座敷牢中夢地獄 47
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だがそれ以後、家には頻繁に先方からの電話が掛かってくるようになった。
長い時は深夜過ぎまで、寒い玄関先で小声で話すアキラの声が聞こえる。
心配した夫人が電話機を暖房の入る居間に移すと、電話の時間はめっきり減少し
代わって分厚い封書の手紙が週に何通と届くようになった。
一回の指導碁の時間も長くなり、休日などは昼過ぎに先方に向かったアキラが
夜まで帰宅しないこともざらだった。
同時に夫人が――本来は朗らかな人なのだが――気遣わしげに何か考え込んでいる
ことが多くなり、わけを問うとこの間息子の着替えの最中に襖を開けてしまったところ
一瞬しか見なかったけれども体にたくさんの痣のようなものが見えた、学校で苛めでも
受けているのでは――と言う。
即刻学校に確認したが苛めの事実はなかった。
そんなある日、指導碁が長引いたアキラが一晩先方に泊まりたいと連絡を入れてきた。
先生は明日も学校がある身で朝帰りなどもっての外、先方が車を出してくれないのなら
タクシーを使って帰宅するようにと一喝し、深夜になってアキラはおとなしく帰ってきた。
だが、帰ったアキラの様子がどうもおかしい。
両親の目を避けるように帰宅の挨拶もそこそこに自室へ引っ込もうとし、
歩く姿勢がどこか覚束ない。
夫人を居間に待たせてアキラの部屋で二人きりになり、衣服を脱いでみせるよう命じた。
ためらいながら裸になったアキラの体は、――古い痣と真新しい痣とが混じり合って
見るに堪えなかった。
そればかりか、アキラがなかなか脱ごうとしない下半身を幼い頃尻を叩いた時のように
膝に横たわらせて剥いてみると、肛門から紐のようなものが垂れている。
引っ張ってみると何やら電動式で振動する、奇妙な玩具めいたものが現れた。
更に前には革製の器具が根元を締め付けるように取り付けてあり、先生はそれらの用途は
よくわからないながら、何かとても淫靡で不快な思いがしたと云う。
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