少年王アキラ 誕生日 1
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「座間! 今日はなんの日だか知ってるか?」
声変わり寸前の少年王の掠れた声がホールに凛と響いた。
20人は一緒に食事ができる巨大なテーブルのそこここにバラとユリの豪奢な
アレンジメントをいそいそと飾り付けていた可憐な執事・座間は、パチンと茎を
鋏で切って頷く。
「もちろんですとも、王子。16年前の今日の10時8分。王妃の股の間から、
元気な玉のような美しい皇子がお生まれになったのです」
ユリは真っ白のものと、中心部がピンクになっている甘い匂いを撒き散らすも
のが混ざっていた。その花粉を丁寧に拭いながら、座間は遠い目をしてつぶやいた。
「座間ったら、元気な玉を持った皇子だなんて恥ずかしいことを言うな」
少年王アキラはとたんに真っ赤になった顔を左手で隠し、右手で座間の肉付きの
よい背中をバンバン叩く。広いテーブルにユリの黄色い花粉が飛び散り、その上
から可憐な執事の肥大した体が投げ出された。
「そ…そんなこと言ってはおりません……ぁっ、そんなに強くぶつのは…あん、
なんだか、イタ気持ちいいぃぃ――ハァハァ」
「ハハ、ボクはとうとう16歳になったんだ……!」
この日をどれだけ待ち望んだことか。少年王は上機嫌に笑うと、執事を嬲って
いた手を止め、傍らの真っ赤なバラの花弁に唇を寄せた。
「これでオガタンに夜の指導碁を打ってもらえる。そして、そしてそしてそして
……ちょっとまて。こうなったら、コレをしろという父上からの説明だった」
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