無題 第3部 16


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二人の身体が離れた。
そして、緒方が先に足を進めて赤いスポーツカーに近寄り、助手席のドアを開けてアキラを促した。
気付かれる、と、ヒカルは慌てて柱の陰に隠れた。
そうしながらも、どうして自分が隠れなきゃいけないんだろうと、思った。
車のドアが閉まる音に続いてエンジン音がして、駐車場から緒方の車が出て行った。
その間ずっと、身体を震わせながら、ヒカルは柱の影で息を殺していた。

なぜ、なぜオレはこんな所で震えているんだろう。
なぜ、こんな所に隠れたままなんだろう。
「触わるな」
「オレの塔矢に、触わるな」
そう言って、緒方を殴り付けてやりたかった。
それなのに、動く事も出来なかった。
悔しい。
悔しい。悔しい。悔しい。
「塔矢…っ!」
悔し涙を滲ませながら、ヒカルは他の男と去って行ったアキラの名を呼んだ。



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