少年王アキラ 誕生日 4
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しかしながら、その懐かしさは座間をいつも凶暴な気分にさせる。
テーブルの上に上半身を投げ出したまま、少し腰を上げて萎れたエリンギをかぼちゃ
パンツの中に仕舞った少年王は、うとうとと眠りの淵を彷徨いながらもその言葉に顔を
あげた。
「懐かしいって、座間はもう駄目なのか?」
「ええ。もうとっくに」
何気ない座間の返答がしかし、涙をにじませたものであることに少年王は気づかない。
「ふーん。もったいないね、こんなに気持ちいいのに」
バラの花びらを鼻先にこすりつけ、少年王はうっとりと呟く。最近の癖が条件反射と
なって、もういつでも眠れる状態だ。
「レッドと結婚したら、毎日がこんななんだな……」
少年王は美しい。美しく、若く、そして性欲も旺盛だった。座間がそんな少年王に
対抗できるのは類まれなる可憐さだけであり、そしてその可憐さをもってしても少年王の
魅力には到底敵わないものである。そのことを知っているからこそ余計に、座間はアキラ
王に意趣返しをしたいと思ったのだ。
「…アキラ王、結婚結婚とさっきからおっしゃっていますが、男性の結婚は18歳から
と父君が既に決めておられますが」
――座間が少しでも少年王をギャフンと言わせたいと思ったとしても、それは罪には
ならないだろう。執事・座間が少年王をどれだけ愛しく思っているかということは周知
の事実でもあったからだ。
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