち良くしてくれよ。」
そう言うと、男は、ティニーの手の中に自分の物を握らせた。
そして、しっかり握らせると、その手の上から自分の手で前後に揺らせる。
(・・・なに?・・・いや・・・いやああぁ!)
強制的な手コキを行わさせられるティニー・・・
男の物を握らされ、激しい嫌悪感に襲われる。
「あははははは!・・・どうだいティニー?・・・男たちに奉仕をする気分は?」
傍から、嬲られるティニーに言葉を投げつけるヒルダ。

「こいつ・・・手もなかなか良いぜ。この小さな手が、俺の物を愛撫している・・・」
自分の物を握らせている男は、漏らすように言った。
「なかなか・・・ティニーちゃんは男を悦ばすいい才能をもっているみたいだな・・・」
後ろから、ティニーの胸を揉みまわす男がティニーに言う。
「・・・それでは・・・直に・・・」
胸を嬲っていた男は、彼女の服の胸元に両手を掛けると、一気にそれを左右に引き裂いた。

ビリビリィィッ!!!
「!!」
(いやっ!)
彼女の服が左右に破れ、その合間から彼女の小ぶりの乳房が露出する。
大きくはないが、しっかりと形を保ち・・・張りのあるみずみずしい胸だった。
「可愛いの持ってるじゃないか・・・」
背後の男は、ティニーの胸を直接責める・・・
力強く揉み回し、撫で回し、時には上下に激しく揺さぶる・・・
「・・・うっ・・・うん・・・うぅっ!!・・・」
「残念だね・・・お前の快楽の悲鳴を聞くことができなくて・・・」
ヒルダは・・・口に含まされ、くぐもった声しか出せないティニーを見下して言った。
男は、さらに彼女の乳房の頂を責める。
乳首を、人差し指でつぶしてみたり、また摘んで擦りあげたりする男の手・・・
(・・・やめて・・・そんなこと・・・しないでぇ!)
口で喋ることができないティニーは、心の中でむなしい嘆願をする・・・


「おいおい・・・口が休みになってるぞ!・・・」
口に挿入している男が、ティニーの意識が自分に向いていないことに腹を立てた。
さらに彼女の頭を押さえ込んでいる手に、さらに力を入れて前後に激しく動かす・・・
「うっ!・・・ぐっ・・・ぐうぅ!・・・」
あまりの激しさに、咽返りそうになる・・・
「少しは舌を使えよ。・・・俺ばっかりに働かせるなよ・・・」
男は、ただ挿入することに飽きたようだった。
しかし、これでも十分すぎるほど気持ちが良いので、動きを止めることはないが・・・

ティニーの手を持ち、自分の物を奉仕させる男も動きを加速させていく・・・
醜く、生暖かい感触の剛直を握らせられることは、ただの精神的苦痛でしかない。
でも男にとっては、この可憐な少女が自分の物を握ってくれているだけで、至高の喜びを感じていた。
もちろん、ティニーが望んでいるわけではない。
男にとって、これは極上の自慰なのだから・・・


(・・・いやだ・・・こんなの嫌!・・・)
男の物を口に含まされ、手で男の物を奉仕させられ・・・そして、自らの胸を蹂躙されるティニー・・・
あまりの屈辱に挫けそうになる。

でも、負けたくなかった・・・
この・・・自分を虐待し、母の命を奪い去ったヒルダに・・・
ティニーは、離れたところから自分に狂気の目を向けているヒルダを睨みつけた。



「では・・・ここも楽しませてもらおうか・・・」
胸を責め立てる男が、いきなり左手を彼女のスカートの中に手を差し込んだ。

「!?」
いきなり、男の手が自分の股間に入れられたことに驚くティニー。
男は、ティニーの下着の上に手を置く・・・
そして・・・中指で彼女の秘裂を下着越しに擦り始める。
(・・・やめて!!・・・そんなところ触らないで!!)
「ふふふっ・・どうだい?・・・ここを触られる気持ちは?」
右手で彼女の右乳房を揉み回しながら、左手で彼女の秘所を責め始める男・・・
下着の上をなぞるように動き回り、また下着を膣口に押し込むように指を突き立てる。
「ううっ!!・・・うううぅぅぅう!」
誰かに触れられたことも、自分で触ったこともない場所を弄られていく・・・
抗おうにも、体は完全に拘束されており、また声も上げることもできない。

