無題 第3部 35
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「知らないくせに。
ボクがあの部屋で緒方さんと何をしていたか。いつも何をしてたのか。
そうさ、キミだって、見てたんだからもうわかったろ?
あそこでキミがいなかったらボクがどうしてたか。
知っててもそんな事言えるのか?わかってて言ってるのか?キミは?」
「止めろよ!聞きたくねェよ、そんな事!」
「聞けよ!
好きでもない男に抱かれて、ケツ振って悦んでるような男だよ、ボクは。
そんなでも、キミは好きだなんて言うのか!?」
「塔矢っ…!」
ヒカルが悲鳴の様に叫んだ。
「やめろよ…やめろよ、そんな事、言うの。」
そして、泣きそうな声で、小さくアキラに尋ねた。
「おまえ…緒方先生の事、嫌いなの…?」
うな垂れて、アキラは力なく首を振る。
「…嫌い、じゃない…」
「緒方先生はおまえの事、好きだっていってたぜ…?
おまえに惚れてる、オレなんかには渡さないって…」
「…知ってる。
…知ってて、だからボクは緒方さんに甘えたんだ。
緒方さんはボクを好きだって言ってくれたのに、
聞かない振りして、知らない振りして、甘えるだけ甘えて、ひどい事言って、傷付けた。
緒方さんの気持ちに甘えて、つけこんで、いい気になって。
ボクは、そんなずるいヤツなんだ。
キミに、好きだなんて言ってもらう資格なんてない。」
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