Sullen Boy 16


(16)
 やがて、緒方はクローゼットの中の棚からタオルケットを取り出すとバスタオルと一緒に抱え、
リビングに消えた。
間もなく戻ってきた緒方は手に何も持っていない。
「なんだかんだ言って、緒方さんだって優しいじゃないですか」
「当たり前だ。オレは慈愛に満ちた男だと、さっき言ったはずだぞ」
 真顔でそう言うと、緒方は眼鏡を外してサイドテーブルの上に置き、アキラの横に腰掛けた。
「起きるのは昼頃だな。目覚ましはセットしないぞ」
 緒方は頷くアキラの頭に手を置き、ポンポンと叩く。
「アキラ君、踵落としはナシだぜ」
 そう言って楽しそうに羽布団の下に潜り込むと、布団を持ち上げてアキラを手招きした。
 アキラは素直に従い、緒方の横にピタッと寄り添うように横たわる。
仰向けになり、天井を見上げるアキラの前髪を緒方はそっと掻き上げると、額を優しく撫でてやった。
「……ボク、もう中学3年生なんですけど……」
 少し恥ずかしそうに頬を赤らめて抗議するアキラに、緒方は思わず笑う。
「そんなにピタッとオレにくっついて寝られると、ついつい昔のアキラ君にしたように、
これをやりたくなるのさ」
「……ボクも昔の癖で、踵落としをお見舞いするかもしれませんよ」
「それじゃあ、アキラ君が動けないように、羽交い締めにして寝るとするかな」
 緒方の言葉に一瞬ギョッとするアキラだったが、冗談だとわかっているのか、ゆっくりと
瞳を閉じた。



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