座敷牢中夢地獄 48
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翌日先生は自ら先方に電話し、アキラはもう指導碁に遣らないと告げた。
アキラの身体に取り付けられていた奇妙なモノたちは夫人に知らせずいざと言う時の
証拠品として保管した。
アキラが車の人物に連れ去られそうになる事件が起きたのは、それから数日後の
ことだった。
「その・・・指導碁の相手だったんですか。アキラくんを連れ去ろうとしていたのは」
「後で調べさせたが、車のナンバーが一致した」
先生は苦々しそうに言った。
警察に知らせることも出来たが、そうなればアキラが受けていた行為の内容を夫人にも
知らせることになる。お母さんにだけは言わないでとアキラが懇願した。
先生としても、ことを大きくして長引かせるより一日も早くアキラに元の生活を
取り戻させるほうがよいと思った。
相手とて立場のある人物なのだ。自分のしたことが公にされるよりは、アキラから
手を引くことを選ぶだろう。
再び先生は先方に電話し、アキラの身体に取り付けられていたモノと封書の手紙は
こちらで保管してある、今後また同様のことが続くようであれば事を公にすることも
辞さないとだけ告げた。
そして翌朝――
朝刊には、昨夜動機不明の自殺を遂げた相手の死亡記事があった。
「自殺!?」
先生がうむ・・・と頷いた。
俺は思わずアキラを見た。
俺の傍らに正座してうなだれている美しい少年。
行燈の灯りだけが照らす岩窟の中、炎よりも更に明るく強い光を内側から放っている
ような少年。
確かに彼には、関わる人間をそのような運命の淵に引きずり込む力が備わっているの
かも知れない。
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