Kids are all right. 13 - 14
(13)
最初は恐る恐る水の中で歩いていたアキラでしたが、ヒカルがジャブジャブと
勇んで噴水の中央に向かっていくと、負けじと勢いよく水を跳ね上げながら、
大股でヒカルの後をついて行きます。
大量に落ちてくる水で全身びしょ濡れになりながら噴水の中央まで来ると、
2人は他の子供達に混じって楽しそうに遊び始めました。
歓声を上げながらはしゃぐ2人の様子を欠伸混じりにのんびりと眺めていた
緒方ですが、遊んでいる子供達の母親とおぼしき女性達の、幾分冷ややかな
視線が自分に注がれているのに気付くと、はっと我に返りました。
(大方、オレはアキラ君の父親と思われているんだろうな……。まあそれは
それでいい。可愛らしいアキラ君の父親とは、なんとも光栄なことじゃないか。
問題は、こんな平日の真っ昼間に、オレのような若い男が子供連れで公園に
いる光景を世間一般の主婦がどう思うかだ……。お気楽な自由業者と思われて
いるのか?……まあそれなら構わん。ひょっとして専業主夫……?……オイオイ、
まさかただの失業者じゃないだろうな?違うッ!断じて違うぞォッ!!
……フッ、オレが囲碁界の明日を担う若手のホープ、緒方精次であることなど、
ここにいる女子供には知る由もないことだな……ハハハ!!)
(14)
延々とそんなことを考えていた緒方をびしょ濡れのアキラとヒカルが
心配そうな表情で覗き込みました。
「おがたくぅん、なんだかぶつぶついってたけどだいじょうぶぅ?」
緒方は驚いて「うわぁっ!!」と叫ぶと、ばくばく言う胸を押さえながら
言いました。
「2人とも、もう戻ってきたのかい?」
2人は一緒に大きく頷きました。
「もうってゆーけどさぁ、おじさん、オレたちけっこーながくあそんでたぜぇっ!」
ヒカルの「おじさん」発言に激しい目眩を覚えながらも、緒方は腕時計に
目をやりました。
ヒカルの言う通り、確かに2人が噴水で遊び初めてから既に2時間近く経過
しています。
ヒカルはベンチに置いてある大きなタオルを手に取ると、広げてアキラの
身体を包み込み、濡れた髪を拭いてやりました。
「いっぱいあそんでつかれちゃったし、くもがでてきてアキラがさむいって
ゆーから、いっしょにもどってきたんだよ」
緒方はヒカルに「ありがとうな、ヒカル君」と優しく言うと、アキラに服を
差し出しました。
「十分遊んだようだし、アキラ君はもう服を着た方がいいな。ヒカル君はどうする?」
ヒカルはアキラの髪を拭いてやりながら、しばらく考えていましたが、意を決して
言いました。
「オレもふくきるよっ!」
緒方はヒカルの母親が置いていったナイロンバッグを手に取り、ヒカルに
渡してやりました。
ナイロンバッグには、ヒカルの服とスニーカー、そして小さいタオルが
入っています。
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