Sullen Boy 13


(13)
「……わざわざ拭いてもらって、どうもありがとうございました……。はい、これタオル」
 緒方の目の前にタオルを差し出すアキラの手も、心なしか怒りに震えている。
「オレに渡す前に、芦原の顔をそれで拭く気はないか?」
「……ありません……」
 立ち上がって、アキラの手からタオルを受け取ると、緒方は引き裂かんばかりに強くタオルを
引っ張りながら、忌まわしいものでも見るかのように、床に転がる芦原を見下ろした。
「昨日、オレは碁会所でアキラ君を夕飯に誘いはしたが、キサマを誘った覚えはないぞ……。
夕飯だけならまだしも、明日は日曜日だしとか適当な理由を付けて、コンビニで酒やら何やら
買わせた挙げ句、オレの部屋までノコノコとついて来やがって……」
「……ボクもついて来ましたけど?」
「アキラ君はコイツに引っ張られて、仕方なくついて来たんだろ?キミに罪はない。むしろ、
アキラ君なら歓迎するさ。……だが、コイツはだなァ……」
「……でも、ボク緒方さんのベッドを占領してるんですけど……。迷惑じゃありませんか?」
「未成年のアキラ君を深夜の酒の席につきあわせるわけにはいかないからな。キミは先に寝室の
オレのベッドで寝て、飲み終わってからオレはそこのソファで寝て、芦原は床に転がしておく。
実に合理的な方法だと思わないか?」
「…………」
 アキラは額を手で押さえたまま、しばらく黙り込んでしまった。



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