無題 第3部 44
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名前を呼ばれたような気がして、アキラは夢うつつのまま、その呼びかけに応えた。
「…なに?進藤。」
進藤?どうして彼が?ぼんやりした頭で考えながら目を開けると、その人物の顔が目の前
にあって、自分の顔を覗き込んでいた。
「おはよ。」
「進藤…!?」
次の瞬間、アキラは慌てて跳ね起きて、あたりを見まわした。
「ここ…キミの部屋…?」
「ウン。…あのさァ、塔矢、」
状況が飲み込めずにいる様子のアキラに、ヒカルが問いかけた。
「…おまえ、昨日の事、覚えてる?」
もしかしたら、目を覚ましたらまた、「そんな事言ってない」と言われてしまったらどうしよう、と
ヒカルはずっと不安だったのだ。
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