バレンタイン小ネタ1 1
(1)
「市河さん、甘いの好きだったよね。これどうぞ。」
アキラは学校の帰りに碁会所に寄り、女の子達から貰ったチョコの一部を
市河に差し出す。
「ボク、1人じゃ こんなに食べれないし。市河さんが貰ってくれたら
助かるけど。」
「・・・あ、ありがとう。でもねえ、アキラくんが食べたほうがいいと思う
のだけれど」
「ボクそんなに甘い物 好きじゃないから気持ちだけ受け取ればいいかな
と思って。」
・・・それは そうなんだろうけど。同じ女として市河は複雑な気分になる。
わあっ、コレなんかゴディバのチョコよ。今の中学生は高級志向ねえ。
「若先生、あいかわらずモテますねえ」
北島は碁を打ちながら、アキラに話しかけた。
「そんなことないですよ。北島さん、よろしければ お一つどうですか?」
「へっ? い、いやっ そんな貰えないですよ!」
「でも毎年、食べ切れなくて困っているんですよ。ハイ、どうぞ」
悪げもなくアキラはチョコを北島に渡す。そんなアキラを市河と他の客は
ヤレヤレ・・・と渋い表情で見る。
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