座敷牢中夢地獄 20
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「緒方さん?やっぱり具合が・・・」
不意にひんやりとしたものが額に当てられたと思ったらアキラの手だった。
「熱がある気がする・・・ボク、冷たいタオルを取ってきましょうか」
「いいよ、ここにいてくれ。熱いのは、酔ってるせいだろう」
心配そうに覗き込んでくるアキラに笑ってみせる。
具合は悪くないが本当は今、とても寂しい。
「でも・・・」
「大丈夫。・・・アキラくんこそなんともないのか?海でずいぶん冷えただろう」
そう言えばアキラは今療養中ということだったのだ。そんな体で海に入ったり、
俺を支えて歩いたりして大丈夫だったろうかと急に心配になった。
「アキラくん、体調のほうはまだ戻らないのかい。もうここに来て一年になると言って
いたが」
アキラの澄んだ双眸が僅かに揺れた。
「あ・・・ええ、まだ・・・」
「そうなのか。・・・だったら尚更、あまり無理をしちゃいけないよ。今日はたまたま俺が
通りかかったからよかったようなものの・・・」
つい説教臭い口調になってしまう。だがアキラは神妙に頷きながら聞いていた。
体調を崩したとは具体的にどこを悪くしたのか知りたくもあったが、「初対面」の俺が
あまり突っ込んだ質問をするのも不躾な気がして、代わりにもう一つ、気になっていた
ことを訊いてみることにした。
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