怒りの少年王 3
(3)
「なに!?」
オガタンは慌てて時計を見た。予定の時刻を大幅に上回っている事に、その時初めて気づいて、オガタンは蒼ざめた。あの癇癪持ちの少年王を待たせて、その上先に行かせてしまうとは…オレともあろうものが、何と言う大失態だ。
すぐに出かけなければ、そう思って鏡をもう一度見る。
だがやはり、この組み合わせは気に入らない。
「あーっ、時間がないっ!!」
そう叫びながらオガタンはネクタイを外し、シャツを脱ぎ、もう一度別のシャツを着込む。
それから少なくとも3度は着替えてからやっと今日の衣装を決定し、メイクボックスを引っ掴んで、慌てて愛車RX-7の置いてあるガレージへと走っていった。
このハンドルの握り心地でさえ、久しぶりだ。
制限速度を大幅に越えながら、オガタンはまた鼻歌交じりに撮影所への道を愛車を走らせた。
だが、車の性能も、運転技術も伊達ではない。相当遅くに城を出たにも関わらず、撮影所へはそれほど遅刻せずに済みそうだ。
撮影所前で急ブレーキをかけて回り込み、華麗に車をストップさせた。
―ふっ、大物は遅れて登場というしな。待つのはオレの性分ではない。むしろ待たせてやらねばなるまい。
そう思い、内心の動揺を押し隠して、オガタンは悠然と車を降りた。
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