無題 第3部 38
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「ごめん。ごめん、進藤。
でも、ボクはキミには応えられない。」
「どうして?おまえがオレをキライじゃないって言うのに、どうしてそんな事言うんだ?
おまえがオレを好きだって言ってくれてるのに、どうしておまえを諦められるなんて思うんだ?塔矢。
イヤだ。
絶対にイヤだ。
おまえが何て言おうと、オレはおまえを諦める気なんか無い。」
「進藤…」
「もう、イヤなんだ。
とり返しがつかなくなってから、もうどうやっても取り戻せなくなってから、後悔して泣くのなんか、
オレはもうイヤなんだ。」
ヒカルの目に涙が浮かんでいた。
食い込む指が痛いくらいに、アキラの肩を掴んでいた。
「おまえは生きてここにいるのに、いなくなっちゃった訳でも消えちゃった訳でもないのに、
おまえは、こうしてオレの前にいるのに。
もういなくなっちゃったヤツの事は、どんなに後悔しても、どんなにやり直したいと思っても、
もう、どうにもならないけど…
塔矢、オレ、おまえの事、あきらめたくない。
おまえの事で後悔するのなんて、絶対にいやだ。」
「進藤…」
アキラは思い出した。かつてヒカルが感じたであろう孤独と悲しみを。
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