「まだ濡れてはいないみたいだな・・・あれだけ胸を嬲ったのに・・・」
男は、ただひたすらに胸と股間を責めて・・・ティニーに刺激を与え続ける・・・



「俺・・・もうそろそろ・・・」
自分の物をティニーに握らせていた男が、そんな言葉を発した・・・
男の手を動かすスピードがどんどん速くなっていった。
(えっ?・・・一体なにを?)
自分の手が・・・男の男根を擦り上げる・・・
その速さが上がっていくことに・・・ティニーは不快感を増幅させられていった。
固さが増していく男の剛直・・・
そして・・・

「うっ!!・・・でる!」
男は切羽詰った声を出した。
その瞬間・・・男の男根が、ティニーの手の中でビクビクと震えた。
そして・・・
(!!・・・なに?・・・これ!?・・・)
彼女の握らされていた物の先端から、熱く・・・ドロドロしたものが出てきたのだ。
それは、ティニーの指と指の間から・・・白い欲望が零れ落ちる・・・
「・・・ふううぅぅ・・・」
男はティニーの手を解放する。
ティニーは、すぐに男の物を離す。
しかし・・・彼女の手の平はべとべとし、異臭のする物が、汚していた。
(嫌だ!・・・気持ち悪い!)
男の欲望に汚されて、激しい嫌悪感に襲われる・・・

「どうだい?ティニー、男の精液に汚された気分は?」
(・・・これが・・・男の人の・・・)
初めて、男の精液を目の当たりにするティニー・・・



「その汚いやつを・・・今度はこの口の中に放ってやるよ」
口に挿入している男は、今度は自分でも腰を使い始める・・・
今までより速く・・・今までより強く・・・
男の股間に押し付けられるティニーの口・・・ティニーの口にひたすら挿入される男のイチモツ・・・
「うううっぅぅ!!・・・ううんんっ!・・・ぬう・・・」
あまりに激しい挿入に・・・ティニーの口は悲鳴を上げる。
しかし、挿入される度に口の端からは唾液が行き場所もなく、零れ落ちる。

「なんだい・・・はしたない女だね〜・・・涎なんか流してさ・・・」
ヒルダは、ティニーの無様な姿をうれしそうに見ていた。


「こっちも、濡れてきたみたいですよ・・・ヒルダ様」
ティニーの背後の男が、ティニーの変化を告げる・・・

そう・・・ティニーの下着には・・・染みが浮き上がっていた・・・
(そんな・・・どうして・・・)
ティニーは自分の変化を理解できなかった。

長く・・・胸と秘所を責められていたティニーは、少しずつだが・・・感じ始めていたのだ。
「あはははははっ!!ティニー・・・感じ始めたのかい?・・・愉快だよ・・・あのお前がね・・・」
ヒルダは、ティニーが少しずつ堕ちていくことが、楽しくて仕方なかった。
あの女の娘が・・・
あの女と同じ目に遭って、同じ様に堕ちていく・・・
こんなに愉快なことはなかった。
これだけ苛め甲斐のある母子を、二人とも陵辱することができて・・・
(そう・・・お前達は、あたしの玩具なんだよ・・・親子揃ってね・・・)

「ううっ!・・・ううぅぅううん・・・うはっ!・・・」
(・・・私・・・へん・・・体が・・・)
揉みしだかれる胸と、擦られ、嬲られる秘所は、ティニーに疼くような刺激を与えていく・・・
初めて感じる刺激に・・・ティニーは翻弄させられていく。
徐々に熱くなっていく体・・・徐々に失っていく気力・・・
徐々に・・・疼きを気にし始める自分・・・

「ふふっ・・・一度濡れ始めると凄いですね・・・どんどん染みが大きくなっていく・・・」
彼女の下着の染みの部分に指を突きたて、彼女の秘裂を刺激し続ける男・・・

「俺も・・・もうそろそろだぜ!」
口に物を含ませている男も、さっきに男と同じ様に絶頂を迎えつつある・・・
「出してやるぜ・・・その可愛い口の中によ!」
男は、さらに速さと強さを上げていく・・・

チュパ!・・・ヌチャ!・・・ネチャ!
「うう!!・・・うん・・・ううっ!」
ティニーの中で果てようと、動きを速くする男・・・
その行為の前に、ティニーは悲鳴をあげることすらできない。


