座敷牢中夢地獄 11
(11)
「湯加減はどうだったかね」
「いいお湯でした」
俺が部屋に入って座布団を勧められる段になっても、アキラは何も聞こえないかのように
目を閉じたまま父親の膝の上から離れようとしない。
先生がそんなアキラの背中をポンポンと叩きながら促した。
「アキラ。おまえも風呂に入ってしまいなさい」
「・・・・・・」
アキラがむずかるように先生の肩に顔を埋め、イヤイヤをする。
「まだ寒い・・・」
「風呂に入れば温まるだろう?緒方くんに呆れられてしまうぞ。ホラ」
突然ダシにされても困るのだが。
先生がアキラの真っ直ぐな髪を丁寧に何度も撫でてやると、アキラは漸く名残惜しそうに
頭を上げ、傍らに置いてあった着替え一式を手に廊下へと出て行った。
その間アキラは俺を一瞥もしなかった。
古傷のような痛みが胸をよぎる。
「今日はすまなかったね。アキラが出てきたら夕飯にするから少し待っていてくれたまえ」
「はあ」
「・・・奇妙に思うだろうね。あれはもう大きいのに、さっきのような・・・」
「いえ・・・」
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