Kids are all right. 16
(16)
ヒカルは屈託のない笑顔で話すアキラと、緒方を交互に見ながら、複雑な表情を
浮かべました。
「オレもプリンだいすきだぜぇ……。でもよぉ、そのプリン、オレがくっちゃったら
おじさんは……」
緒方はヒカルの再びの「おじさん」発言に僅かに引きつった表情で「ハハハ!」と笑うと、
ヒカルの頭を軽くポンポンと撫でてやりました。
「アキラ君と遊んでくれたお礼だよ。小さい子が遠慮することなんかないさ。
実はプリンだけじゃなくて、バナナも持ってきているんでね。おじさんはそれを
食べるから、2人は心置きなくプリンを食べるといい」
「オレ」と言うはずのところを反射的に「おじさん」と言ってしまった自分に
自己嫌悪を覚えつつ、緒方はトートバッグの中から2本のプラスチックスプーンを
取り出し、ベンチに並べた2つのプリンの容器の上に置きました。
ヒカルは心の底から嬉しそうに笑うと、大きな声で緒方に礼を言いました。
「おじさん、ありがとうっ!!すっげー、うまそーなプリンだなぁっ!!」
ヒカルの三度の、しかも周囲に響き渡るような大声での「おじさん」発言に、
危うく血管がブチ切れそうになりつつも、緒方は穏やかに笑いながら2人のために、
持ってきた麦茶をコップに注いでやりました。
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