tournament 4
(4)
オッチーは、その財を知られた、城都の豪商の孫息子であった。
祖父の財力を持ってすれば、出来ぬことは何もないだろうと、囁かれていた。
彼はなんと、姫の個人指導を受けたことがあった。
勿論、そんな事が出来たのは祖父の財力のゆえである。
彼はそれまで姫と対局したことはなく、そのため若干、姫の力を侮っていた。
天賦の才ともてはやされはしても、それは単にその高貴な身分のための周囲の誉めそやしであって、
実力はいかほどのものかと、いぶかしんでいた。けれど、実際に対局してみて、彼は姫の強さに
完膚なきまでに打ちのめされた。実力の違い、と言うものを感じた。
その時から、彼は姫に心酔していたのである。
だが、未だ精神の幼さを残すオッチーはその心酔を素直に認めることができなかった。
また、オッチーが素直に姫を認められずに反発するのにはもう一つの理由があった。
姫の、ある別の騎士への強い関心、異常ともいえるまでの、強い関心である。
オッチーは、姫の目が自分をとらえてはおらず、ただ自分を通じてその騎士の力を図ろうとしている
事に気付き、強い怒りを覚えた。
オッチーは自分の力に自信があった。
姫との実力差を痛感させられたとはいえ、同年輩の中では自分が突出した力を持っているのだと。
オッチーにしてみれば、姫が関心を示す騎士など、敵の内に入らなかった。
事実、それまでにも何度も彼に勝利したし、いくら彼が急激に伸びてきたとは言っても、それでも負ける
ような相手ではないと、思っていた。
ましてや、姫がそこまで執着するような高い棋力を持った騎士には、オッチーには見えなかったのである。
ついにオッチーは姫に詰め寄った。
「アナタがそこまで彼に入れ込む理由って、なに?」
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