無題 第3部 39


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「ごめん…ごめん、進藤…」
アキラが腕を伸ばして、ヒカルの身体を抱きしめた。
「進藤…キミは…強いよな…」
「強くなんか、ねーよ…
オレだって、泣いて、馬鹿みたいに泣いて、もう一度やり直したいって、何度も叫んで、
やり直せないってわかってても、バカな方法で全部から逃げてしまいそうになったけど。
ソイツはもういないから、どんなに後悔しても、その時はもう遅かったけど。
でもおまえはここにいるのに、オレ、あきらめたくねェよ。
オレだって、まだガキだから、これからだっておまえの事責めたり、イヤな事言っちゃったり
するかも知んねーけど、でもここでおまえの事あきらめたら、オレ、絶対後悔する。
もうイヤなんだ。誰かの事で後悔するの、オレ、もうイヤなんだ。
オレはおまえをあきらめたくない。失いたくない。」
ヒカルの大きな瞳が潤んで、涙がこぼれて、アキラの制服の肩がヒカルの涙で濡れた。
「塔矢…………塔矢、一度でいいから……本当の事を言って…?」
アキラの肩口で、ヒカルが小さな声で尋ねた。
「オレを、好き?」
ヒカルを抱きしめるアキラの身体がぴくりと動いた。
一度でいいから、本当の事を。それならば言うべき言葉は一つしかない。
考えるより先に、震える声が、アキラの口から流れ出ていた。
「…好きだ。」
発してしまった自分の言葉を、噛み締めるように、確かめるように、アキラはもう一度言った。
「好きだ、進藤。」
そして口に出した言葉をもう一度心の中で繰り返した。繰り返すたびに、今までアキラの中で
閉じ込められ、縛り付けられ、もがいていた何かが解放されて、今までずっと息苦しく感じて
いたのに、すっと呼吸が楽になって、身体まで軽くなるように感じた。



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