座敷牢中夢地獄 43
(43)
「確かに俺は昨夜、アキラくんを抱きました」
先生の眉がピクリと動く。
アキラや先生の声と同じように、俺の声も不思議な残響を伴って聞こえた。
ふと見渡すとここは暗い岩窟のような場所で、鉄格子で仕切られたこちら側だけに
数畳分の畳が敷かれ、行燈の灯が幾つも灯されて小さな部屋の体裁を取っている。
俺はそこに敷かれた布団の上に仰向けに寝かされているのだった。
声が響いて聞こえるのは、この空間の中で発せられる音が剥き出しの岩肌に反響する
ためらしい。
――幽かな音を立てて燃える炎が、波のように揺らめく影をそこここに投げかけている。
「申し訳ないことをしたと・・・思っています。だから俺がこんなことを言えた義理じゃない
のはわかっていますが――あなたにそんなことを言われたら、アキラくんがあまりに
可哀相だ。アキラくんがどれだけあなたを慕っているかご存知でしょう。そのあなたが
見ている前で俺が」
「申し訳ない?そんな風に考える必要はない。アキラは昨夜、キミを誘惑するために
キミの部屋に行ったのだから。もっとも、」
と先生は一旦言葉を切ってアキラを見遣った。
「キミには何もせずにアキラを帰すという選択肢もあったわけだがね。・・・自らチャンスを
棒に振ってしまった、馬鹿な男だ」
先生のこんな吐き捨てるような口調を初めて聞いた。
動揺しながら、やっとの思いで俺は喉から声を絞り出した。
「どういう・・・ことです。それにここは一体――さっき俺が飲んだ酒も・・・」
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