Sullen Boy 10
(10)
「ああ、賭けてもいいぜ。アイツは必ず戻って来るさ。アキラ君のいるところにな」
「……ボクのいるところ……」
「そうだ。キミのいるところだ」
「……………」
「もしオレの言った通りにならなかったら、バランタインの件は無かったことにしていいぞ。
どうする?」
不敵な笑みを浮かべて挑発してくる緒方に、アキラはゆっくりと首を振った。
「賭は不成立か……。なんだ、アキラ君もオレと同じ方に賭けてるじゃないか」
言葉とは裏腹に、緒方は予想通りのアキラの返答に満足している様子だった。
そんな緒方を頼もしそうに見つめながら、アキラは再びフェンスに凭れる。
「……忙しくなりますね、緒方さんもボクも……」
「ああ、そうだな。『追って来い!』と言った以上、オレもうかうかしてはいられないな。
何がなんでも碁聖のタイトルは手に入れないと……」
「すぐに追って行きますから、そのつもりでいてくださいね」
「宣戦布告とは勇ましくて結構なことだ。だが、その頃のオレは二冠どころじゃ済まない
かもしれんぞ」
「じゃあ、その時は緒方さんが取ったタイトルをボクが全部いただくことにしますよ」
「ハハハ!言うじゃないか、アキラ君。取れるものなら取ってみるんだな」
そう言って緒方は楽しそうに笑うアキラの頬を軽く叩いた。
|