無題 第3部 3


(3)
唐突に加賀はヒカルが誰の事を言っているのかひらめいた。
「おい、ちょっと待て、もしかして、おまえの好きなヤツって塔矢アキラか?」
突然言い当てられて、ヒカルは真っ赤になった。
「ど、ど、ど、どーしてわかるの!?」
「いや、だっておまえの周りにいる奴等を考えると他にいないだろ?
おまえの塔矢アキラに対する執着もちょっと普通じゃなかったし、それに、
まあ…アイツも、一見、女みたいなキレイなツラしてるしなぁ…」
最初に囲碁教室で会った時はてっきり女の子だとばかり思った。
そんなヤツに勝てなかったから余計に悔しかったんだ。
ふと、加賀は昔の切ない記憶を手繰り寄せた。
そんな加賀の感傷になど気付きもせず、ヒカルはぱっと顔を輝かせて嬉しそうに言った。
「やっぱり?やっぱり加賀もそう思う?」
「そうだよな。やっぱり、アイツってキレイだよな。
知ってる、加賀?
対局中なんかあんなにコワイ顔なのにさ、子供とか相手だと、すっげー優しそうで、
笑うとほんっとにキレイで、そこらへんのアイドルとか女優とかなんかよりずっと
キレイで、髪なんかサラサラだし、近くによるとイイ匂いがするし…」
止めども無く言い続けるヒカルについに加賀が呆れてストップを入れた。
「オイ、進藤、いい加減にしろ…」
「え…?」
「いい加減にしろ…聞いてるこっちが照れるじゃねェか。」
「え?そう?」
だって、ホントのことじゃん?と言いたいのを、加賀の目に押されてぐっとこらえた。
「よくもまあ、恥ずかしげも無くペラペラと…」



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