男が果てようとしている時だった・・・
「では・・・盛り上がってきたところで・・・」
背後の男が彼女の下着の中に手を滑らせてきたのだ。
(!?・・・そんな!)
「あなたの敏感なところを・・・」
そう言うと、下着の中に入り込んだ手は、彼女のクリトリスを探しあてた・・・

「うっ!・・・出すぞ・・・出すぞ!」
口の男は、射精しようとしていた。

「ふふふっ・・・」
下着の中に手を入れた男は、彼女のクリトリスを摘み上げたのだった。

「!!!!」
今までとは、比べ物にならない刺激が彼女を襲った。

その瞬間。
「うっ!! がががああああっ!!」
口の挿入していた男が、絶叫を上げた。激しい痛みを感じたためだ。
同時に口の中に含まされていた男の剛直が、ものすごい速さで引き抜かれていった・・・
彼の精を放ちながら・・・
引き抜かれた剛直は、さらに残りの精を放ち、それは彼女の顔面に降りかかった。
「うっ!・・・げほっ!・・・ごはっ!」
口の中と顔面に男の精液を掛けられたティニーは、思わず噎せ返ってしまった。
彼女の顔面から滴れ落ちていく白い欲望・・・
そして彼女が噎せ返ったために、口の中から咳き込むたびに外に出される白い欲望・・・
「うっ・・・くっ・・・」
彼女は、目をつぶって不快感に耐えようとした。

彼女は、クリトリスを弄られたために強い刺激を受け、思わず男の物に歯を立ててしまったのだった。
そのため、男は激痛のために男根を抜いてしまったのだった。

激しい男の怒りが、ティニーを襲う。
歯を立てられた男は、彼女の首を掴み、うなだれるティニーを上に向かせた。
「きさまああぁぁ!!」
怒り狂った男は、彼女の頬に平手打ちを食らわせた。
パシン!
「きゃああぁ!」
悲鳴をあげるティニー。
「歯を立てるなと言っただろう!! このガキ!」
何度も往復の平手打ちを浴びせる男・・・
パシン!、ビシッ!パチン!
「いや!・・・ああっ!!・・・やめて!!・・・助けてぇ!」
男の容赦のない平手打ちを浴びるティニー・・・
悲痛な声や、助けを求める声を出しても、男は聞き入れない。
痛さに・・・惨めさに・・・涙が出てくるティニー。

彼女の両頬が赤く変色していく・・・

その様子をヒルダは見ていた。
「まったく・・・男一人満足に奉仕できないのかね・・・」

叩かれ続けるティニー・・・
「うっ・・・もう・・・助けてぇ・・・だれかあぁ!!!」
泣き叫ぶティニー・・・
その悲鳴は、地下室に鳴り響いていた。

激しい痛みの中で・・・
(助けて・・・セティ様・・・助けて・・・イシュタル姉様!)
彼女は・・・心の中で大切に思う人達に、助けを求めたのだった。



どれだけ・・・そんな事が続いたのだろう・・・
「はあ・・・はあっ・・・」
ティニーを殴り続けた男は、息を切らしていた。
「まったく・・・こんな少女に手をあげてるんだよ・・・大人気ない・・・」
先ほどまで、ティニーの胸と秘所を責めていた男が言った。
「だってよ! こいつは俺の物に歯を立てたんだぜ! 腹が立って仕方がないぜ・・・」
そう言うと、ティニーに視線を向けた。

ティニーはぐったりとしていた・・・
冷たい石畳の上に、糸の切れた人形みたいに倒れていた。
どうやら、気絶しているみたいだった。

「ふんっ・・・母と違って、あんまり耐えなかったわね・・・もう少し、しぶといかと思っていたけど・・・」
ヒルダは、少し残念そうに言った。
この女にしてみたら、少しでも抵抗してくれたほうが楽しめるのだった。
「まっ・・・これから嫌って程、この女の悲鳴を聞くことができるからねぇ・・・そう・・・楽しみはこれからだよ。」
ティニーを見やって。ヒルダはこれからのことに期待を膨らませた。












イシュタルは狩られた子供たちが集められた場所にいた・・・
いくつかのグループに分けて、子供たちを捕らえておく作業のためだ。

その彼女のもとに、ヒルダがユリウスに謁見したと情報が入った。
イシュタルはヒルダが、なにをしようとしているのかがよく分かった。
(あの人は・・・ティニーに酷いことをしようとしている・・・)
そう・・・あの人は狂気に任せて、ティニーに酷いことをするだろう・・・
ティニーの母にした仕打ちと同じ様に・・・

