無題 第3部 28
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「アキラ…ああ、上がっておいで」?なんだ?あの甘ったるい声は。
あんな風に呼ぶのか?あんな風におまえを呼ぶのか?アイツは。
そしておまえはどんな風に応えるんだ、塔矢?
同じように、甘えて呼ぶのか?「緒方さん」と。
頭がおかしくなりそうだ。
なんで、オレはこんな所にいるんだ。
いったいアイツはどういうつもりなんだ。
また、オレに見せ付けようっていうのか?
なんで、オレはこんな所に来てしまったんだ…?
玄関のチャイムが鳴った。
靴を脱いで上がる間も与えず、緒方はアキラの身体を抱きしめた。
アキラが手に持っていたコートが床に落ちた。
「…緒方さん?…どうし…」
アキラの疑問には答えず、緒方はそのまま唇を塞いだ。
息もつかせぬほど激しく、緒方はアキラの唇を、口腔内を貪った。
わけがわからぬまま、アキラは緒方の身体にしがみついた。
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