大人は判ってくれない? 5
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凍てつくような視線で自分を凝視するアキラに、緒方は覚悟を決め、恐る恐る尋ねてみた。
「……結局、"XYZ"とはなんなんだ?」
「緒方さん、英語はお得意でしょう?」
「……?」
「興味云々以前に、表に出てこない方がいいと思いますよ」
「……え?」
「緒方さんが歌う『セクシャルバイオレットNo.1』は、どこに出しても恥ずかしくないくらい
お上手ですけどね」
「……なぬ?」
あまりにも鈍い緒方の反応ぶりに呆れ果てたアキラは、すっかり押し黙ってしまった。
(やはりボクと緒方さんとの関係は、終わりにした方がいいのかもしれない……)
やるせなく碁笥に手を突っ込むと、碁石を弄び始めた。
2人の間をしばらく気まずい沈黙の空気が漂っていた。
そんな中、突如アキラが小声でぼそっと呟いた。
「ex..... y... z.....」
緒方は呆気にとられてキョトンとしていた。
恐らく聞き取れなかったのだろう。
「……はァ? 今、なんて言ったんだ?」
緒方はいつになく素っ頓狂な声を上げた。
例え芦原でも、こんな間抜けなリアクションはしないはずだ。
アキラは脱力し、思わず天を仰いだ。
(ボクはどうしてこんな人と……!? 乗せてくれない上にこのザマだ!!)
自分の運命を呪わずにはいられないアキラだった。
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