無題 第3部 1


(1)
塔矢が好きだ。
自分の感情をそう認識したものの、だが、ヒカルはどうしたらいいのかわからなかった。
初めて好きになった相手が男だなんて。
こんな気持ちを知られたら一体どう思われるだろう。
気持ち悪いと思われるんじゃないか。
嫌われてしまうんじゃないか。
大体、これから、どんな顔で塔矢に会ったら良いんだろう。
ダメだ。「塔矢」って名前を考えただけで胸がドキドキしてくる。
とても今まで通りに普通にする事なんで、できそうもない。

「ようっ、進藤、どうしたんだ?景気の悪そうなツラして。」
「加賀!?」
もやもやとした思いを抱えながらぼんやりと道を歩いていたヒカルの頭をポンと叩いたのは、
懐かしい加賀だった。地獄に仏とはこの事。こんなに最適な相談役が他にいるだろうか?
「あのさ、加賀、オレちょっと聞いてもらいたい事あるんだけどさ…」



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