Sullen Boy 3


(3)
「そんなパジャマ姿で寒くないか?」
 緒方に借りたライトグレーのパジャマは薄い綿素材のため、6月とはいえまだ夜も
明けぬこの時間では、確かに少々肌寒い。
コンクリートのベランダに素足で立っているため、爪先は既にすっかり冷え切っていた。
「……ちょっと寒いですけど……」
 本当はそんなことを言いたくない。
アキラはどことなくムッとした表情で、渋々答えた。
「なにせ裸足だしな」
 自分のサンダルを履かせる心遣いなど毛頭ないのか、緒方はアキラの足元を見てそう
言うと、フンと鼻で笑った。
アキラは不機嫌そうに緒方を睨め付けはしたものの、飄々とした風情で再び夜景を楽しむ
緒方の様子に、仕方なく溜息をついて話題を変える。
「……で、こんなところで一体なにをしてるんですか?」
「別に……。ただボーッとしいてるだけだ」
 期待外れな緒方の返答に、アキラは思わず天を仰ぐ。
「真実を言ったまでだぞ。何が悪い?」
「酔ってるんですか?」
 お返しとばかりに、今度はアキラが鼻で笑った。



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