Sullen Boy 17
(17)
「安心して寝ろよ、アキラ君。そう遠からず、進藤は来るさ。」
「進藤」の一言に、思わず閉じていた瞼を開くと、緒方の榛色の瞳をじっと見つめる。
「オイオイ、目つきが険しくなってるぞ。せめて寝ている間は、昔のあどけない寝顔に
戻ってほしいんだが……」
「緒方さんが『進藤』なんて言うから……」
ムッとした口調でそう言うアキラの額を撫でて宥めると、緒方は苦笑した。
「なんだ、自覚してるじゃないか。進藤のこととなると人が変わると……」
アキラはキッと緒方を睨みつけると、すぐさま緒方と反対方向を向いて目を閉じる。
緒方は笑いながら、自分に背を向けて横向きになったアキラに腕を回すと、耳元で囁いた。
「じゃあな、オヤスミ、アキラ君」
しばらく黙ったまま目を閉じていたアキラは、緒方の寝息とおぼしき呼吸音が聞こえてくると、
目を開けて、自分の上に覆い被さる緒方の腕をそっと持ち上げた。
そのまま、ゆっくりと緒方の方に向き直る。
「おやすみなさい、緒方さん」
緒方の寝顔を見つめながらごく小さな声でそう囁くと、アキラは瞳を閉じた。
だが、そんなアキラの背中を眠っているはずの緒方が「クックック」と小声で笑いながら
優しく撫でる。
アキラは顔を紅潮させながら、しっかり開いている緒方の瞳を再びキッと睨みつけた。
そして、すぐに恥ずかしそうに緒方の胸に顔を埋める。
程無くして、アキラの穏やかな寝息が聞こえてくると、緒方は自身の胸に顔を埋めた
アキラの身体をそっと抱き寄せながら、静かに深い眠りの淵に身を沈めていった。
【終】
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