Kids are all right. 19 - 20


(19)
 2人が麦茶を飲み終えた頃、ヒカルの母親が長かった買い物を終え、
大きなスーパーのビニール袋を下げて、ようやく公園に戻ってきました。
母親は緒方に向かって深々と頭を下げると、ヒカルの頭をぐっと押さえて
頭を下げさせました。
「今日は本当にありがとうございました。なんだかプリンまでご馳走になって
しまって……、申し訳ありません。スーパーで隣町の知り合いにばったり会って
しまって、ついつい話し込んでしまったものですから……」
 緒方は穏やかに笑いながら、やんわりと母親の長話を制するように言いました。
「いえいえ、こちらこそヒカル君と一緒に遊んでもらえて、とても楽しい思いが
できましたから……なぁ、アキラ君?」
 緒方の問いかけに、アキラは嬉しそうに答えました。
「うんっ!!ヒカルくん、きょうはいっぱいあそんでくれてありがとうっ!!」
 ヒカルは照れくさそうにしながらも、笑顔で言いました。
「オレもアキラとあそべてすっげーたのしかったっ!!プリンありがとうなっ!!」
 母親は再び礼を言ってぺこりと頭を下げると、ヒカルを連れて帰っていきました。
アキラもヒカルも、互いの姿が見えなくなるまで何度も何度も手を振りました。


(20)
 気がつくと、公園にはもうアキラと緒方しか残っていませんでした。
空は鮮やかな夕日に彩られ、涼しい風がアキラと緒方の間を吹き抜けます。
「そろそろ帰ろうか、アキラ君?」
 緒方は綺麗に空になったプリンの容器とスプーンをビニール袋に入れ、
魔法瓶を片付けると、それらを紺色のトートバッグに入れました。
「うんっ!きょうはヒカルくんにあえて、すごぉくたのしかったなぁっ!!」
 そう言うと、すっかり乾いたおかっぱの髪をさらさらと風になびかせながら、
アキラはヒカルが帰っていった方向を向いて、少し淋しそうな表情をしました。
「ヒカルくん、またあえるかなぁ?」
 ぽつりとそう呟くアキラの頭を軽くポンポンと撫でてやりながら、緒方は
優しく言いました。
「そうだね。またきっとどこかで会えるさ」
 緒方の言葉に嬉しそうに頷くと、アキラは緒方と手を繋いで、公園に来た
ときのように力強くその手をぶんぶん振りながら、家路を辿りました。



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