(助けに行きたい・・・でも・・・)
でも・・・今、自分はユリウス様の命を受けて、子供狩りの仕事を行っている・・・
自分がこの仕事を放棄して、ティニーを助けにいったら・・・決してユリウス様は、自分を許さないだろう・・・
そして・・・ティニーを助ける事も許さないだろう・・・
あの人は、彼女のことを・・・どうも思っていないのだから・・・


ユリウス様の・・・許しがでない限り・・・
(自分は・・・ティニーを助けられない・・・)
それは、確信だった。
そして・・・自分の無力さの・・・確認でもあった。



(でも・・・それでも・・・私は・・・)
自分の妹同様の・・・大切な少女を助けたかった・・・




そんな時だった。

「オイ!お前はこっちに来るんだよ!」
部下の兵士が大きな声を上げていた。
「やだ!僕は行かないぞ!」
反抗する子供の声・・・
兵士と子供が何か問答をしていた。

イシュタルはその場所に向かう。
「どうしたのだ?」
「イシュタル様! はい、この子供がこの少女と離れたくないと駄々をこねておりまして・・・」
年は10にも満たない男の子が、大人たちを睨みつけていた。
「僕は、絶対ナーシャから離れないぞ!」
よく見ると、この少年の後ろに7歳ぐらいの少女が隠れていた。
「男と女はここで分けられるんだ。大人しくしろ!」
「嫌だ!嫌だ!」
兵士たちに連れて行かれようとするが、地団駄を踏んでその場に留まろうとする少年・・・
「待て!」
イシュタルが兵士たちを制した。
そして・・・少年に話し掛けた。
「あなた・・・名は?」
「・・・・・・トリトン・・・」
少年は、静かに答えた。
「この女の子はあなたの妹なの?・・・だから離れたくないの?」
イシュタルは尋ねた。
男の子は黒い髪をしていたが、少女は金髪だった・・・
血がつながっているようには見えなかったのだ。

「・・・違うよ・・・僕達は兄弟じゃない。同じ村で育ったんだ・・・」
少年は、後ろの少女を見やって答えた。その少女は、ビクビクと震えていた。

(・・・でも・・・それなら・・・)
「なら、どうしてその少女を守ろうとするの? 血もつながっていないのに・・・」
「関係ない! 僕は、いつも一緒にいたナーシャを守る! だって、いつも一緒にいたんだから!」
「・・・・・・」
イシュタルは黙ってしまった・・・
頭の中で、何か考えているようだった。

「イシュタル様・・・どうしましょう・・・」
兵士が心配になって尋ねた。
「・・・・・・連れて行きなさい・・・二人一緒に・・・」
イシュタルは命令を下す。
「しかし・・・それでは、違反に・・・」
「構いません。私が責任を持ちます・・・」
イシュタルは言い切った。
「・・・分かりました・・・オイ! その女の子と一緒に来い!」
兵士たちは、先ほどの少年・少女を連れて行った。
二人はしっかりと手をつないでいった・・・


イシュタルはその二人の小さな背中を見つめていた・・・
(・・・血が・・・つながっていない・・・か)
自分の言った言葉・・・絆という言葉が頭の中を駆け巡っていた。
(あの二人は、血がつながっていないのに・・・それでもあの男の子は、あの少女を守ろうとした。・・・)
イシュタルはさっきの少年の、決意に満ちた顔を思い出す。
(あの少年と少女の間にどのような絆があったのかは分からない・・・でも、それでもあの子が守ろうとした事には変わりがない・・・)
あの二人を見て・・・イシュタルは自分が情けなく思えてきた。
(血もつながっていて・・・そして幼き頃から共に育ったティニーが危険に晒されているのに・・・私は、行動も起こそうとしない・・・なんて最低な女なの・・・イシュタル・・・)

イシュタルの頭の中に・・・幼き頃の思い出やティニーの笑顔が駆け巡る・・・
(いつも・・・ティニーは私のことを信じてくれた。 私の母が自分を虐待しても・・・それでも私を信じてくれた・・・昔も・・・今も・・・)


そんなティニーに・・・今の自分ができることは・・・


「後悔は・・・したくない・・・」


言葉に出して決意を言ったイシュタルは、王宮に向かって歩き出した。

 

 

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