無題 第3部 40


(40)
―深く考えるなよ、おまえの気持ちに素直になるのが一番だ。
そんな言葉が頭の中に蘇ってきた。
そうだね、芦原さん。こんな簡単な事だったのに。
認めてしまえばこれ以上の真実なんてなかったのに。
触れている個所から感じるヒカルの体温が心地良い。
ボクが欲しかったのはこれだったんだ、と、アキラは安心して目を閉じた。

ヒカルをぎゅっと抱きしめていた腕の力が弱まって、体重が自分にかけられるのをヒカルは感じて、
逆にアキラの身体を支えた。自分に寄り掛かってきてくれるのが嬉しくて、アキラの背を抱きながら、
半分まだ信じられない気持ちで、ヒカルはアキラの告白の言葉を反芻していた。
けれどやがてアキラの呼吸が規則正しいものにかわって来たのに気付いて、ヒカルは呆然とした。
―コイツ、もしかして寝ちまったのか…?
「おい、塔矢、」
呼びかけられて、身体を揺すられて、アキラはぼんやりと目を開いた。
「寝るなよ、おまえ、こんな所で…」
「…ごめん…昨夜、寝てないんだ…だから…」
言い訳のようにそれだけ口にするとアキラはまたヒカルにもたれて目を閉じた。
ヒカルは呆れてそんなアキラを見下ろし、それから小さな息をついて、アキラの背をポンポンと
軽く叩いた。
―寝るか?フツー、こーゆー状況で。
自分だけ好き勝手な事言ってさ。ホント、自分勝手なヤツだよな、おまえって。
でも、さっき言った事はホントだよな?おまえの本心だよな?
信じていいんだよな、オレは。



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