座敷牢中夢地獄 13


(13)
どうせ夢なら思い通りにいってくれても良さそうなものだ。
自ら願い出て互先で本気の碁を交えた結果、俺は術もなく負けた。
先生の碁は揺るぎなく、付け入る隙すらなかった。
――夢の中でまで俺はこの人には勝てないのか。
情けなかった。
筋がいいと賞めてくれる先生の声もどこか遠くで響いているような気がした。
「さて、それでは食事にしようか」
先生の声に顔を上げると、すぐ横に風呂から上がったアキラが正座して俺たちの対局を
見守っていた。
目が合うと花の綻ぶようにニコッと笑って、興味深げに盤面に目を戻す。
・・・あまり見ないで欲しい。

ある程度の年になって以降は、周囲の人間から見て俺は尊大な男に映ったかもしれない。
だが本来の俺は人より繊細で羞恥心の強い、臆病な若造に過ぎなかった。
そんな自分を護るために碁の勉強に打ち込み、社会的地位と金の力でありったけ身を
鎧ってきたのだ。
しかしここが夢の中で、この世界において自分がどのような位置づけにあるのか
今ひとつわからないせいもあるのだろうか、俺は何かとても不安定で脆弱な、
些細な事でぐらぐら揺れる若造の頃の自分に戻ってしまったかのような頼りない気分に
襲われていた。



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