大人は判ってくれない? 2
(2)
碁石を並べるアキラの様子に、これといって変化はなかった。
しかし、何かがおかしい。
「……おや? あの一局じゃないのか。随分変わった石の並びだな。誰と誰の対局だ?」
「さあ? それが、ボクもよくわからないんです」
「わからない……?」
怪訝そうな顔の緒方を余所に、アキラはやはり黙々と碁石を並べるだけであった。
不気味な沈黙の中、アキラがパチパチと石を打つ機械的な音だけが周囲に響き渡っていた。
どうやらアキラが並べているのは対局の棋譜ではないらしい。
何かの文字のようである。
「……こ、これは?」
盤上に並べられた碁石が示す3つの文字を見て、緒方は不思議そうに首を捻った。
「XYZ!?」
緒方は煙草を手近な灰皿で揉み消して、しばらく考え込んでいた。
すると、何やら思い当たるフシがあるのか、軽快にパンと手を叩いて笑った。
「ハハハ! そうか、なるほど! アキラ君、今夜はこれを飲みたいんだな。喜んで
ご馳走するとも」
未成年であることはともかく、アキラの大人顔負けの酒豪ぶりは既に緒方の知るところである。
"XYZ"──ホワイトラム、コアントロー、レモンジュースで作るシンプルなカクテルだ。
アルファベットの最後の3文字を名称にしているのは、これ以上はない『究極』のカクテル
という意味らしい。
口当たりのいいさっぱりとした味で、アキラのお気に入りになっていた。
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