バレンタイン小ネタ1 4 - 5


(4)
2人は碁会所を出て、碁会所前の道に立つ。
「進藤、なにかボクに用があるのか?」
一応冷静に振舞ってみるが、段々と胸の鼓動が高鳴っていくのをアキラは
感じる。ヒカルは自分のバッグからチョコレートの香りが漂う包みを一つ
取り出してアキラの胸にグッと押し付けた。
「えっ・・・!?」
・・・これは どう受け取ればいいのだろうか!?
バレンタインは とうに過ぎているけど、もしかして進藤は
ボクのことを──。
「それ市河さんからのチョコだよ。受け取れよ塔矢」
「──へっ?」
「オマエが沢山チョコを貰っているから迷惑になるから渡せないって
俺にチョコ2つくれたんだよ。コレちゃんと受け取れよ」
・・・なんだ、進藤からじゃなくて市河さんからなのか。
都合の良いように想像していた自分が急に恥ずかしくなりアキラは
赤面する。そんな自分を慌ててゴホゴホと咳き込んで誤魔化す。
そして胸に押し付けれたチョコレートを受け取る。
「市河さんも水臭いなあ。そんな気を使わなくてもいいのに」
「なんか俺、チョコの臭い かいでたら腹へってきた。
ちょっと食っちゃお」
ヒカルは自分の分のチョコレートの包装を取ると、早速摘んで口に入れ
頬張る。
「うわあ〜、コレうまいなあ」
「しっ、進藤! 道端で物を食べるなんて行儀悪いっ!!」
「そう かたいこと言うなよ塔矢。ホラ、オマエも食えよ。」


(5)
ヒカルはチョコレートを一つ摘んでアキラの口元に運ぶ。
アキラは そんなヒカルをジッと見て、何を思ったのかチョコレートを
摘むヒカルの指ごとパクッと くわえた。
一瞬ヒカルは目が点になったが、大声を上げた。
「オッ、オマエ何やってんだああっー!?」
慌てふためくヒカルに冷めた目で見ながら、ゆっくりヒカルの指から舌で
チョコレートを口内で受け取る。そしてヒカルの指を離し、口内から
開放する。
「何やってるんだって見れば分かるだろ。
チョコレート食べているんだよ。ご馳走様。
じゃあ、今度の研究会は来週の水曜日だから忘れるなよ進藤」
そう言いながらアキラはヒカルに冷ややかな視線を向ける。
「おっ、おう・・・・・・またな・・・・」
アキラの姿が遠くなるのをボーと眺めながら・・・アイツと一緒にいると 
どうも調子が狂うなあとヒカルは思う。

アキラは歩きながらヒカルのことを考えていた。
ヒカルの何気ない行動に一喜一憂する自分が嫌でならない。

・・・少しくらい困らせるくらいでいいんだ進藤は。人の気も知らないで
無邪気に土足で人の心にズカズカと踏み込んでくるのだから──。
少しムクれた表情でアキラは家路を急いだ。
                        (終わり) 



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