無題 第3部 10


(10)
「あら、緒方先生、お久しぶり!」
市河の声にアキラは驚いて顔を上げた。
市河に軽く挨拶してから、緒方はまっすぐアキラの方へ歩いてきた。
「それは、この間の十段戦の予選の時の?」
アキラが並べている棋譜を見て、緒方が尋ねた。
「一局打たないか。」

二人は終始無言で対局した。
非公式な対局とは思えないほどの、真剣勝負だった。
周りで見ていた者達が言葉を発するのを控えたほどだった。

―これまでか。やはり、簡単に太刀打ちできる相手ではない、この人は。
アキラは盤面を見詰めながら、唇を噛んだ。

「ありません。」
アキラの声に、周りから溜息が漏れた。そして堰を切ったように、口々に今の対局について
好き勝手な検討を始めたが、それはアキラの耳には入ってはこなかった。
アキラは大きく息をついて、それから顔を上げた。
対局相手が、今の対局を、彼の追撃を称えるような笑みを浮かべていたので、思わずアキラ
も同様に笑みを返した。



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