断点-2 1
(1)
「和谷、いるか?」
声をかけながら控え室のドアを開けたら、そこにいたのは別の人物だった。
ソファに斜めに腰掛けて目を閉じて――眠っている?――塔矢アキラ。
そのまま部屋に入り、後ろ手で静かにドアを閉めた。
足音を立てないようにそっと近づいていった。
疲れてるのかな。
こいつがこんな風にうたた寝してるなんて。
「塔矢、」
すぐ側で声をかけてみても、塔矢は目を開けなかった。
間近に見る塔矢はやっぱりキレイだ。
頬にかかる真っ直ぐな髪。長い睫毛。白い肌。紅い唇。
どうして。
こうして見ているとドキドキしてきてしまうのは、どうしてなんだろう。
あんなに酷い事をされて、冷たくされて、それでも嫌いになれないのはなんでなんだろう。
髪にそっと触れてみた。
それでも塔矢は目を開けなかった。
「…塔矢、」
胸が詰まる。心臓の音が苦しい。目の奥が熱い。
塔矢、オレは……
気が付いたら身をかがめて、眠り姫のように静かに眠る塔矢に、オレはキスしていた。
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