Kids are all right. 1


(1)
「おがたくぅん、きょうはすっごぉくあったかいねぇ!」
 そう言うと、昼食後、しばらく緒方と棋譜を並べていた塔矢家の一人息子、
アキラは縁側に腰掛けて、庭を眺めながら足をプラプラさせました。
 まだ4月だというのに、壁に掛けた温度計は25度を超えそうな勢いです。
前日は寒くてアーガイル柄のウールのカーディガンを羽織っていたアキラですが、
今日は白いコットンシャツに薄い茶の膝丈のコットンパンツ姿で、
まるで初夏を思わせる涼しげな格好をしています。
 庭の草木が生暖かい風に吹かれて、さわさわと音を立てる様子に耳を
傾けながら、アキラは瞼を閉じて顔を空に向けました。
「おめめをとじてるのに、おひさまがまぶしいんだよ!」
 緒方は棋譜を並べていた手を休めて、アキラの方を向くと、少し困った
ような表情をして言いました。
「アキラ君、日に当たるなら日焼け止めを塗らないとダメだぞ。
太陽の光っていうのは結構恐いんだ」
 アキラは両腕を空に向けて思いっきり伸ばして「ふぅ〜〜〜っ!」と大きく
呼吸すると、そのままころんと仰向けに倒れてしまいました。
閉じていた瞼をゆっくり開き、そのまま顔だけを少し反らすと、苦笑しながら
自分を見つめる緒方と目が合います。



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