バレンタイン小ネタ1 2 - 3
(2)
「ただいま」
「アキラさん、お帰りなさい」
「お母さん ハイこれ」
「まあ今年も沢山チョコを頂いたのね アキラさん。女の子にモテて
お母さん嬉しいわ。アキラさんは、好きな女の子いないの?
ぜひ家に連れてきて欲しいわね」
・・・女の子じゃないんだけどね・・・。
一瞬、ヒカルの顔が頭によぎりながら「・・・ボクは今は碁のほうが大事
だから」と、母親の手前 誤魔化す。
「ふふふ アキラさんらしいわね。今年は このチョコどうやって
食べましょうか?」
「去年みたいにチョコレートババロア・チョコクッキーとか作れば
家でする研究会のとき、芦原さんが喜んで食べてくれるよ。
芦原さん甘いの好きだから」
「それもそうね。こういうとき、芦原さんがいると助かるわね」
「うん? なんだ なんだ。誰か俺の噂でもしてるかな?」
碁会所で指導碁をしていた芦原が大きなクシャミをした。
(3)
次の日、ヒカルはアキラと碁の研究会をするために学校の帰りに碁会所に
寄る。が、早めに着いたらしく、アキラの姿が見当たらない。
「進藤君、いらっしゃい」
「あっ、こんにちは市河さん」
「ちょっと遅くなったけど、コレどうぞ」
市河は綺麗にラッピングされたチョコレートの包みを2個ヒカルに渡す。
「えっ、いいの? ありがと市河さん」と、ヒカルは少しテレ気味に
チョコレートを受け取る。
「あれ? でもなんで2個もくれるの?」
不思議そうに自分を見るヒカルに対し、市河は苦笑する。
「・・・もう一つはアキラくんのなんだけど、案の定ものすごい数のチョコ
貰ってたから渡しにくくて。だから進藤くんが貰ってくれると嬉しいわ」
ちょうど その時、碁会所にアキラが姿を現した。
「進藤君、ホラ早く しまっちゃって」
小さな声で市河はヒカルに言いながら、
「アキラくん、いらっしゃい」と、笑顔でアキラに向ける。
ヒカルは そんな市河に何か言おうとしたが、一応言う通りにバッグに
チョコレートの包みを急いで入れる。
「ごめん進藤、学級委員の用事が長引いて少し遅れた。さあ、始めようか」
「ああ・・・」
受付に立つ市河に複雑な視線を送りながらヒカルは碁盤に向かう。
研究会が終えるとヒカルはアキラに一緒に帰らないかと誘った。
・・・進藤がボクに そんなこと言うの初めてだなあ・・・とアキラは最初は
驚きの気持ちが強かったが、次第に別の期待が頭の中を占領する。
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