座敷牢中夢地獄 18
(18)
――ははは、情けないな。もう駄目だと思ったら断ればいいものを。
――お父さん。
――好都合だが。
――でも・・・気の毒です。
――誰のためにこうなったと思っている。
――・・・でも。
――・・・なら、もう一度チャンスを
甘い匂いがする。
サラサラと何かがくすぐったく頬に触れる。
誰かが苦労しながら俺の重い体を支え、一歩一歩歩かせようとする。
「う〜・・・」
「緒方さん、そこ一段高くなってますから。足元に気をつけて・・・」
導く声が優しく耳元に響いて、目が覚めた。
「・・・アキラくん?」
「はい。もう少しですから、頑張って」
柔らかに微笑むアキラの顔が間近にあった。
サラサラと触れていたのは甘い匂いがする真っ直ぐなアキラの髪だった。
振り向くと俺たちの歩いてきた後に、長く暗い廊下が続いている。
ここまでずっと、アキラは一人で俺を支えてきてくれたらしい。
部屋に入り、ふらつく俺を畳に座らせて壁に凭せかけると、アキラは照明具の紐を
引っ張って電気を点けた。
酔った眼に光が眩しくて、俺は目をしばたたかせる。
外ではまだ雨が降っているようだった。
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